大人のうつ病

Depression in adults

Below is a Japanese translation of our information resource on depression in adults. You can also view our other Japanese translations.

この案内書は、精神的に落ち込み、悩み、打ちのめされ、絶望的な気分になったことのある人、苦しい気持ちになったり、自分はうつ病かもしれないと思っている方のためのものです。ご家族や友人の方にも参考になります。

うつ病になると(心と体の両方に)何がおきるか、自分でできる対処法、利用できる支援、そしてうつ病かもしれない人をサポートする方法などが分かります。

案内書の最後には、より多くの情報を提供する施設のリストがあります。

落ち込んでいる状態と、抑うつ状態の違いは?

誰でも日常でうんざりしたり、沈んだ気持ちになることはあるものです。大抵は特定の理由があるものですが、日常生活に支障をきたす程のものではなく、数週間で忘れてしまいます。

しかし、そのような状態が何週間、何カ月も続き、普段の生活に影響が出る場合は、うつ病の可能性が高く、助けを求める事が必要です。

うつ病の兆候は?

症状の度合いは人によって異なります。うつ病には、軽症、中等症、重症という段階があります。1

うつ病の症状は、その人の文化的背景や個人的な価値観、信条や話す言語によって様々です。

以下の症状にあてはまると思ったら、うつ病かもしれません。1 2

精神的症状:

  • 悲しくなり、惨めになり、落ち込み、意気消沈することが続き、朝など一日の特定の時間に症状がひどくなる
  • 何事も楽しめない
  • 人と会うことがおっくうになり、友人と疎遠になる
  • 物事に集中できなくなり、決断できなくなる
  • 自尊心がなくなる
  • 罪悪感を覚える、自分には存在価値がないと感じる
  • 悲観的になる
  • 絶望的になり、自殺願望を持つ

身体的症状:

  • 疲労感や、不安感、動揺しやすくなる
  • 倦怠感を感じ、活力がない
  • 不眠、または過眠
  • 早朝に起きる、または夜通し目が覚めている
  • 頭痛、腹痛
  • 性欲の低下
  • 食欲が低下し体重が減る、またはやけ食いして体重が増える

周りの人が気づく症状:

  • 仕事でミスが多くなる、集中していない
  • 異様に静かになり、孤立し、人との接触を避ける
  • 急に神経質になる
  • 急に短気になる
  • 急に不眠または過眠になる
  • 漠然とした不調を訴える
  • 髪や服を洗わないなど、身なりに気をつかわなくなる
  • 料理をしない、部屋を片付けない、シーツを変えるのを忘れるなど、家事をしなくなる

上記のすべてがあてはまる人は稀で、人によっては、身体症状だけに気づくかもしれません。倦怠感や睡眠障害などから身体疾患があると思う方もいるでしょうが、このような身体症状はうつ病の初期サインかもしれません。1 2

自分がどれだけ深いうつを抱えているか気が付かない人もいるでしょう、症状の進行が緩やかな場合は特にそうです。解決しようともがいたり、怠けて気力のない自分を責めてしまう人もいます。

あなたが病気であること、助けが必要であることを、友人やパートナーに理解してもらうのに時間がかかることもあります。

あなた、もしくは友人、パートナーが以下のことに気づいたら助けが必要かもしれません

  • 気分が落ち込み、仕事や人付き合いに支障をきたしている
  • 落ち込んでいる状態がしばらく続き、良くなる見込みが一向にない
  • 生きる目的を見いだせず、自分はいなくなったほうが良いという気持ちになる

不安障害とは?

抑うつ状態にあると、精神的にとても不安定な気持ちになる人もいます。1 3

常にいら立ち、気がかりなことが増え、何かに恐れ、人と会ったり、一緒に過ごすことが出来なくなるかもしれません。更に、口の乾き、多汗、息苦しさ、腹痛など身体症状がでてくることもあります。

うつ病や不安障害を感じた場合、最も辛い問題に対して治療を受けることができます。1

双極性障害(躁うつ病)とは?

うつ病を患っている人は、気分的高揚や興奮が長期間続くことがあります。これは躁病とも呼ばれ、双極性障害である可能性があります(以前は躁うつ病と言われていました)。4 5

うつ病はなぜおこるのですか?

うつ病は、弱さのサインではありません。決断力のある人や、アスリートや有名人など、著名な人でもうつ病を発症することがあります。

うつ病になる決定的な原因がある人もいれば、ない人もいます。失意に陥ったり、不満があったり、大切な物や人を失った時かもしれません。

複数の理由がある場合がほとんどで、それは人によって異なります。共通して見られる理由を幾つか挙げてみましょう。

人生における大きな出来事や、個人的事情

死別、離別、失業など、ストレスのかかる、苦痛な出来事により、うつ病が引き起こされることがあります。6 7

あなたが一人暮らしで、友人や家族が近くにいない場合、うつ病にかかる可能性が高くなります。8 9

身体の健康

睡眠、食習慣、運動は総じて、私たちの気分や、物事への取り組み方を左右しかねません。

重度の、または長期間に渡る身体健康疾患は、うつ病を引き起こし悪化させることもあります。10 11 例えば

  • がんや心臓疾患など、生死に関わる病気
  • 長期間の、または関節炎などの痛みを伴う病気
  • 風邪などのウイルス性感染や、若い年代に多い伝染性単核球症など
  • 甲状腺機能低下症などのホルモンの問題
  • 脳や神経系に影響を与える体質12

子供時代のトラウマ

一般の人に比べ、うつ病になりやすい傾向のある人がいます。虐待(身体的、性的、心理的)、ネグレクト、暴力やトラウマ的な出来事の目撃、または不安定な家庭環境を含む、困難な子供時代の経験または外傷的出来事が、その原因である可能性があります。13 14 15

酒類や薬物の使用

定期的な深酒 16 17、大麻などの薬物を使用したりすると、18 19 長期的にうつ病になる可能性が高くなります。

遺伝的因子

重篤なうつ病、双極性障害、統合失調症を発症するかどうかには、同様の遺伝的な「危険因子」が関与しています。環境による危険因子というのも存在しており、遺伝的危険因子と相互作用することによって、発症リスクを増減させる可能性があります。

たとえば、あなたが遺伝的な危険因子をすでに持っているとしましょう。それはつまり、あなたが重篤なうつ病を発症する可能性が高いことを意味しています。しかし、安定した前向きな環境で成長したり生活したりすると、深刻なメンタルヘルス疾患を発症するリスクが低下する可能性があります。

重篤なうつ病のような深刻な精神疾患を患う親を持つことは、深刻なメンタルヘルス疾患を発症する最も強力な危険因子であることが知られています。深刻な精神疾患を持つ親を持つ子供は、1/3の確率で深刻なメンタルヘルス疾患を発症する可能性があります。

うつ病を発症する原因を考えるときは、さまざまな因子が関係していること、うつ病の原因となる危険因子はひとつだけではないことを覚えておくことが重要です。20

うつ病は、ジェンダーとセクシュアリティによって違いますか?

うつ病を経験している男性は、自分の感情について話す可能性が低く、助けを求める可能性も低くなります。21 彼らは別の方法でうつ病を表現することもあります。突然怒りだす、ますます感情の制御ができなくなる、危険を顧みない行為や攻撃的な姿勢が増幅する、などはその一例です。23 24 さらに、男性は女性よりも自死する可能性が高いです。21 23

妊娠女性の場合、約12%が妊娠中にうつ病を経験しますが、15~20%は出産を経験した最初の年にうつ病になります。24

トランスジェンダー、つまり、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別を自認する人は、出生時に割り当てられた性別をと同調している人に比べ、より深いうつ病と不安障害を経験する可能性があります。ノンバイナリー、つまり、女性・女性または男性・男性のいずれにも当てはまらないと自認する人も同様で、より深いうつ病と不安障害を抱える可能性があります。25 26

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルであると自認する人は、異性愛者と比べ、うつ病も含んだ精神衛生の問題を抱えている可能性が高く、27 自殺や自傷行為を試みるリスクも高くなります。27 28

私は自分で良くなることができますか?

幸いなことに、うつ病のほとんどの人は、自分自身を助けるために何かをすることで、自分自身で良くなります。うつ病を自分で克服できるかもしれません。そうすれば、達成感と、将来気分が落ち込んだときに再びそのような感情に取り組む自信が得られます。

この案内書の提案のいくつかを取り入れることで、うつ病の期間が短縮され、将来も健康でいられるようになる可能性があります。

しかし、特にうつ病がひどい場合や長期間続く場合、または改善しようとしていることがうまくいかない場合は特に、特別な助けが必要な人もいます。

初めてうつ病を経験した人の約半数がうつ病を再発する可能性があると言われますので、必要な場合に助けを得る方法を知っておくことが重要です。1, 29

ですから、自分の気持ちを誰かに話す必要があると思ったら、先延ばしにしないようにしましょう。そうすることで、以前していたことをやり直し、人生をより早く楽しむことができるからです。

他の人に自分の気持ちを理解してもらうには、数回かかる場合があります。粘り強く、あきらめないでください。適切な助けを得ることができます。

どうすれば自分を助けることができますか?

意気消沈しているときに試せることを、下記にいくつか提案します。自分に最適なものを見つけて、役立つ戦略の独自のリストを作成することが重要です。

誰かに話しかける: 悪いニュースを受け取った、人生でこれまでにないほど大きな動揺を覚えた、そんな時は、独りで抱え込まないようにしてください。話しかける行為は、身近な人に自分の気持ちを伝えることに役立ちます。誰にも相談できないと感じたら、自分の気持ちを書き留めてみてください。

常に体を動かす: 可能であれば、たとえ短い散歩であっても、外に出て運動をしましょう。これにより、体調を整え、よりよく眠ることができます。体を動かすことは、つらい考えや感情ではなく、他のことに集中するのにも役立ちます。

適切に食べる: あまり空腹を感じなくとも、食事を定期的に取るよう心掛けてください。抑うつ状態にあると、体重が減り、ビタミンが不足しやすくなります。または、ジャンクフードを食べすぎて、望まない体重が増えることもあります。果物や野菜を多く含むバランスの取れた食事は、体と心を健康に保つのに役立ちます。

飲酒や薬物を避ける: 飲酒で数時間ほど気分が向上するかもしれませんが、実際には、長期的にうつ病を悪化させます。同じことがストリートドラッグ、特に大麻、アンフェタミン、コカイン、エクスタシーにも当てはまります。

睡眠習慣を作る: 毎晩同じ時間に就寝し、毎朝同じ時間に起きるようにしてください。寝る前にリラックスできる音楽を聴いたり、本を読んだりするなど、何かしら心を休ませることをしましょう。眠れない場合は、ベッドから出て、ソファに静かに座るなど、心を落ち着かせることをしてください。

リラックスできるアクティビティを試してみる: いつも緊張を感じている場合は、リラクゼーションエクササイズ、ヨガ、マッサージ、アロマセラピーなど、リラックスできる別のアクティビティを試してください。

好きなことをする:ゲームをしたり、読書をしたり、違う趣味を見つけるなど、自分が本当に楽しめることを定期的に行ってください。

うつ病について読む: うつ病に関する本やウェブサイトはたくさんあり、自分に何が起こっているのかを理解し、よりうまく対処するための策を講じるのに役立ちます。また、友人や親戚にあなたが経験していることを理解してもらうためにも有益です。

自分を丁寧に扱う練習をする: あなたは自分を追い詰める完璧主義者かもしれません。より現実的な目標や期待を設定するようにしてください。もっと自分に優しくしてください。

休憩する: 数日間、通常の習慣から離れることは非常に役立ちます。日々のストレスや悩みから解放されましょう。数時間でも環境を変えることができれば、それは役に立ちます。

サポートグループに参加する: 抑うつ状態にあると、自分を助けるのが難しくなりがちです。同じような状況にある他の人と話すことは助けになります。いくつかのアイデアについては、この案内書の最後にある各団体のリストをご覧ください。

希望を持ちましょう: 他の多くの人々がうつ病を患い、回復したことを思い出してください。世間には援助団体があり、あなたには症状回復に必要な助けを受ける権利があります。

うつ病にはどのような助けが得られますか?

自分で改善しようとしてもうまくいかない場合、または希望するほど早くうまくいかない場合は、一般開業医(GP)に相談することをお勧めします。

うつ病は、一般開業医(GP)に対応してもらえることがほとんどです。一般開業医(GP)がいない場合は、地元の診療所で、安心して定期的に受診できる医師を見つけてください。

一般開業医(GP)があなたと話し合い、あなたの症状を確認し、どの治療法があなたに有効かを調べます。

あなたにとって最適な治療法は、現在のうつ病のレベル、それがどのくらい続いているか、過去にうつ病にかかったことがあるかどうかによって異なります。

一般開業医(GP)は、適切な健康診断も行うことができます。これは、一部の身体疾患がうつ病を引き起こす可能性があるためです。あなたがすでに何らかの身体疾患の治療を受けている場合、一般開業医(GP)はそれについて知る必要があります。

初期治療(軽度のうつ病)

初めてうつ病にかかった人の場合、大概であれば、抗うつ薬は処方されません。一般開業医(GP)は、次のような低強度の心理的介入(またはトークセラピー)を提案する場合があります。1 2

  • 認知行動療法(CBT: cognitive behavioural therapy)の原則に基づいた、セルフヘルプ案内書または書籍(医療専門家によって監修されたもの)
  • セルフヘルプのコンピューター化された認知行動療法プログラム(医療専門家によって監修されたもの)
  • グループで行うエクササイズ
  • ピアサポート・セルフヘルプまたは認知行動療法のいずれかに基づく、グループ単位で実施するプログラム

一般開業医(GP)は、あなたに適したものを選択するのを手助けしてくれます。

これらがうまくいかない場合、一般開業医(GP)は、次のセクションにある、中等度および重篤なうつ病のための治療介入のいずれかを試すことを提案する場合があります。

さらなる治療(中等度および重篤なうつ病)

一般開業医(GP)は、高強度の心理的介入または抗うつ薬、あるいはその両方を試すことを提案する場合があります。1 医師と話し合って、あなたにとって最も適切な治療法を決定することができます。

心理的介入

うつ病の人のための心理的介入には多くの種類があり、あなたの地域で利用できるものなら何でも紹介されるかもしれません。1

特定の心理的介入を受ける前に待機リストがある場合は、待機期間中に自分自身をケアするために何ができるかについて、一般開業医(GP)に相談する必要があります。

認知行動療法(CBT: cognitive behavioural therapy)

私たちの多くは、否定的な思考習慣を持っていて、人生で起こっている事とかけ離れたことで私たちは意気消沈したり、いつまでも落ち込んだりしがちです。認知行動療法は次のことに役立ちます。

  1. 非現実的で役に立たない考え方を特定する
  2. 新しい、より役立つ考え方と行動を育む

認知行動療法は、うつ病の最も優れた治療法であることを示すエビデンスがあります。1 30 31

対人関係療法(IPT: interpersonal therapy )

対人関係療法は、家族、パートナー、友人との関係における問題を特定し、対処することに役立ちます。

行動活性化

行動の活性化は、活動を計画したり、普段は避けがちな建設的なことをしたりするなど、よりポジティブな行動をとるよう促します。

カップル療法

あなたの人間関係がうつ病に影響を与えていると思われる場合は、うつ病とあなたの人間関係とのつながりを理解するのに役立つカップルセラピーが適切かもしれません。また、パートナーとより協力的な関係を築くのにも役立ちます。

カウンセリング

訓練を受けたカウンセラーが、あなたの症状や問題を詳しく調べる手助けをし、サポートとガイダンスを提供します。

精神力動精神療法

この治療法は、過去の経験が現在の生活にどのように影響しているかを理解するのに役立ちます。

抗うつ薬

うつ病が中等度または重度であるか、または長期間続く場合、一般開業医(GP)があなたに抗うつ薬を用いた治療法を勧める場合があります。抗うつ薬によく使われるのは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI: Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)です。1 32 どの抗うつ薬があなたに最も効果があるかは、一般開業医(GP)が説明してくれるでしょう。過去に抗うつ薬を服用したことがあるかどうか、他の薬剤を服用しているかどうか、その他の身体健康疾患があるかどうかによって異なります。

抗うつ薬には副作用がありますか?

すべての薬と同様に、抗うつ薬には副作用がありますが、通常は軽度であり、数週間で軽減することが多いです。32 33

一般開業医(GP)は、何が起きうるかをアドバイスすることができます。何か心配なことがある場合、または多くの副作用が発生している場合は、一般開業医(GP)に相談してください。また、薬剤師から治療薬に関する説明書が交付されます。

抗うつ薬によって眠くなる場合は、夜に服用して、寝付きやすくなるようにすると良いでしょう。ただし、日中に眠くなる場合は、そうした作用が弱まるまで運転や機械の操作をしないようにします。錠剤の服用と飲酒を同時に行うと、強い眠気を引き起こすことがあるので、避けたほうがいいでしょう。34

抗うつ薬は、他の薬剤や薬物(ニコチンや酒など)とは異なります。あたなが抗うつ薬を渇望したり、同じ効果を得るために服用量を増やす必要を感じることはありません。1

抗うつ薬はどのくらいの期間、服用する必要がありますか?

まず、治療が効果を上げているか確認するために、定期的な一般開業医(GP)の診察を受けていただく必要があります(最初の2週間が過ぎた後、3カ月間は2~4週間に一度、それ以降は頻度を減らします)。1

もしあなたが死にたいと感じている場合、または30歳未満の場合は、一般開業医(GP)はより頻繁な診察(通常週に1度など)を勧めるかもしれません。一部の抗うつ薬は、特に若い人の服用初期段階において、自殺願望を強める場合があるためです。1

抗うつ薬の服用に効果が認められる場合は、気分が良くなったとしても、少なくとも6カ月間は服用を続けてください。うつ病再発の可能性を減らすことにつながります。1

過去にうつ病の病歴がある場合は、6カ月間よりも長期間、服用を続けなければならない可能性もあります。服用をやめるタイミングと安全なやめ方は、一般開業医(GP)からアドバイスがあります。

抗うつ薬の服用を急に中止すると、離脱症状が出る可能性があります。この症状には、不眠、不安障害、めまい、腹痛などがあります。1

3~4週間の服用ののち、その抗うつ薬で効果が得られていないと感じる場合は、一般開業医(GP)に相談して用量を変えてもらうか、別の種類の抗うつ薬や治療薬を処方してもらいます。1

さらにサポートが必要な場合(重篤なうつ病)

うつ病にかかっている人のほとんどは、必要な支援を自分の一般開業医(GP)に頼っています。一般開業医(GP)から治療を受けてうつ病が改善しない場合は、専門医の支援が必要となるため、メンタルヘルスサービスを提供する専門医やチームを紹介してもらいます。1

メンタルヘルスの専門医は患者が置かれているおおまかな状況をチェックし、過去に大きな病気をしていないか、感情に関連した問題がないかを確認します。

専門医から、最近患者の身に起こったことやうつ病をどのように発症したのか、すでに受けている治療がないか質問されます。

これらの質問すべてに答えるのが難しい場合もあるかもしれません。しかし、ここで提供した情報によって医師は患者を一人の人間として知り、どのような治療に効果があるか考えることができます。

うつ病が重度で専門的な治療が必要となる場合、治療を受けるために入院する必要があるかもしれません。治療にあたるチームは、患者が必ず、効果のある適切な治療とサポートを受けられるようにします。

電気けいれん療法(ECT)

電気けいれん療法(ECT: Electroconvulsive therapy)は、主に以下の場合に治療方法として使用されます。

  • 患者の命にかかわるような重篤なうつ病で、緊急の治療が必要となる場合
  • 中等度または重篤なうつ病で、ほかの治療で効果がなかった場合1

ECTでは脳に電流を流すため、必ず病院で全身麻酔のもとで行います。ECTを受けた後に、一次的な記憶障害を発症する人もいます。

代替治療

セント・ジョンズ・ワートはドラッグストアや薬局で入手できるハーブ薬です。うつ病の治療に使う人もいます。通常、医師から服用を勧められたり提案されたりすることはありません。これには以下の理由があります。

  • うつ病治療のための正確な用量が不明。
  • 種類が異なると含まれる成分も異なる。
  • ほかの治療薬(特に避妊用ピル、抗凝固剤、抗けいれん薬)との併用で重大な問題を引き起こすことがある。1

さらにアドバイスが必要な場合は、一般開業医(GP)や薬剤師に相談してください。

抑うつ状態にある人に何をしてあげられますか?

  • 話を聞く:簡単そうに聞こえますが、同じことを何度も、繰り返し聞かなければならないでしょう。本人に尋ねられない限り、あなたからの助言は控えるほうが最善策です。たとえ答えがはっきりしていてもです。うつ病の発症に特定の原因がある場合は、その問題の解決方法や、困難に対処する方法だけでも見つける手助けができるかもしれません。
  • 一緒に時間を過ごす: 抑うつ状態にある人と一緒に時間を過ごすだけでも支えになります。自分がそばにいると伝えることで、話をしたり、何かをし続けたりして気分を良くする励みになります。
  • きっと良くなると改めて伝える: 抑うつ状態にある人は、いつかまた気分が良くなるとはなかなか思えないものです。かならず良くなる日が来ると改めて保証しましょう。何度も繰り返し伝える必要があるかもしれません。
  • セルフケアを支援する: 十分な量の食材を買い定期的に食事を摂っているかどうか、また、果物と野菜を沢山摂取しているかどうかを確認しましょう。彼らが外出し、軽い運動や何らかの活動を楽しめるよう補助するのも一案です。酒類や薬物に手を出して気を紛らわせるよりも良い選択肢になる可能性があります。
  • 真剣に受け取る: 症状が深刻化すると、もう生きていたくないと言ったり、自傷行為に言及することがあります。そのような場合は、真剣に対処してください。必ず医師に話すようにしてもらいましょう。
  • 助けを得るように励ます: 医師の診察を受け、服薬し、セラピストやカウンセラーと話をするように励まします。治療について心配している場合は、その心配していることについて医師と話すように勧めます。
  • あなた自身をケアする: うつ状態の人を支えていると、自分自身の感情も疲弊してくる場合があります。自分自身の心と体の健康を必ず気にかけましょう。

知り合いが自殺を考えているかもしれないと心配しているなら

うつ病の人で、自殺を試みる、あるいは自死する人は僅かです。35 36

もしあなたが誰かのことを心配しておられるのなら、その人の自殺願望や感情について話し合い、真剣に受け止めてあげることが重要です。

誰かに自殺願望があるかどうかを尋ねることで、そういう考えを根付かせたり、その考えを実行に移す可能性が高くなるわけでは「ありません」。37 38

それでもまだ誰かのことが心配な場合は、以下のいずれかのサービスに連絡し、さらなるサポートやアドバイスを受けることができます。

自殺ゼロ同盟という団体は、自殺の認知と予防に関する無料のオンライン・トレーニングを提供し、自殺願望のある人をサポートしたい人たちにスタート地点となる場を提供しています。

自殺願望に対する支援を受ける

今すぐにでも支援が必要な場合は、以下のサービスにご連絡ください。

英国全域

ウェールズ

もし今、自分で自分の安全を守れないと感じ、その他のサポートも十分に得られない場合は、999に電話するか、最寄りの病院のA&E部門(別名、救急部門)に行ってください。または、誰かに999に電話してもらったり、A&Eに連れて行ってもらったりすることもできます。

その他の援助

産後の病気を考える会(APNI: Association for Postnatal Illness: APNIは、産後うつ病の母親をサポートしています。この団体は、この病気に対する一般の人々の認知を高め、その原因や特徴に関する研究を促進することを目的としています。ヘルプライン: 0207 386 0868(月~金の午前10時~午後2時)

ブラック・アフリカン・アジアン・セラピー・ネットワーク(BAATN:黒人、アフリカ人、南アジア人、カリブ海系住民が適切なメンタルヘルスのためのサービスにアクセスできないという不平等を解消することを目的とした、英国最大の独立組織です。メンタルヘルスに関する情報、セラピストを探すためのコンタクトリスト、イベント、トレーニングなどの情報提供を行っています。Email:connect@baatn.org.uk

悲惨な気持ちで生きることに対抗するキャンペーン(CALM: Campaign against Living Miserably:青少年のうつ病と自殺の防止に焦点をあてた全国キャンペーン。秘密厳守のヘルプライン:0800 58 58 58(午後5時~午前0時、年中無休)

うつ病UKDepression UK:うつ病の人のための全国相互支援団体。 Email:info@depressionuk.org

メンズヘルス・フォーラム(Men’s Health Forum:イングランド、ウェールズ、スコットランドの男性の健康を支援する慈善団体で、男性の健康問題についての研究、意識の向上、健康情報やアドバイスの提供などを行っています。電話番号: 020 7922 7908

メンタルヘルスフォーラム(Mental Health Forum:同じような経験を共有する人たちからお互いにサポートを受けることができるオンラインコミュニティです。

マインド(Mind:メンタルヘルスの問題を抱える人々へのアドバイスやサポート、地域のピアサポートグループに関する情報を提供するメンタルヘルスの慈善団体です。ヘルプライン: 0300 123 3393(月~金、午前9時~午後6時)また、誰かをサポートする際の対処法も紹介しています。ローカルマインズ(Local Mindsでは、お住まいの近所でメンタルヘルスのためのサービスを探す支援が受けられます。

マインドアウト(MindOut:レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア(LGBTQ)の人々によって運営されているメンタルヘルスのためのサービスです。アドバイスや情報提供を行ったり、オンラインサポート、カウンセリング、ピアサポート、アドボカシーなどのサービスを提供しています。電話番号: 01273 234 839、Email:info@mindout.org.uk

NHS:メンタルヘルスに関するサービスを利用するための情報

パピルス・ホープライン・イギリス(Papyrus Hopeline UK:35歳未満で自殺願望のある人、またはそのような誰かを心配している人たちに、サポート、実用的なアドバイス、情報を提供する専門スタッフによるヘルプラインです。ホープライン: 0800 068 41 41

リーディング・ウェル・エージェンシー(Reading Well Agencyブックス・オン・プリスクリプション(Books on Prescription:セルフヘルプ本の読書を用いて、人々のウェルビーイング(健康や幸せ)の管理を支援する制度。英国王立精神医学院をはじめとする医療専門家および公共図書館の支持を得ています。

リレート(Relate:英国最大の人間関係サポートサービスカウンセリングサービスを提供。お問い合わせ先:0300 003 0396

サマリタンズ(Samaritans:イギリスとアイルランドを拠点とする全国的な慈善団体で、自殺願望や苦悩を抱えている人に、秘密を厳守して精神的なサポートを提供しています。ヘルプライン: 116 123Email:jo@samaritans.org

セインライン(SaneLine:メンタルヘルスの問題を抱える人々の精神的なサポートと情報を提供する全国的な受付時間外の電話ヘルプライン。ヘルプライン: 0300 304 700(毎日午後4時30分~10時30分)Email:support@sane.org.uk

ストーンウォール(Stonewall:LGBTQ+コミュニティーに向け、サービスや地域のグループに関する情報提供などの支援を行っています。フリーダイアル: 0800 050 2020(受付時間:月~金、午前9時30分~午後4時30分)Email:info@stonewall.org.uk

スイッチボード(Switchboard:LGBTQ+のヘルプライン。セクシュアリティや性アイデンティティの問題、LGBTQ+のメンタルヘルスなどについて相談したい人に情報提供、サポート、紹介を行うサービス。オンラインチャットを提供。電話相談窓口 0300 330 0360(毎日午前10時~午後10時)Email:chris@switchboard.lgbt

ヤングマインズ(Young Minds:すべての子どもたちと25歳以下の若者のメンタルヘルスを改善することを目的とした全国規模の慈善団体。保護者向けのヘルプライン: 0808 802 5544(月~金、午前9時30分~午後4時)

自殺ゼロ同盟(Zero Suicide Alliance:自殺の認知と予防に関する無料のオンライントレーニングを提供し、自殺願望のある知り合いをサポートしたいと考えている人たちを支援します。

謝辞

王立精神科医学専門学校公共雇用編集委員会および国立精神保健共同センターによって制作

シリーズ・エディター: フィル・ティムス博士

シリーズ・マネージャー: トーマス・ケネディ

© October 2020 Royal College of Psychiatrists

This translation was produced by CLEAR Global (May 2023)

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