児童虐待とネグレクトが感情に及ぼす影響

The emotional impact of child abuse and neglect

Below is a Japanese translation of our information resource on the emotional impact of child abuse and neglect. You can also view our other Japanese translations.

このリーフレットについて

このリーフレットは、こころの健康と成長に関連して親、教育関係者、青少年に向けて書かれた案内書シリーズのひとつです。児童と若者に影響を及ぼす、こころの健康の問題(情動障害、行動障害、精神疾患)についての、実用的で最新の情報を提供することを目的としています。ここでは、児童虐待の定義と悪影響について考え、実用的な援助を提供しています。

16歳のケイトが彼女が受けた虐待について語ります

それは私が8歳の頃、姉妹と一緒に叔父と叔母の家に泊まりに行った時に始まりました。姉妹と叔母といとこたちは出掛けましたが、私は体調が良くなかったので家に残ったのです。叔父は私の気分が良くなるゲームがあると言いました。いとこのバービー人形と一緒に遊ぶ特別なゲームだと言いました。ゲームの中で、バービーは結婚し、ハネムーンに出掛けました。叔父はハネムーンで人は特別なことをする、それが何なのか私に見せてあげるけれど、困ったことになるので誰にもそれを話してはいけないと言いました。

叔父はバービーの服を脱がせました。そして次に彼が何をしたのか本当に覚えていません。彼はこのゲームの仕方を私に教える、このゲームは彼を喜ばせると言いました。次に起こったことを話すのは本当に難しいのです。その後、彼は私に誰にも言わないと約束させました。他の人は誰も理解しないだろうし、私に腹を立てるだろうと言いました。それから私に甘いお菓子をくれました。その後、私が訪ねた時はいつも何かがありました。

始めのうち、彼は私によくしてくれました。私はそれが起こってほしくなかったのですが、彼の気を悪くさせたくありませんでした。私は何も起こっていないふりをしていました。

その後、私は叔父を怖がるようになり、彼は怒ってしまいました。何も起こっていないように振舞うのは難しくなり、それについて考えることが多くなり、本当に悲しくなりました。母には、何か悪いことがあったのかと聞かれましたが、話すことができませんでした。母は私のことを怒るだろうし、どうせ誰も私を信じないだろうと叔父が言ったのです。私はうろたえ、怖がりそして身動きがとれませんでした。誰にも話すことができず、それを止めることもできませんでした。

私は自傷行為を始めました。私は学校で友人に相談しました。彼女は女の子がチャイルドラインに電話するテレビ番組を見たことがあると言いました。彼女はチャイルドラインの番号を探すのを手伝ってくれて、母親の電話を使わせてくれました。

チャイルドラインのスタッフと話ができたことで、気分が良くなりました。友人は彼女の母親に相談し、彼女の母親が私の母に話したのです。母は本当に取り乱しましたが、怒りはしませんでした。そうなったことが悲しいのだと言いました。母は、私のせいではないと言いました。母は警察に連絡しました。女性警察官とソーシャル・ワーカーが私に会いに来ましたが、彼らはとても親切でした。彼らは私に何があったのか話してくれるように頼みました。それには時間がかかりました。それはテレビの「ザ・ビル」みたいな感じではなくて、警察署ではない本当に普通の部屋でした。叔父は逮捕されました。

母が警察に通報したために叔母やいとこは憤慨したので、私たちは今彼らには会っていません。母はこれで良かったのだ、虐待を止めさせたし、私たちは安全になったのだからと言います。私は今ではずっと気分がいいのです。

児童虐待とは?

親は誰でも、子どもたちにイライラすることがあります。子どもに「ダメ」と言ったり、悪いことをしたら叱ることは簡単なことではありませんが、しつけにおいて不可欠です。

疲れきってストレスを感じている親たちは、自分を抑えられず、後悔することをしたり言ったりして子供を傷つけることさえあるかもしれません。それが深刻だったりしょっちゅう起こったりすれば、子どもに著しく悪影響を及ぼします。虐待が法律で定義されているのはそのためです。児童法(The Children Act 1989)では、ある人の行動が子どもの健康や発達に「重大な悪影響」を及ぼした場合、虐待が起こったと考えるべきであると規定しています。

「重大な悪影響」とは、次のような行為を指します:

  • 子どもを過剰に罰する
  • 子どもを殴る、あるいは揺さぶる
  • 絶えず子どもを批判する、脅す、拒絶する
  • 子どもと性的関係を持つまたは性的暴行を加える
  • 子どもの世話をしない-十分な食事を与えない、無視する、子どもと一緒に遊ばないあるいは話をしない、または子どもの安全を確認しない

 

どんな人が子どもを虐待するのですか?

子どもたちは大抵、身内の誰かに虐待されます。これには親、兄弟・姉妹、ベビーシッター、他の成人した家族を含みます。家族以外の他人が関わることは稀です。

子どもが虐待されているかどうかをどうやって見分けますか?

虐待が起こった場所、時間、虐待の種類によって、子どもたちに様々な問題や行動が表れます。

子どもの身近にいる大人が長期に渡って虐待していることを見抜くのは、難しいことが多いです。子どもが誰かにそのことを話すのは非常に難しいのです。虐待者が、もし誰かに話したら傷つけてやると言って脅かしている場合があるからです。子どもは虐待されるのは自分のせいで、誰も自分を信じてくれないだろうし、からかわれるか罰せられるだろうと思っているので、何も言わないかもしれません。子どもは虐待者である大人を愛してさえいるかもしれません。子どもたちは虐待を止めてほしいと思っていますが、虐待者が刑務所に行くことや、家族がバラバラになることは望んでいません。

虐待のサインのいくつかを次に挙げます。
身体的に虐待された子どもは以下のようなサインを示します:

  • 大人に対して油断がない、警戒心が強い、あるいは用心深い
  • 遊ぶことができず自発性がない
  • 攻撃的あるいは乱暴に振るまう
  • 他の子どもたちをいじめる、あるいは自身がいじめられる
  • 学校で集中することができず、成績が良くない、またスポーツのような衣服を着替える必要のある活動を避ける
  • かんしゃくを起こし、よく考えずに行動する
  • 嘘をつく、盗みをする、学校をさぼる、警察沙汰を起こす
  • 他者を信用できず、友達を作ることが難しい

性的に虐待された子どもは以下のようなサインを示します:

  • 虐待が始まると、行動に突然変化が見られる
  • 自分のことをダメだと思う
  • 身だしなみにかまわなくなる
  • 遊びの中で、ずっと年長の者しか普通は知らないような性的な会話や発想をする
  • 自分の殻に引きこもる、あるいは隠しごとをする
  • 学業成績が悪くなる
  • お漏らしを始める、あるいは便をもらし始める
  • 眠れない
  • 不適切に誘惑的か、気を引こうとするやり方で振舞う
  • 身体的な接触を怖がる、脅える
  • うつ状態になり薬の過剰摂取をしたり、自分自身を傷つける
  • 家出する、誰とでもかまわず性的関係を持つ、または売春をする
  • 過度の飲酒をする、または非合法の薬物を使い始める
  • 拒食症や過食症のような摂食障害を発症する

情緒的な虐待、あるいはネグレクト(養育放棄)を受けた子どもは以下のようなサインを示します:

  • 歩行やことばの習得が遅い
  • 非常に受け身で自発性がない
  • 摂食に問題があり、成長が遅い
  • 親しい関係を築くのが難しい
  • 見知らぬ人に対してなれなれし過ぎる
  • 同年代の子どもたちと仲良くできない
  • 想像力を使って遊ぶことができない
  • 自分のことをダメだと思う
  • 気が散りやすく、学校の成績が悪い

どこで援助してもらえますか?

何よりもまず、これ以上の虐待から子どもを守らなければなりません。虐待を疑ったら、それを知らせることで子どもを助けられるかもしれません。

社会福祉サービスが関わって、次のことをはっきりさせる必要があります。

  • 何が起こったのか
  • 再び起こる可能性があるか
  • 子どもを保護するにはどんな手順が必要か

地域の社会福祉サービスの児童保護アドバイザーから、さらに詳しいアドバイスを受けられます。たとえ虐待の確信がなくても、彼らに相談することが役に立ちます。覚えていてください。私たちみんなが、子どもをこれ以上の被害から守る必要があるのです。

児童の保護

社会福祉サービスが、調査の結果、問題はすでに解決されていて、親が適切に子どもの養育・保護ができるという結論に至ることもあります。その場合には、家族が援助を必要としている場合に限り、社会福祉サービスはサポートを続けます。もし社会福祉サービスが、子どもに危害が加えられているという懸念がある場合には、児童保護検討会(ケース・カンファレンス)を開き、親とその子どもを知っている専門家が参加します。子どもと家族を援助し、これ以上の虐待が起こらないようにするための計画が立てられます。

子供の世話を援助する

家族内で子どもが虐待されているケースでは、虐待に関わっている当人が、自分のしていることを認め、助けを求めることもあります。その場合、当人が子どもの世話を上手にするために援助を受けることができます。

しかし、身体的、情動的悪影響の危険性が重大な場合には、子どもを虐待者から引き離されなければなりません。安全な環境が得られるようになるまでの短期間かもしれませんが、永久の場合もあります。

専門家による治療

子どもたちの多くは、これまでに受けてきた虐待のために専門家の治療が必要です。社会福祉サービスが運営している家族センターから援助を受けることができます。もし子どもが悩んでいたり落ち込んでいたり非常に気難しい場合には、子どもとその家族は地域の児童・青少年専門の精神保健医療サービス(child and adolescent mental health services; CAMHS)の援助が受けられます。これらの専門家たちは、家族全体と関わることも、子どもや青少年とだけ関わる場合もあります。グループでティーンエイジャーと関わることもあります。一対一の個人セラピーは、性的に虐待された子どもたち、あるいは重度のトラウマ(心的外傷)を経験した子どもたちに特に有効です。重度の虐待やネグレクトに苦しんでいる子どもたちは、世話をするのが難しいことがあり、CMHTなどのサービスは親や保護者に援助とアドバイスを提供します。

 

さらに詳しい情報

Barnardo's - さまざまな方法で、家族や子どもと関わります。カウンセリング、里親、養子縁組、若い介護者のための援助、研修、障害のある人の社会参加といったサービスがあります。

ChildLine - 子供のために、無料で利用でき秘密を守ってくれるサービスを提供しています。ヘルプライン Tel: 0800-1111

NSPCC (National Society for the Prevention of Cruelty to Children;英国子どもへの虐待予防予防協会) - 役に立つ出版物を多数刊行しています。子どもに関する心配事があるなら、NSPCCヘルプラインに電話してください。Tel: 0808 800 5000

The Hideout - 家庭内暴力により、生活に悪影響が出ている子どもたちへの援助とアドバイスを提供しているウェブサイトです。

Young Carers - 介護者としての役割も担っている子どもたちへの援助、情報、アドバイスを提供するウェブサイトです。

参考文献



Translated by Naoko Ogura, Hisako Akanuma and Dr Nozomi Akanuma. November 2013.

© [2013] Royal College of Psychiatrists. This leaflet may be downloaded, printed out, photocopied and distributed free of charge as long as the Royal College of Psychiatrists is properly credited and no profit is gained from its use. Permission to reproduce it in any other way must be obtained from the Head of Publications. The College does not allow reposting of its leaflets on other sites, but allows them to be linked to directly.

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