児童や青少年にみられる強迫性障害

Obsessive compulsive disorder (OCD) in children and young people

Below is a Japanese translation of our information resource on obsessive compulsive disorder (OCD) in children and young people. You can also view our other Japanese translations.

このリーフレットについて

このリーフレットは「こころの健康と成長期」と題する、親、教師や青少年のために書かれたシリーズ集のひとつです。ここでは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder, OCD)に関する説明と、誰にどのような影響を及ぼすのか、そしてどのような治療があるのかについて記してあります。

ジョン18歳、強迫性障害について語る

全然気づかないうちに始まっていたんだ。家族の誰かが死ぬことに不安を覚えるようになった。だから不安になると願掛けのつもりで軽く3回トントンと叩いて気を落ち着かせていた。そうしたら夜寝る前にもせずにはいられなくなったんだ、1回どころじゃなく3回を3セットもね。

病院でのバイ菌についてテレビで見た時にひどくなり始めた。父さんや母さんにはあまりにもくだらなくて言えなかった。常に手を洗っていないと、僕から誰かにバイ菌が移って死んでしまうと思った。たいてい家にいる時だったのが、そのうち学校で何か移されるんじゃないかと心配になり始めたんだ。

僕は母さんに毎日制服を洗ってもらった。母さんは断りたかったけど、僕がだんだんイライラするから洗ってくれた。とうとう頂点に達したのが、朝、バスルームにいる時間が長くなって学校に遅刻した時だった。髪を3回洗わないといけなくて、しかも決まった順序じゃないと駄目なんだ。誰かがバスルームを使うからと邪魔された時は、また最初からスタートしないと気が済まなかったんだよ。

母さんが見かねて助けを求めた。頭のおかしい奴と思われたくなかったけど、ロバーツ先生は本当に良い人で、何で僕がそんなに色んなことにイライラするのか分かってくれた。僕はその時14歳で、今は18歳。認知行動療法(CBT)という治療を受けたけど、大変だったよ。なんでそんなに不安になるのか理解し、コントロールするよう努めるのさ。今は大学で希望したコースを取っている。いまだに数は数えてはいるけど自分でコントロールできるまでになったよ。

強迫性障害とは?

「強迫」は一般的によく使われる言葉ですが、人によって違った意味で使います。強迫性障害(OCD)は不安障害の一種です。OCDを抱えていると、児童や青少年は強迫観念または強迫行為、あるいはその両方に苦しみ、例えば学校の登校時間を守る、宿題を終わらせる、友達との外出といった毎日の生活に影響を及ぼします。

強迫性障害の症状は?

考えや情景といったものが繰り返し頭に浮かび、ふり払うことが困難でくだらなく不愉快に感じます。これは強迫観念と呼ばれ、次のような例が挙げられます:
  • 20まで数えないと何か悪いことが起きると考えてしまう
  • バイ菌や病気を心配する
  • 物が片付いていないと気になる
無意味なことやしたくないことを繰り返さずにいられないことを強迫行為と呼び、次のような例が挙げられます:
  • 電気が消えているか何度も確認する
  • 手を何度も何度も洗う
  • 頭の中で数を数えたり言葉を何度も唱えたりする
このような強迫行為を止めようとしますが、最後まで終わらせないとストレスを感じたり不安になったりします。強迫観念や強迫行為は苦痛や不安を引き起こし、OCDを抱えた児童は、家庭にいる場合は家族と、学校では友人との間に影響が出始めます。

児童や青少年の多くに軽度の強迫観念や強迫行為が見られる時があり、おもちゃを決まったやり方で整理しなければ気がすまない、「おやすみ」を決まった回数言わなければいけない、といった例が挙げられます。これはごく普通であって、ストレスあるいは変  化に対する不安からくるものかもしれません。

強迫性障害であると判断するには?

児童や青少年が強迫性障害にかかっているか心配であれば、次のことを考えてみてください:
  • 本人が強迫行為に動揺する
  • 毎日の生活へ支障をきたす(学校生活や友達など)
上記の点でどちらも「はい」と答えた場合、その児童や青少年は強迫性障害にかかっている可能性がありますので、専門家にアドバイスを受けましょう。

強迫性障害はどのくらい一般的ですか?

強迫性障害はあらゆる年齢の人々に影響し、社会的地位、宗教または性別に関係ありません。一般的に幼児期に表れ、英国の人口の1〜2%が強迫性障害にかかっていると推定されます。これは少なくとも13万人の青少年が強迫性障害にかかっていることになります。

強迫性障害の原因は?

強迫性障害を引き起こす原因はまだ特定されていません。脳内の化学物質「セロトニン」のバランス異常が原因との研究もありますし、遺伝やチック症(けいれんのような動き)の家族がいる場合に起こりやすいとも言われています。まれに病気の後で現れることもあり、事故のような人生で困難な時期が過ぎてから起こることもあります。

強迫性障害の治療法は?

強迫性障害に有効な治療法は2つあります:
  • 行動療法
  • 薬物療法
この2つの治療は単独あるいは両方同時に用いられます。児童や青少年の場合は、両方の治療法が考慮されるべきです。
  • 行動療法は問題を調べることから始まります。児童や青少年とその家族が、強迫観念や強迫行為を日記につけることもあります。問題に少しずつ対処していきながら、児童や青少年が問題をどうやってコントロールするか学ぶことが、治療の目的です。本人が治療の計画に積極的に参加することが重要であるため、療法士と協力して治療プログラムを作ります。
  • 曝露・反応防止法(Exposure and Response Prevention, ERP)は療法士の協力で、児童や青少年が恐れていることや避けてきたことに向かい合う治療法です。強迫性障害によって引き起こされる不安をコントロールするために、いろいろな対処法を学びます。親や家族の誰かが強迫性障害の儀式に加わっていることがよくあります。家族は強迫性障害について学び、子どもの闘病を支える必要があります。EPR法は、親が子どもや療法士と協力して、子どもが強迫儀式に抵抗できるようになり、強迫儀式に関わることには家族が「NO」と言えるような方法を見つけます。
  • 薬物療法は強迫性障害の症状をコントロールするのに効果がありますが、残念ながら、治療で改善のみられた人たちの多くが服薬中止後に再発しています。薬物療法が必要な場合は、長期的治療になるかもしれません。

どこで治療が受けられますか?

強迫性障害はよくある病気で、かかりつけ医に相談しアドバイスを受けましょう。専門家によるアセスメントや治療が必要な場合は、かかりつけ医から児童・思春期専門の精神保健サービス(child and adolescent mental health service; CAMHS)へ紹介してもらいましょう。

症状が長期間続いていたり、日常生活が強迫性障害により深刻な影響を受けている場合は、他の専門家の助けも必要かもしれません。教師や教育現場専門のソーシャルワーカー(社会福祉士)などに、その児童・青少年が通常の学校生活へ戻れるよう協力をお願いしましょう。

さらに詳しく知りたい方のために

International OCD Foundation - 強迫性障害とそれに関連した疾患を持つ人とその家族、友人、専門家や関係者で構成されている、国際的な非営利団体です。

OCD Action - 英国の慈善団体で、強迫性障害や身体醜形障害、皮膚自傷癖、抜毛癖といった強迫性障害に関連する疾患を持つ人たちを支援します。

OCD UK - 強迫性障害をもつ人たちを支援する英国の慈善団体。

参考書籍および文献

Translated by Miki Ito, Kei Matsumura and Dr Nozomi Akanuma. January 2014.

© [2014] Royal College of Psychiatrists. This leaflet may be downloaded, printed out, photocopied and distributed free of charge as long as the Royal College of Psychiatrists is properly credited and no profit is gained from its use. Permission to reproduce it in any other way must be obtained from the Head of Publications. The College does not allow reposting of its leaflets on other sites, but allows them to be linked to directly.

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