不安障害と全般性不安障害 (GAD)

Anxiety and generalised anxiety disorder (GAD)

Below is a Japanese translation of our information resource on anxiety and generalised anxiety disorder (GAD). You can also view our other Japanese translations.

この情報は不安障害に悩まされている方や、全般性不安障害(GAD)と診断された方向けに書かれています。

自身の手で治すにはどうすればよいか、また専門家の手を借りるにはどうすればよいかに焦点をあてています。また、身近な人が不安障害に悩まされている人や支援者向けに役立つ情報も収録しています。

不安障害とは何ですか?

不安感とは、ストレスが多くて、何か悪いことが起こりそうな、あるいは困難な状況、または困ったことに直面している時に不愉快な感情を言い表すのに使う言葉です。不安感自体がメンタルヘルス疾患というわけではありません。

生活していると様々な理由で不安感を抱くことがあります。これは正常な反応です。たいていの場合は、状況が変わったり、不安障害の原因となっていた状況から離れて時がたつと消え去ります。

不安障害が問題になるのはどんな時ですか?

不安障害は次のような時に問題になります:

  • 不安感がとても強い
  • いつもまたはほとんどの時間に不安感がある
  • 不安を感じる明確な理由がない
  • 日常生活に悲観的な気持ちを持つ

そうなると、不安障害で常に不快に感じ、やりたいことができなくなり、人生を楽しむことが難しくなります。

不安障害とはどのような感じですか?

不安障害は、気持ちや体のいろいろなことについて、以下のような様々な感情を引き起こします:

気持ちの面では

  • 四六時中心配している
  • 疲労感や酷い眠気を感じる
  • 意識を集中できない
  • イライラしたり意気消沈している
  • 落ち着かなかったり緊張を感じる
  • どうしようもないと感じる
  • 何か嫌なことが起こるかもしれないと心配になる。

身体の面では

  • 鼓動が速くなる、または不規則になる(動悸がする)
  • 汗が出る
  • 口が乾く
  • 筋肉が緊張し痛む
  • 頭痛がする
  • 身震いする/手が震える
  • 指、つま先や唇が無感覚になったりチクチクしたりする
  • 呼吸が速い
  • めまいがしたり気を失うことがある
  • 消化不良やさしこみや気分が悪いなどの胃の不調が生じる
  • なんどもトイレに行く
  • こういった様々な身体的感覚に不安になる。

不安障害を抱えている人は、自分の症状が身体疾患の兆候ではないかと心配することもあります。この心配が不安障害を一層悪化させ得るのです。

長く不安障害に悩まされている人は、意気消沈しやすくなります。また、不安障害に悩まされている人の中には、同時にうつ病を発症する人もいます。

何が不安障害を引き起こすのですか?

不安障害は、次のようなものを含む極めて多くの事柄が原因で引き起こされます:

  • 仕事で受け取った不愉快なメールや、扱いにくい顧客とのやり取りのような日常の出来事
  • 離婚を経験したり、身体疾患になる、または誰かの訃報に接するような人生の重大事。

時には、良いことが起きている時に不安を感じることさえあります。たとえば、デートに行こうとしている時や就職の面接を受ける時などです。これらは悪いことではありませんが、体に身体的や心理的な不安の影響を生じさせる場合があります。

なぜ不安障害が起こるのですか?

不安感は不快に感じますが、特定の環境かつ限られた時間内で役に立つことがあります:

  • 心理的 ― 難しい状況にある時に適切に反応できるように、問題があるので警戒を怠るなと、不安感が警告を発します。
  • 身体的 ― 身の危険を感じると、体は危険から逃げる、または自分を守る準備をします。これは「闘争・逃走」反応と呼ばれています。

全般性不安障害(GAD)とは何ですか?

全般性不安障害(GAD)は、不安障害の一種です。強迫性障害(OCD)やパニック障害など、ここに記載されていない不安障害が他にもたくさんあります。

全般性不安障害では、次のような症状が現れます:

  • 同時に様々の心配事を持つ
  • 状況からあり得ないことを心配する
  • 自分の心配をコントロールできないと感じる。

全般性不安障害はよくあることで、英国人の25人に1人が罹患します。 

全般性不安障害の原因は何ですか?

全般性不安障害の原因は1つではありません。遺伝子、社会環境、生活体験のすべてに要因があり、それらが相互に絡み合っています。

全般性不安障害の近親者がいると、不安障害を発症する可能性は通常の4~6倍大きくなります。ただし、不安障害は単一の遺伝子に起因するものではありません。逆に、それぞれが小さな影響を及ぼす複数の遺伝子が相まって、発生するリスクが増加します。

いつ助けを求めたらよいでしょうか?

不安障害のために生活に支障がある場合、あるいは全般性不安障害を発症しているかもしれないと思う場合は、助けを求めるのが早ければ早いほど、早く回復に向かうことができます。

助けを求めることをためらう理由は様々ですが、たとえそれが事実でなくても、次のような考えを持つのは普通のことです:

  • 「こんな私だから、自分自身でなんとかしなければいけない」―たった1人で立ち向かうべき人などいません。誰もが支援を受けて当然なのです。大切にしている人に話しかけるように、自分自身にいつくしみをもって語りかけてみてはどうでしょうか。
  • 「私には他にもっと集中すべき大切なことがある」―多くの人が、自分の精神衛生、心の健康を第一に考えるのに苦労しています。 特に、家族や地域社会で重要な責任を負っていたり、外的な問題に直面している場合は、大変な思いをすることがあります。しかし、健康でなかったら自分にとって大切なことをやり続けることはできなくなるでしょう。自分自身を助けることで、他の人を助ける時に良い働きができます。
  • 「私が助けを求めたら、他の人たちがどう思うか心配だ」―あなたが経験していることを理解し、同じような困難を経験したことのある人が、いかにたくさんいるか驚くかもしれません。あなたの身のまわりにいて、助けを求めるあなたのことを理解し、支援しようとしてくれる人たちの声に耳を傾けてみてください。

どうすれば自分を助けることができますか?

不安障害に悩まされる人や全般性不安障害を持っている人たちが利用できる支援はたくさんあります。多くの場合、不安障害は次のように自分で手当てをすることで改善できます:

  • 不安障害について話す - 人とのつながりが切れた、子どもが病気になった、失業したというような生活の中で起こった何かのために不安障害が始まった場合、それを誰かに話すことが役に立ちます。あなたが信頼し尊敬していて、聞き上手な人に話しましょう。親友、一般開業医(GP)、宗教家、あなたが支援を頼みやすい人なら誰でもかまいません。
  • セルフヘルプツール - あなたのメンタルヘルスの改善に使えるセルフヘルプツールはたくさんあります。自分で認知行動療法の練習ができる本やアプリだけでなく、瞑想やマインドフルネスなどもあります。心理療法についてのこの後のセクションで、認知行動療法についてもっと詳しく見ることができます。
  • 自助グループ - 一般開業医(GP)に自助グループを紹介してもらってください。自助グループでは同じような問題を抱えた人々と出会えます。話す機会があるだけでなく、他の人が自分の不安障害をどのように管理しているかがわかります。不安障害や恐怖症に特化したグループもあります。一般開業医(GP)に、どのようなグループが役立つかをたずねましょう。
  • ピアサポート - ピアサポートとは、安全でサポートが行き届いた環境で、自分と似たような経験を持つ他の人と出会う場所です。ピアサポートを見つけるで、もっと詳しく見てみましょう。

慈善団体を通じて自助グループやピアサポートを見つけられるかもしれません。たとえば、メンタルヘルス関連の慈善団体「Mind(マインド)」には、性別や年代、必要な支援によっていろいろなグループを運営するローカルサービスがあります。

専門家のサポートを受けるにはどうすればよいですか?

自助努力を試みてもまだ苦しんでいるのであれば、さらなるサポートが必要かもしれません。どのような治療法が提供されるかは状況によりますが、全般性不安障害を患っている場合に提供される可能性のある治療法の一部を紹介します。

心理療法

心理療法 (トークセラピー) では、抱えている問題についてセラピストと話し合います。

メンタルヘルス疾患によって、アプローチ方法が異なります。全般性不安障害の治療には、次の2つのアプローチ方法が推奨されます:

認知行動療法(CBT: cognitive behavioural therapy)

CBTとはトークセラピーのことであり、日常の場での考え方や行動の仕方についてより有効な方法を学ぶことができます。思考や行動、感情のつながりに気付くよう指導することで、心の状態を改善する目的があります。

全般性不安障害を患っている場合、認知行動療法により自分の恐れを知り、不安に耐えられるように支援します。CBTは、1人で、またはグループで行います。対面またはオンラインで、通常は週に1回、数週間または数か月にわたって行います。

CBTの詳細については、CBT information resourceを参照してください。

応用リラクゼーション法

応用リラクゼーション法は、いつも不安になりやすい場面で身体をリラックスさせるのに有用なセラピーです。訓練されたセラピストが身体をリラックスさせる方法を指導します。セッションは1時間を毎週、数か月にわたって行います。

このセラピーを実践することにより、日常的に不安障害を引き起こす場面で応用リラクゼーションを行えるようになるでしょう。

薬物療法

心理療法が有効でなかったり、希望しない場合には、薬物療法という選択肢があります。

医師から、薬物療法とトークセラピーの組み合わせを勧められることがあります。これは、薬物療法だけやトークセラピーだけより、両方を組み合わせた方がより効果的である場合があるためです。

SSRI

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)は、抗うつ薬の一種です。抗うつ薬と言われてはいますが、全般性不安障害を治療するのにも使われます。

SSRIは、脳にあるセロトニンの量を増やすと考えられています。セロトニンは気分や感情、睡眠に良い影響があるとされています。SSRIは、他の抗うつ薬よりも副作用が少ない薬です。

SNRI

SSRIが有効でない場合、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を処方される場合があります。これはSSRIに似た別の種類の抗うつ薬ですが、効用が少し異なります。

抗うつ薬は、通常効果が出るのに2~8週間かかるため、しっかりと効果を出すために規則的に服用しなければなりません。他の薬剤と同様、抗うつ薬は副作用を引き起こす可能性があるため、主治医と相談する必要があります。これらの詳細については、抗うつ薬に関する情報を参照してください。

プレガバリン

SSRIもSNRIも有効でない場合、てんかんや疼痛の治療にも使われるプレガバリンが処方される場合があります。これは、不安障害の人にも有用であることがわかっています。

プレガバリンは依存症を引き起こす可能性があります。もしプレガバリンに依存してきていると感じたり、処方された以上の服用をしている場合は、直ちに主治医に相談してください。

その他の治療

ベンゾジアゼピン

ベンゾジアゼピンは鎮静薬の一種です。この薬は、対処が困難だったり、不安感をコントロールできないと感じた場合に、短期間処方される場合があります。ベンゾジアゼピンは、長期間使用すると依存症を引き起こす可能性があります。もしベンゾジアゼピンに依存してきていると感じた場合は、直ちに主治医に相談してください。

ベータ遮断薬

まれに、心拍数を下げることにより効果を上げるベータ遮断薬を処方されることがあります。この薬は不安障害による身体の感覚を落ち着けるのに役立ちます。

漢方薬

漢方薬が不安障害に有効だと感じる人もいます。しかしながら、これらの効果ははっきりとした証拠が得られていません。他の薬剤との併用で重大な問題を引き起こす可能性があるので、代替医療を行う場合は事前に主治医と相談しましょう。

詳細については、代替医療理学療法に関する情報を無料でお読みいただけます。

不安障害に苦しんでいる人はどのようにわかりますか?

ほとんどの人は時折、問題にならない程度の不安障害を経験しています。知り合いが、いつもより高いレベルの不安を感じているかもしれないと思った時に、気をつけるべきことをいくつか紹介します:

  • 度を越えてある事柄を、あるいは多くのことを心配しているようである。
  • これまで避けていなかった場面や環境を避ける。パーティー、外食、人の多い場所など。
  • 頭痛や腹痛、疲労などの身体症状を訴える。
  • 特に理由もなく気が動転したり怒ったりいら立ったりする。
  • 用事をキャンセルしたり、自分の言ったことを実行できない。
  • 話をしている間、ぼーっとしていて相手の話を聞けない様子である。

人生経験、文化・宗教の違い、母国語によって不安障害の感じ方や伝え方は異なります。このため、他の人が不安障害かどうかがいつもすぐにわかるわけではありません。

不安障害を抱える人に対してどのようにサポートできますか?

不安を感じることのない人にとっては特に、不安障害を患っている人のサポートは難しいものです。サポートするためには、次のようなことができます:

  • 話を聞く - 不安障害で苦しんでいる人の話に耳を傾けることは、大きな支えになります。ときには誰かに不安な気持ちを聞いてもらうだけで、不安を落ち着かせるのに効果があります。
  • 忍耐強くいる - その人があなたのスケジュールどおりに行動できなかったり、イライラしたり注意散漫に見えても忍耐強くいましょう。個人的に受け止めないことが大切です。
  • 真剣に捉える - 不安に思っていることが理にかなっていないと思っても、その感じ方はその人にとって現実的なものです。その人の不安に賛同する必要はありませんが、その人の感情は正当で、サポートを受ける権利があるのだと教えてあげましょう。

不安障害で苦しんでいる人がいれば、自分自身をケアしたり専門家の援助を受けるなど、支援を求めるよう勧めましょう。

慈善団体Anxiety UKでは、不安障害の人をサポートする際に役立つアドバイスを公開しています。

詳細情報とサポート

あなたやまわりの人が不安障害や全般性不安障害を患っている時は、以下の情報とサポートについての文献が役立ちます。

不安障害についての情報とサポート

  • Anxiety and panic attacks, NHS - NHSのホームページでは、不安障害についての様々な情報を提供しています。
  • Every Mind Matters, information on anxiety - NHSでは、不安障害とつき合うためのアドバイスや、ストレス・不安に対処するための無料プランを提供しています。
  • Anxiety UK, infomation on anxiety - 慈善団体Anxiety UKのページでは、不安障害についての説明や、動画による不安障害とつき合うための実践的なアドバイスを掲載しています。
  • Mind, anxiety and panic attacks - メンタルヘルス関連の慈善団体Mindでは、一般的な不安障害と、全般性不安障害についても取り上げています。
  • Mental Health Foundation, Anxiety - Mental Health Foundationでは、不安と不安障害に関する情報を提供しています。

全般性不安障害についての情報とサポート

クレジット

この情報は英国王立精神医学院のパブリック・エンゲージメント編集委員会(PEEB)により制作されたものです。執筆時点での利用可能な最良のエビデンスを反映しています。

専門家執筆者:David Veale教授、David Nutt教授

ご要望によりこの資料のすべての参考文献をご利用いただけます。

発行年月: 2022年5月

閲覧期限: 2025年5月

© Royal College of Psychiatrists

This translation was produced by CLEAR Global (Jun 2023)

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