自閉症とアスペルガー症候群:親、介護者、その他すべての児童・青少年と関わる人たちのための情報

Autism and Asperger's syndrome: information for parents, carers and anyone who works with young people


 

ケスター、9歳

「ぼくはパソコンでゲームをするのが好きだし、RPG(ロール・プレーイング・ゲーム)が好きなんだ。ネットでゲームをすれば、ぼくと同じことが好きな人たちと遊べるから問題ない。ぼくがゲームの話を学校ですると、ほどんどのやつらはぼくのことをヘンなやつと思うみたいだ。ぼくが自分の部屋にこもってばかりにいて、放課後に同級生たちと遊びたがらないことをお母さんは心配している。ぼくは一人でいる方が好きだ。他の子たちはぼくをイライラさせるから頭に来るんだ。大きくなったら、ぼくと同じ趣味の人と友達になりたい。

お母さんが言うには、ぼくはアスペルガー症候群なんだって。それが何なのかよくわからないけど、気にしていない。ぼくが他の子たちと違うのはわかっているし、他の子たちとは仲良くなりにくい。お母さんだって、ぼくが靴下や靴をはきたくないときもあるってことを、いつもわかってくれるわけじゃない。ぼくは学校に行くときは靴下や靴をはくけど、家に着いたらすぐに脱ぐんだ。」

 

このリーフレットについて

このリーフレットは、親、介護者、児童・青少年に関わる職業のすべての人に向けて書かれた「こころの健康と成長」と題するシリーズのひとつです。児童や青少年が抱えやすいこころの問題(情緒的問題、行動上の問題、精神疾患)に関して、実践に役立つ最新の情報を伝えることを目的としています。ここでは、自閉症と自閉症スペクトラムを詳しく解説しています。また、お子さんがこのような問題を抱えているかもしれないと考えられた場合に、どのように支援が得られるか、実用的なアドバイスを提供しています。

自閉症スペクトラムとは?

自閉症は、自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders:ASD、または、Autism Spectrum Conditions:ASC)として知られる一群の疾患の中心に位置します。自閉症はまた、社会コミュニケーション障害や広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:PDD)とも呼ばれます。

このリーフレットでは、ASDという用語を使います。ASDは神経発達障害であり、脳の発達・機能の異常のために引き起こされます。

ASDは、児童・青少年の約100人中1人に見られます。
ASDを持つ児童や青少年は、以下に示す特有の困難があります:

  • コミュニケーションが困難
  • 他の人と交流することが難しい
  • 特徴的な行動上の困難がある


ASDを持つ人の知的能力には幅があります。重度の知的障害を抱えている人、学力が高い人、普通の教育を受けている人など様々で、ASDを持つ人の約10%は特殊な技能・能力を持っています。

ASDの診断には、生後3年以内に発達上の問題が認められることが必須です。「アスペルガー症候群」とは、平均水準の知的能力があり、ことばの習得に遅れがない一部の高機能ASDの人をあらわす用語です。アスペルガー症候群の人は、列車の時刻表、バス、または恐竜などに対して強い関心を示すことが多くあります。

ASDの特徴は?

ASDを持つ児童や青少年の特徴は、年齢、発達水準、および障害の重症度によって様々です。

障害はまた、時間とともに変化する可能性があります。大抵は親が真っ先に(いつもではありませんが)、自分の子どもの発達に何らかの問題があることに気がつきます。障害は、早ければ乳児期に気付かれることがあります。

全体としては、ASDを持つ人の問題と行動は、以下の主な3種の領域に分類できます:

  • コミュニケーション障害

ASDを持つ児童や青少年には、言語コミュニケーション(会話)と非言語コミュニケーション(人と目を合わせること、表情による感情表現、身振り手振り)の両方に障害が認められます。ASDを持つ児童の中には、まったく話さない、あるいはほんの少ししか会話できない人がいます。会話や語学の能力が優れている人もいますが、それでも社交の場で会話をしたり、会話を続けたりすることに困難があります。ASDを持つ児童の言葉づかいは、非常に形式的であったり、「大人びて」いたりします。自分が関心のある話題については長々と話しますが、他の人と意思の疎通がある会話を理解するのは困難です。

  • 社会的相互作用障害

ASDを持つ児童や青少年は、「社会」を理解するのが困難です。例えば、自分や周囲の人々の感情を認識・理解できないことが多いです。そのために、友達を作るのが難しくなる可能性があります。一人でいることを好み、また、社会のルールや期待を理解するのが困難なため、他人に無関心のように見えることがあります。相手は友達になりたいと思っていたとしても、他者の考え方を理解するのが難しいのです。

  • 行動、関心および活動に関する障害

ASDを持つ児童や青少年は、慣れ親しんだ一定の行動(例えば、毎日同じ道を通って学校へ行く、特定の順番で服を着るなど)を好むことが多いです。また、変化に対応することが難しく、変化は困難で苦痛を伴うものと感じます。

電子器具や年表などに対して、並外れて熱心で特別な関心を抱くことがあります。おもちゃを「オブジェ」のように並べることもあります。味、におい、音、触感など自分のまわりの環境からくる刺激に対して、並外れた反応をすることがあります。例えば、ヘア・ドライヤーの音や、肌に触れる特定の服地の感触に対して非常に敏感になったりします。

ASDを持つ児童の中には、手や指を上下に振ったりねじったり、または複雑な全身運動をするといった、独特の反復動作をする人もいます。

原因は?

ASDの正確な原因は未だわかっていませんが、研究によると、遺伝要因や環境要因が組み合わさって、脳の発達に変化が生じる可能性があるとされています。ASDを持つ児童の兄弟姉妹は、ASDや他の発達障害の発症リスクが高まります。

どこで支援を受けられますか?

あなたがお子さんの発達に不安を感じていたり、お子さんが通っている学校や保育園から発達に関する不安があると伝えられたりした場合、まず、かかりつけ医や訪問保健師に相談しましょう。アドバイスを受けられ、必要に応じてあなたの地域にある児童発達チーム(Child Development Team)や 児童思春期専門の地域精神保健サービス(Child and Adolescent Mental Health Service)にあるASD診断チームに紹介してもらえます。

正確な診断のためには、お子さんの初期の発達、医学的・心理学的評価、ならびに社会的スキル・コミュニケーション能力・知的能力の総合的評価を詳細に検討する必要があります。こういった評価の一部は、学校などの異なる環境でお子さんを観察して行われます。血液検査、脳の断層写真撮影のような、それだけでASDを診断できる検査法はありません。しかし、他の障害を除外するために、様々な検査(聴覚検査、血液検査など)が実施されることがあります。

学習障害

ASDを持つ児童には、全般性または特定の学習障害が認められることがあります。これは、軽度から重度に及び、ASDと学習障害の両方を持つ児童も、他のこどもたちと同じように、学習やその他の能力のどちらにおいても、子どもそれぞれの長所と短所があります。

支援するためは

ASDに対する既知の治療法はありませんが、お子さんとその家族は、多くの方法で支援を受けることができます。支援には以下のことが含まれます:

  • 障害に関する情報の取得
  • 行動障害の管理
  • 社会的コミュニケーションと感情スキルの育成
  • 場合によっては薬物治療

コミュニケーションや学習のために役立つ様々な方法があります。また、ASDを持つ児童は、できるだけ早期に支援を受けるのが望ましいといわれています。

ASDを持つ児童のケアは、大抵の場合数人の専門家が関わります。言語療法士、心理士、作業療法士、および医師(小児科医や児童精神科医)などが含まれます。

育児に関する専門講座、子育て支援グループ、家族やそのサポーターをどのように支援するかのアドバイス、また給付金に関するより全般的な助言も得られます。こういった支援サービスは、地域の小児保健事業局や、英国自閉症協会(National Autistic Society)などの第三者機関を通し て得られます。

教育

ASDを持つ児童や青少年は、特別教育支援が必要なことが多いです。これは、特別教育学校、または特別支援学級のある普通学校で行われます。特別支援は、例えば、葛藤や動揺といった情動にうまく対処したり、他の児童と上手につきあうためのものです。休憩時間や昼食の時間など枠組みのはっきりしない状況は、ASDを持つ児童にとって、非常に困難なことがあります。こういった子どもたちは、特に中等学校で、いじめや搾取の被害にあうことがあります。

将来

ASDを持つ児童や青少年のほとんどは、時間と共に障害の程度が軽くなるものの、生涯を通じて同様の困難を負い続けます。できるだけ早期に支援を受けることで、子どもたちの負う困難はとても軽くなります。

 

さらなる支援機関

社会福祉事務所は、ASDを持つ青少年やその家族に対する実践的な援助や支援を提供するという役割を担っています。休息ケアなどの地域で利用できるサービスや施設、障害手当金に関する助言などのサポートを提供しています。多くの家族は、地域の自閉症児の親・介護者支援グループからの援助を有益と感じています。

 

参考書籍

The Complete Guide to Asperger's Syndrome (2006). Tony Attwood. Jessica Kingsley Publishers: London.

Finding Out About Asperger's Syndrome, High-Functioning Autism and PDD. Author Gunilla Gerland. Jessica Kingsley Publishers: London

Parenting a child with Asperger Syndrome – 200 tips & strategies. B Boyd (Jessica Kingsley)

It can get better. Paul Dickinson & Liz Hannah

The ASD Workbook: Understanding your Autism Spectrum Disorder. Penny Kershaw.

 

さらに知りたい方のために

英国自閉症協会(The National Autistic Society)
自閉症を持つすべての人たちの権利と利益を擁護します。また、自閉症をもつ本人とその家族に、利用可能で、信頼でき、頼りになる支援、サポート、およびサービスを提供することを目的とし、生活に好ましい変化をもたらすように努めています。

Contact a Family
全国規模の慈善事業で、すべての障害を持つ子どもの親に、助言・情報・援助を行います。無料電話相談番号:0808 808 3555(英国内)。

自閉症研究(Research Autism)
英国の慈善事業で、自閉症の治療のための研究を目的として設立されて います。

 

参考文献

Rutter M et al. (2008) ‘Rutter’s Child and Adolescent Psychiatry’ (5th edn). Oxford: Blackwell

Scottish Intercollegiate Guidelines Network.Autism Spectrum Disorders: booklet for Young People.

Scottish Intercollegiate Guidelines Network.Autism Spectrum Disorders: Guideline 98: Assessment, diagnosis and clinical interventions for children and young people with autism spectrum disorders.

National Institute for Health & Clinical Excellence (NICE). Autism: Recognition, Referral and Diagnosis. Clinical guideline 128

 

知的障害者とその介護者のための情報

英国王立精神科医学会学習障 害部門とLeicestershire Partnership NHSトラストは、こころの健康上の問題および学習障害を抱えている人々に向けて、利用しやすい情報を提供しています。これらの資料はすべて、学習障害者とその介護者と共に、執筆、検証されています。

 

Translated by Takeshi Watanabe, Yumi Wheeler and Dr Nozomi Akanuma. May 2013.

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