家族の死 − 子ども達の立ち直りを助けるために:親、保護者、青少年とともに過ごす人の心得

Dealing with death

 

 

17歳のジョシュが父親の死を語る

父さんと母さんは、僕がまだ3ヶ月の赤ん坊の時に別れたんだけど、僕は、週末は2週間ごとに父さんと一緒に過ごしていたんだ。父さんのアパートはいつも散らかっていたし、父さんは週末はほとんどをパブ(訳注:居酒屋)で過ごしていたけど、僕は父さんのところに泊まるのが大好きだった。上の階に住んでいた二人の兄弟と親友になれたしね。

ある週末、父さんはひどい胸の痛みを訴えたんだ。それで、僕の友達のお母さんが救急車を呼んでくれた。父さんは病院で死にかけたんだよ。僕はその時一緒にいて、父さんは僕に、母さんには言わないようにって口止めしたんだ。なぜって、父さんは、僕が父さんに二度と会えなくなるのを心配したからね。母さんが僕を病院に迎えに来た時、父さんは母さんに、潰瘍が破裂したって話したんだ。

それから間もなく父さんは死んだ。しかも父の日に。アルコール依存症が原因でね。僕はその時8歳だった。父さんのことを話すのは難しいんだ。今になってもね。だって父さんと母さんは離婚してるし、母さんはまだ父さんのことを怒っていたからね。それに僕は、自分が父さんと一緒にいなかったことをものすごく悪かったと感じていたんだ。僕が一緒にいたら、絶対父さんを助けられたと思う。そう思うと、すごく気が滅入るんだ。

 

学校の友達は、僕の父さんが死んだことを知った時、僕になんて声をかけていいのか分からなかったらしい。僕は僕で、なんだかいつも自分は他の子と違うように感じてたんだ。他の子には親が、たとえ別居していたり離婚していても、両親が二人揃っているんだよね、僕には母さんしかいないんだ。

僕は部屋に父さんの写真を2枚飾ってあるけど、父さんの顔を忘れちゃっていて罪悪感を感じるんだ。時々父さんの夢を見るけど、僕の大好きな、僕の知っている父さんは、ずっと46歳のままなんだよね。ずっと年を取らないんだ。

最近父さんの兄弟のひとりが亡くなって、父方のおじいさんやおばあさんや、おじさんやおばさん、甥や姪のみんなと会ったんだ。父さんのことを何でも話せたし、父さんを懐かしむことができて最高だったよ。

 

 

家族の死 − 子ども達の立ち直りを助けるために:親、保護者、青少年とともに過ごす人の心得

 

このリーフレットについて

このリーフレットは、親、教師や青年のための、こころの健康と成長期シリーズのひとつです。子どもや青年に影響を与える、こころの健康に関する話題(情緒的、行動上の問題や精神疾患)について、実用的かつ最新の情報を提供することを目的としています。このリーフレットでは、家族の死が子どもや青年に及ぼす影響と、それに対する対処法について書かれています。

 

はじめに

誰もが身近な人を失くした時、悲嘆を経験します。亡くなったという事実を受け入れ深い悲しみから立ち直るには、時間が必要です。

 

子どもは死に対してどのような反応をするのでしょうか。

家族の死は、あらゆる人に影響を及ぼします。家族全員にとって辛い時であっても、子ども達のことを特に配慮する必要があります。

 

子どもがどのように反応するかは、様々な要因によります。例えば次のようなことが考えられます:

  •  亡くなった人が、子どもや家族とどのくらい親しい関係であったかが重要です。さらに、亡くなった人が、子どもや家族の生活にどれだけ関わっていたかも要因のひとつです。
  • 死は突然のものでしたか、それとも予測されていたものでしたか(苦しみから解放されてほっとするものでしたか、それとも「精神的にひどいショック」を受けるものでしたか)。また、その死がどれほど衝撃的なものであったかは、子どもの、死に対する向き合い方にに大きく影響します。
  • 亡くなった時の状況も子どもに影響を与えます。家庭ごとに死に対する反応は違います。宗教や文化もそれに大きな影響を与えます。子どもの視点から見た時に、大きな影響を及ぼす他の要因には次のようなものがあります:
    • 他の家族の悲嘆が影響を及ぼします。特に、家族が、子どもが必要としているケアを与えられない場合です
    • 家族が死に向き合うために、どれほどの実用的な力添えを得られるかどうかです。

 

子どもは死に対してどのように反応しますか?

子どもの年齢と理解力によって、その死が子どもの人生に及ぼす影響が変わってきます。

幼い子どもの場合は主に、世話のされ方や日課が変わることによって、いつも一緒にいた人がいなくなったことを実感するかもしれません。幼児は、周りの人の悲しみにとても敏感です。そのため、不安になったり、落ち着きがなくなったり、これまで以上に他の人の注意を引きたがるようになるかもしれません。

就学前の子どもは大抵の場合、死ぬということは一時的なもので、また元通りになると思っています。これは、漫画のキャラクターが「一度は死ぬ」けれども、「再び生き返る」姿を見ることで、そう信じてしまうのです。

5歳以上の子どもは、死の基本概念を理解できます:

  •  死は、生きているすべてのものに起こること
  •  死には、原因があること
  •  死は、永遠の別れを意味すること

子ども達は、亡くなった人は食べたり飲んだりする必要がなくなり、何かを見たり聞いたりすることもなく、おしゃべりをしないことや、触られた時に感じないことも理解できます。

 

多くの子ども達は、死に対して悲しみを感じるのと同じくらい、怒りを感じたり不安になったりします。怒りの感情は大切な人を失ったことに対する自然な反応であり、子どものこころの安定や安心感に欠かせないものです。子どもはこの怒りを、乱暴な遊びを始めたり、怒りっぽくなったり、悪夢を見ることで表現することがあります。不安な気持ちは、赤ちゃんのような話し方や行動、いつもより食べ物や安心感、だっこを求めることに示されます。  

 

幼い子どもは、自分の周りで起こることは自分のせいだと考えます。誰かが死んでしまったのは、自分が良い子にしていなかったからだと悩むこともあります。

 

十代の子どもは、大人と同じように死を理解することができ、他の人がどのような気持ちを抱えているのかよく分かっています。ただ、自分の感情を言葉でどう表現したらよいのか分からなかったり、他の人の気持ちを不安にさせることを恐れて、自分の心情を表に出さないかもしれません。

 

死に向き合う子どもの支え方

大人にとって、子どもが死に直面したときの反応についての理解があると、子どもを支える際に戸惑いが少なくなります。さらに、子どもが死を受け入れられずに、どうしていいのか分からず苦しんでいる状況に気づきやすくなります。

 

死後早期における支え方

大人は時として、子どもを傷つけないようにという配慮から、本当のことを伝えないことがあります。

 

けれども、子ども達が早い時期に真実を知ることが、その子のためになるということは、経験的に知られています。子ども達は、亡くなった人と会いたがるかもしれません。親しければ親しいほど、子ども達が真実を知ることが大切なのです。

 

大人が、子どもの死に向き合っている現実に耳を傾け、質問に答えたり、安心感を与えることは、子どもにとって大きな支えになります。子ども達は往々にして、大切な人に置き去りにされるのではないかという不安を抱いたり、誰かが死んでしまったのは、自分のせいではないかと恐れたりします。もし自分の思っていることを話したり、遊びを通して気持ちを表現できれば、子ども達は少しうまく悲しみに対処していくことができます。そして、その後の人生において、情緒的な問題を抱える可能性が少なくなります。

 

往々にして幼い子どもにとっては、誰かが一緒に思い出を振り返ってくれないかぎり、亡くなった人のことを思い出すのは難しいものです。子どもはそういう記憶がないことに、ひどく不安になるかもしれません。そのような時に写真は、子どもにとって大きな慰めとなります。

 

多くの場合、お葬式への参列のような家族の行事に一緒に参加することは、子ども達にとって助けになります。子どものこころの準備と手助けをどのようにするかということを、十分に考慮することが大切です。お葬式に参列することを怖がる子どもの場合は、無理に連れて行くことは避けたほうがいいでしょう。ただし一般的には、とても小さい子どもを除いて、亡くなった人にお別れを言う方法、− 例えばろうそくを灯したり、お祈りをしたり、お墓を訪ねたりすること− を知ることは重要です。

 

死後時間が経ってからの支え方

子どもは、一旦死を受け入れると長期間にわたり、ふとした時に、悲しみや怒りや不安などの感情を表すことがあります。遺された家族はできる限り子どもと一緒に過ごし、他の人の気持ちが揺れ動くことを恐れずに、ありのままの感情を口に出して良いことを伝えてあげましょう。

時折子どもは家族が亡くなったことを「忘れて」いて、まだ生きていると信じ込んでいるかもしれません。家族の誰かが亡くなってから最初の数週間であれば、これは一般的にあることです。けれども、それ以上長引くようであれば、子どもはこころに、何らかの問題を抱えているかもしれません。

 

子どもが立ち直れていない時の危険信号

次のような行動が見られる場合は、子どもが助けを必要としている兆候かもしれません:

  • 寂しい気持ちや抑うつ状態が長く続き、日常生活や行事への興味が
  • 持てない。
  • 友だちとの関わりを避けている。
  • 眠れない、食欲が減る、一人でいることに対する恐怖心が続いている。
  • 学校の成績の急激な落ち込みや、登校拒否がみられる。
  • 長期間にわたり、実年齢よりもずっと幼い子どものように振る舞っている。
  • 家族が亡くなったことを受け入れようとしない。
  • 常に亡くなった人の真似をする。
  • 亡くなった人のところに行きたいと、繰り返し話す。

これらの危険信号がある場合には、専門家による助けが必要かもしれません。かかりつけ医は、あなたの相談に乗り、アドバイスをしてくれるでしょう。また、あなたと子どもを、死別による悲嘆を専門とするカウンセラーや、地域の児童・思春期専門の精神保健サービス(child and adolescent mental health service; CAMHS)に紹介してくれるでしょう。これらの専門サービスは、子どもが死を受け入れる手助けをしてくれます。また、悲しみの過程を通して、子どもを助ける方法を探し、遺された家族を支えてくれます。

 

より詳しい情報をお知りになりたい場合

Children’sBereavement Charity

赤ちゃんや子どもを失った家族や、大切な人を失った子どもを支える全国的な慈善団体です。

 

CRUSE Bereavement Care クルーズ死別ケア

遺された人が健やかな暮らしを送ることができるよう、また、悲しみを理解してその死と向き合い、喪失に対処していけるよう支援する団体です。悲嘆の渦中にいる青少年のためのウェブサイト、電話相談窓口、電子メールがあります。

 

Winstons Wish

遺された子どもと家族を支えています。

 

参考になる書籍

Heegard, M. (1991) 'When Someone Very Special Dies - Children can Learn to Cope with Grief' Minneapolis, MN: Woodland Press.(訳注:日本語訳書は出ていないようです)

 

参考文献

Diane Melvin and Diane Lukeman(2000): Bereavement: A Framework for those Working with Children Clinical Child Psychology and PsychiatryOctober 1, 5:521-539

 

K Schultz (1999): Bereaved Children. Canadian Family Physician, 45, 2914-2921.

 

Rutter, M. & Taylor, E. (eds) (2008) 'Rutter’s Child and Adolescent Psychiatry' (5th edn). London: Blackwell Publishing.

Translated by Reiko Fujiike-Stirling, Nobuko Kashiwazaki and Dr Nozomi Akanuma. June 2012.

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