強迫性障害 キー・ファクト
免責事項
強迫性障害とはなんですか?
私たちは皆、ある一定の事柄についてこだわりがあります。次のようなことに思いあたれば、あなたは強迫性障害かもしれません:
- いくら振り払おうとしても、いやな考えが頭に湧いてくる。
- 物に触れたり、物を数えたり、何度も手を洗うといった同じような動作を繰り返さざるをえない。
どのような人が強迫性障害になりますか?
50人に1人の割合で、生涯のどこかで強迫性障害になります。かかりやすさに男女の差はありません。英国では約100万人の人が強迫性障害であるといわれています。強迫性障害は、通常10代から20歳代前半に始まります。症状はよくなったり悪くなったりを繰り返す傾向があり、誰の助けも得ずに何年も過ごしていることがしばしばあります。
強迫性障害の兆候や症状はどのようなものですか?
- 考えが何度も浮かぶ(強迫観念)と不安になります。これらは、不愉快な単語や文章、心に浮かぶ情景、疑念だったりします。
- 物事を繰り返し行うこと(強迫行為)によって、不安は軽くなります。何度も繰り返し、数を数えたり、特別な言葉を唱えたり、儀式的な行動を何度も何度も行うことによって、その不安な考えを修正したり「中和」しているのかもしれません。
強迫性障害の原因は何ですか?
いろいろな原因が関わっていると考えられていますが、下記に挙げた要因の一部もしくはいくつかが、あなたや、あなたの知り合いの誰かが強迫性障害で困っている理由となるでしょう:
- 強迫性障害は、時に家族内で遺伝します。
- 約3人に1人では、ストレスのかかる出来事がきっかけになっています。
- 生活の変化―思春期・子供の誕生・新しい仕事のようなより重い責任を負ったときに起こりやすくなっています。
- もし強迫性障害がある程度の期間続いているとしたら、脳内にある化学物質セロトニン(5HTとも呼ばれます)のバランスが悪くなっているかもしれません。
- きれい好きで、非常に注意深く几帳面な性格で、それがいき過ぎていることがあります。
- もしあなたが高い道徳観をもち、責任感が強い場合、よくない感情を持つことに罪悪感を覚えるかもしれません。そのため、そういった考えが起こると、注意深く観察するようになるため、さらに症状が起こりやすくなります。
自分でできること
- もしあなたが定期的に厄介な思考について考えてみることができるようなら、自分自身で症状をもっとうまくコントロールすることができます。それらの思考を録音したり書き留めたりして記録します。そして再度それらを読み返したり聞き返してみてください。毎日30分程度、定期的におこなう必要があります。合わせて,強迫行為をしたくなっても我慢してみましょう。
- 不安な気持ちをコントロールするために、お酒に頼らないようにしましょう。
- もしあなたの強迫観念が信仰や宗教に関する心配事であれば、宗教指導者に相談してみて、それが本当に強迫性障害によるものなのかどうか、はっきりさせましょう。
- セルフ・ヘルプ用の本を活用してみましょう。
専門家による治療
心理療法
曝露・反応防止法
これは、強迫行為と不安それぞれをあえて強めることにより、いずれはどちらもやめられるようにする治療法です。
ストレスを感じる環境に長いこと留まっていると、ストレスにだんだんと慣れていき、不安が消え去っていくことがわかっています。ですから、あなたが恐れている状況に少しずつ直面し(曝露)、いつもおこなっている強迫的儀式や確認作業、手洗い行為などをせずに (反応防止)、不安が消失するのを待つのです。
認知療法
この治療法は、強迫観念をなくそうとするかわりに、それらに対するあなたの反応のしかたを変えようとするものです。特に、非現実的な、自己を批判する思考に焦点を当てます。もし強迫観念があっても、その観念を和らげるための強迫儀式や強迫行為をしなくてすんでいる場合、この治療法は効果的です。曝露・反応防止法とともにおこなうこともできます。
抗うつ薬
あなたがうつ病でなくても、SSRIという種類の抗うつ薬は効果があります。中等度から重度の強迫性障害に対して、抗うつ薬単独で、もしくは認知行動療法と合わせて治療に使われることがあります。治療を3ヵ月続けてもまったく効果がない場合、他のSSRI系抗うつ薬やクロミプラミンと呼ばれる薬に変更することができます。
治療はどれくらい効果がありますか?
曝露・反応防止法
この治療を受けた4人のうち3人にはひじょうに有効でしたが、残りの1人は症状の再燃があり、追加の治療を必要としています。4人に1人は負担が大きすぎると感じ、この種の認知行動療法を受けるのを拒否するか、あるいは始めたものの終了できませんでした。
薬物療法
10人のうち6人が服薬によって改善し、症状が半分くらいに減ったと感じています。服薬を続けているかぎり、数年後も、強迫性障害が再発することを防止します。残念ながら、服薬をやめた人の半数が数ヵ月後には症状を再発しています。服薬と認知行動療法を併用した場合は、この傾向が少なくなります。
どの治療が私に一番合っていますか?
軽度の強迫性障害の場合
専門家の助けなしでの曝露・反応防止法をやってみることができます。これは効果的であり副作用もありません。しかし、しばらくの間、不安が強まるかもしれません。やる気があって、大変な課題に取り組むための心の準備が必要になります。認知療法と薬物療法は、同等の効果があります。
中等度または重度の強迫性障害の場合:
- あなたは初めに、認知行動療法(セラピストとの10時間までの面接)もしくは薬物療法(約12週間)のどちらかを選択し、一方の治療でよくならない場合、両方の療法を同時におこないます。
- 強迫性障害が重度の場合、初めから薬物療法と認知行動療法を同時に行うことが、おそらく最適でしょう。
- 曝露・反応防止法によって起こる不安に直面する自信がなければ、薬物療法単独での治療というのも選択肢になります。ただし、曝露・反応防止法での再発の可能性が4分の1であるのに対し、薬物療法単独では2分の1の確率です。服薬は約1年間は継続する必要があり、妊娠中や授乳中には好ましくありません。
このリーフレットの作成にあたり、ノーサンプトンのセント・アンドリュース精神保健慈善基金のご後援をいただきました。