統合失調症:親や介護者、青少年と共に過ごすすべての人のために


Schizophrenia: information for parents, carers and anyone who works with young people

 

このリーフレットについて

このリーフレットは、親や教師、青少年向けに書かれた「こころの健康と成長」のひとつです。ここでは統合失調症とは何か、精神疾患を患う青少年がどのようなサポートを受けられるかなど、実用的なアドバイスが書かれています。

ミーガンの息子ジャスティン(19歳)の場合

ジャスティンが15歳の頃、普段はどこにでもいるようなティーンエイジャーでした。しかしながら突然、彼は自転車で外出するのも止め、自室でコンピューターに向って何時間も過ごすようになりました。大学で工学を学ぶのは子どもの時からの夢でしたが、いつしかまったく興味を示さなくなり、代わりに、彼は自分で実験室を作って素晴らしい発明をすると言い始めました。私はとんでもない空想だと相手にしなかったのですが、それからの数ヶ月、彼はこのことについてばかり話すのです。そして、ほとんどの時間をコンピューターに向かい、科学関係のウェブサイトや本を調べていました。彼は、自分がすべてを知っているかのように話していましたが、実際には、彼の言うことは理解不可能でした。電池や電線を部屋に溜め込むようになり、一晩中起きていて、誰かと話すことにも飲食、睡眠にもかまわなくなりました。学校で先生と口論になってから、学校に行かなくなってしまい、本当に心配になりました。

近所の人が、かかりつけ医に相談するようアドバイスをくれました。彼女は、家族に精神疾患をもつ人がいたのです。かかりつけ医から児童・思春期専門の精神保健サービス(Child and Family Mental Health Service, CAMHS)を紹介された時は、本当に驚き、気持ちが萎えました。はじめは、ジャスティンを面談に連れて行くのも、医師の前で話をさせるのもとても大変でした。けれど、精神科専門の看護師もワーカーも、とっても良くやってくれました。彼らはすぐに、何かがおかしいことに気づきました。いったんジャスティンが薬を飲み始めると、学校に連絡して、彼が学業を終了できるように計らってくれました。

ジャスティンは、奇妙な思い込みがなくなった後は動揺して気分が沈み、自殺さえも考えるようになりました。しかしながら、CAMHSのスタッフのお陰で、本人が自分を責めたり、良くならないと落ち込むことはなくなりました。ジャスティンが成人専門の精神保健サービスに移り、サポート付きアパートに入居した時も、CAMHSのスタッフが一緒に付き添ってくれました。今では彼は大学に通い、ガールフレンドもいます。調子の浮き沈みはまだありますが、統合失調症は、映画で観るようなほどひどくはないようです。

統合失調症とは?

統合失調症は思考、感情、行動に影響を与える重篤な精神疾患です。これは精神病のうち最も一般的なものです。

約100人に1人がその人生のどこかで統合失調症を患っています。15歳から35歳の間に発病することがほとんどですが、それよりも幼い子供が患うこともあります。この病気は、長びく可能性もあり、日常生活に大きく影響を及ぼすことがあります。

統合失調症の原因は?

統合失調症は脳内で化学物質のバランスが崩れることに関連していると考えられますが、正確なところは分かりません。研究によれば、親や親近者も精神疾患を患っていることや、ストレスあるいは大麻のような薬物の使用が統合失調症の発症に関連するようです。

どのような症状がありますか?

統合失調症の症状は個人によって様々です。症状には2種類あり、「陽性症状」と「陰性症状」と呼ばれています。これはどちらが良い悪いということではなく、むしろ物事を「する(あるいは経験する)」のか「しない」のかということです(後述)。統合失調症を患う青少年には多くの場合、これら2つが混合した症状が見られます。

病気の進行がとても速い人もいる反面、ゆっくりと症状が悪化する場合もあるのでなかなか気がつかない人もいます。

陽性症状

  • 真実とはかけ離れ、奇妙で偏った強い思い込みや妄想があります。本人は、たとえば自分を世界的指導者や著名人だと信じたり、他の人が自分に「近づき捕まえようとする」と思い込んだりします。あなたがたとえ何を言っても、本人はそれが真実だと譲りません。
  • 思考障害は筋道の通った考え方ができないという状態を指します。彼らの言い分を理解するのは困難です。単に混乱や取り乱しているのとは違い、つじつまが合わなかったりするのです。
  • 幻覚は、実際にはないものが見えたり聞こえたり匂ったり感じたりすることです。最も一般的なのは声が聞こえる幻聴です。統合失調症を患う人にとって幻覚はリアルな出来事なので、他人から監視されている、あるいは、いじめられていると確信して恐ろしくなるのです。こういった症状により、ひとりごとや思い出し笑い、または存在しない誰かとの会話など、とても奇妙な行動が見受けられます。

陰性症状
統合失調症に苦しむ人は、ひきこもりや無感情になることがあります。興味を失い、ろくに入浴もせず、一人で過ごすことが多くなります。身の回りの事柄も困難になり、仕事や勉強に集中できなくなります。

その他の症状
中には、家族にさえフラストレーションを感じ、腹を立てる人、薬物や飲酒により気持ちを紛らわす人、自傷行為に走るほど苦悩する人がいます。

マスコミでどのように取り上げられようとも、統合失調症に苦しむ人が他の人と比べて危険だとか、暴力的だということはありません。しかし、幻覚などにより恐怖心で一杯な時など特に、何をしだすか分からず、周囲を心配させてしまうかもしれません。

どうしたら治療を受けられますか?

早期に症状に気づけば、効果的な治療に恵まれる確率が上がるので、回復が早まり、症状が長引くことによる悪影響が少なくなることになります。完全に回復する方もいます。

当の子どもが一緒でなくても、親だけでもかかりつけ医に相談することが役に立つかもしれません。地元の児童・思春期精神保健サービスや、早期介入サービス(Early Inervention Team、Early Inervention Service - EIS)の精神科医を紹介してもらえるでしょう。EISは、精神病を患う青少年を専門にしています。お子さんの具合がとても悪い場合は、状態が安定するまで一定の間、入院が必要になることもあります。

統合失調症の治療法は?

統合失調症の治療は抗精神病薬が重要なポイントです。この薬で病状を和らげますが、どちらかといえば陰性症状より陽性症状に対して効果的と言えるでしょう。幻覚と妄想は改善まで数週間、または数ヶ月かかることもあります。残念ながら、統合失調症は再発する可能性があり、治療が長くかかる場合もあります。

抗精神病薬にはいろいろな種類があり、精神科医があなたのお子さんに最適なものをアドバイスしてくれるでしょう。当人にとってどの薬が最も効果的か、数種類の薬を試す必要があるかもしれません。

あらゆる薬と同様、抗精神病薬にも副作用があります。精神科医から副作用とそれを抑えるためのアドバイスがもらえるので、薬を服用する際は、病気による日常生活の支障と副作用のリスクを天秤にかけて考えることが大事です。

統合失調症の治療薬の中には、幼い子供や青少年への処方が認可されていないものもあります。これは、その治療薬に効き目がないのではなく、単に製薬会社が認可申請を行っていないのです。もし心配なら、担当医や薬剤師に相談してみましょう。

実用的な支援とサポート

本人とその家族には、薬物治療と共に以下のような実用的な支援やサポートが重要です。

  • 病気への理解

統合失調症を患う青少年やその家族が、病気をよく理解できるように支援することがとても重要です。

  • 学校、職業訓練、仕事への復帰

統合失調症により具合が悪い時に勉強するのは容易ではないため、学業にも支障をきたすでしょう。回復に向けて、長期的な計画を立てていきましょう。

  • 家族関係

ストレスや敵対関係、周囲の批判などが病気の再発のリスクを高めます。家族はこれらの要因を認識し、根本的な要因を減らして、本人を最善の方法でサポートしていくことが必要です。統合失調症を患っている青少年も、同年代の多くが家を離れるように、一人暮らしを始めることも選択肢の一つです。その場合は、専門家よりサポートが受けられます。

  • 特定の症状への対処

統合失調症の幻覚に対しては、薬物治療に加えて認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy, CBT)も有益なことがあります。

さらなる情報源

Young Minds:こころの健康と感情について、青少年に向けた情報を提供している慈善団体です。

Mind:イングランドとウェールズの、全国規模の精神保健専門の慈善団体です。

TalktoFrank:薬物誘発生精神病のための団体です。

参考文献

Rutter’s Child and Adolescent Psychiatry, Fifth Edition (2008). Publisher: Wiley-Blackwell.

National Institute of Clinical Excellence (NICE, 2009), Clinical Guidelines, CG82: Core interventions in the treatment and management of schizophrenia in primary and secondary care (update).

Translated by Mai Asai, Akiko Tatsuta and Dr Nozomi Akanuma. November 2013.

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