死別による悲嘆反応:キー・ファクト

死別による悲嘆反応とは、大切な人が亡くなった時に経験する悲しみのことです。

 

それは一つではなく、様々な感情が含まれています。相手の死後数ヶ月の間にもっとも強く感じられ、多くの場合2年ほど、時にはそれ以上の期間続くこともあります。

 

この経験後、生活が以前とは大きく変化したとしても、ほとんどの人は喪失を乗り越えることができます。

 

悲嘆は多くの場合、ある程度の期間知っていた相手に対して起こる感情です。しかし死産や流産、あるいは出産後ほどなくして子供を亡くした場合も、同じような感情反応を経験します。

 

どのような感情を経験しますか?

悲嘆に「標準」となる過程はありません。文化や個人により、それぞれの信念や作法がありますが、多くの共通する経験もあります。

 

以下はその例です:

無感覚・麻痺:特に相手の死後数時間もしくは数日間はただ茫然とし、それが実際に起こったことだとは信じられないでしょう。

 

動揺:数日後にはたいてい麻痺状態から抜けだします。その後は気持ちが動揺し、死者に対する哀惜あるいは思慕と、様々な思いで気持ちが乱れます。無理だとわかっていても、どうにかして相手を探し出したいという思いに駆られ、リラックスしたり、何かに集中したり、普通に睡眠をとることが難しくなります。ほんの一瞬でも大切な人の姿が見たい、声が聞きたいと願うでしょう。

 

怒り:激しい怒りに襲われます。大切な人の命を救えなかった医師や看護師に対して、十分な援助をしてくれなかった友人や親戚に対して、そして亡くなった人に対しても、いなくなったということに対して怒りを覚えます。

 

自責感:これまでのことを振り返り、言えばよかった、やっておけばよかったすべてのことを思い、後悔するかもしれません。死をコントロールすることはほんど不可能であるにもかかわらず、自分がそれを防ぐことができたのではないかと悩むかもしれません。

 

ほっとする:もし大切な人が病気による痛みや苦しみの末亡くなったとしたら、あなたはほっとするかもしれません。これはあなたが非情だからではなく、ごく普通のことで、無理もない感情なのです。

 

悲しみ:数週間に渡るさまざまな強い感情を経験した後は、徐々に静かな悲しみにくれ、塞ぎ込むようになるかもしれません。以前よりも落ち着きますが、気持ちが沈むことが多くなります。これは4週間から6週間後にもっともよく現れる状態です。

 

考え込む:他人からは、あなたはいつもただ座っているだけで何ヶ月もの間何もしていないように見えるかもしれませんが、実際には亡くした相手を想い、記憶の中の一緒にいた時間を行き来しているのです。これは、死別を乗り越えるために必要不可欠な過程なのです。

 

自分が元に戻っていく感覚:時間が経つにつれ、悲痛な初期の悲嘆反応は和らぎ、悲しみも薄れ、徐々に他のことを考え、将来に目を向けることもできるようになります。自分の一部を亡くしたような感覚が完全に消えることはありませんが、それでも時が経てばまた自分自身を取り戻したように感じられます。

 

手離す:最後には亡くなった人に「こだわること」をやめ、新しい生活を始めます。悲しみが薄らぎ、夜も以前より良く眠れるようになり、元気も出て、性的な感情も戻ってきます。

 

もし、死別を乗り越えることができなかったら?

  • 家族や仕事への責任から、大切な人が亡くなった時に普通に悲しむことができないと、問題が生じるかもしれません。中にはまったく悲しみを見せず、即座に元の生活に戻る人もいますが、そうした場合数年後に奇妙な身体症状が出たり、うつ状態になることがあります。
  • もしあなたが死産や流産、または中絶を経験したとしたら、周りの人にはなぜあなたがそこまで深く思いつめているのか、理解できないかもしれません。そのことでとても孤独を感じ、気持ちを落ち込ませることもあるでしょう。
  • 悲嘆を感じ始めたまま、そこで身動きが取れなくなってしまうかもしれません。初期に感じたショックと、信じたくないという気持ちが続きます。何年経っても、大切な人が亡くなったことを信じられないと感じるでしょう。
  • 他のことは何も考えられず、亡くなった人の部屋を神聖な霊場にしてしまう場合もあります。
  • 時にはあまりにも落ち込み、自分の命を絶ちたいと考えたり、食べ物、飲み物を口にすることすら止めてしまうかもしれません。
  • 死別による悲嘆反応は、身体的健康に影響を与え、がんや心臓病のリスクが高まります。高齢者の中には、パートナーや伴侶が亡くなったすぐ後に亡くなってしまう人もいます。

 

どんな助けが得られますか?

もし、大切な人との死別を乗り越えるのが難しいと感じたら、ボランティアもしくは宗教関係の協会が救ってくれるかもしれません。同じ経験をした人と会って話をすることで十分に救われる場合もあります。それでも助けが得られないようなら、死別による悲嘆反応専門のカウンセラーか、心理療法士による集団療法、もしくは個別面談を受けることもできます。かかりつけ医(GP)が専門家探しに協力します。

 

もし不眠が続いているのなら、かかりつけ医に睡眠導入剤を処方してもらい服用すれば効果はありますが、これは短期間のみです。もしうつ状態が悪化し、食欲、活力、睡眠に影響するようなら、かかりつけ医がカウンセリングもしくは抗うつ薬の処方を検討するでしょう。治療を受けているにもかかわらず、うつ状態が悪化するようなら、精神科医を受診する必要があるかもしれません。

 

どうしたらこの状態に陥っている人を助けることができますか?

  • 悲嘆する人の側にいてあげてください。そうすることで、一人で悲しみにくれる孤独感が和らぎます。
  • 相手が望むなら、一緒に涙を流し、自分の気持ちを話せるようにしてあげてください。
  • 相手にしっかりしろと言わないでください。
  • 日常の仕事(家事、子供の世話など)を手伝ってあげてください。
  • 記念日などの特に悲しみが増す時に、一緒にいてあげるようにしてください。
  • 相手に、悲しむ時間をあげてください。

このリーフレットの作成にあたり、ノーサンプトンのセント・アンドリュース精神保健慈善基金のご後援をいただきました。

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