子どもや若者の不安障害

Anxiety for children and young people

Below is a Japanese translation of our information resource on anxiety for children and young people. You can also view our other Japanese translations.

この情報では、若者の皆さんのために、誰もが経験する不安感、役に立つセルフヘルプの方法、そして必要な時にどこでさらなる支援を受けることができるかをご紹介します。

不安障害とは何か

不安障害とは、心配、緊張もしくは恐れを感じる時の感覚を表すためにしばしば使用される言葉です。これから起ころうとしていること、あるいは起こるかもしれないと思うことをどのように感じているかを表現するときに、この言葉を使用することが少なくありません。

不安障害によって、息切れのような身体感覚を経験したり、反応として行動に変化が起こる場合があります。例えば、不安を感じていると、過度に注意深く行動したり、さらに不安になるのではないかと思うことを避けたりするかもしれません。

不安を感じることは非常に一般的なことで、誰もが時折そうした感情を持ちます。一見すると自信があって積極的に見える人でも、不安障害を経験する可能性があります。

自分の感情との闘いを認めるには勇気や強さが必要ですが、不安障害は(特にストレスの多い時期には)人間にとって普通の経験であることを忘れないことが助けになるでしょう。

不安障害はどのように感じられるか

不安障害を経験することは、自分で自分の身を守るための自然な仕組みの一部です。私たちが危険を感じると、すぐにそれに対処する準備を整えるよう脳から身体に指示が出されます。その結果、心身にさまざまな感覚を経験することになり、そのことが行動の変化にもつながる場合があります。

不安障害は人によってさまざまに感じられますが、一般的に説明される感覚は以下の通りです。

身体面では(身体的に)、次のようなことを経験するかもしれません。

  • 呼吸が速くなる(浅く短い呼吸)
  • 気が遠くなる、ふらつく、あるいは足が震える
  • 動悸
  • 気持ち悪さ、胃のむかつきや不調 
  • 落ち着きがなくそわそわする
  • 筋肉の緊張やこわばり
  • 頭痛
  • 不眠症(睡眠障害)

心の中では(心理的に)、次のようなことを経験するかもしれません。

  • 極度の心配
  • 怒りや動揺
  • 何か恐ろしいことが起こるかのような恐怖感
  • 侵入思考(逃れられない不愉快な思考)が何度もよみがえる

行動面では(行動)、以下のようなことを経験するかもしれません。

  • 物事を何度も繰り返し確認する
  • 安心感を他人に求める
  • 物事を先送りする
  • 特定の状況や物事を避ける

不安障害の種類

私たちの誰もが不安障害を経験しますが、人間の特徴のほとんどがそうであるように、不安障害の感じ方は人によって異なります。それほど頻繁に不安を感じない人もいれば、多くの心配ごとを思い浮かべる人もいます。

人によっては、何か特定の活動をしたり、そのことを考えたりするとき、あるいは特定の状況にいるときに不安障害を経験します。例えば、大勢での集まり、集会への参加、または公共交通機関の利用などがあります。演劇、授業中に音読をしなければならないなど、学校の特定の科目がより難しいこともあります。回避行動をとったり、寝室のような「安全な場所」を持つことに依存する人もいます。

中には、継続的に不安感を経験したり、コントロールが難しいと感じられるさまざまなことを思い悩んだりする人もいます。

特定の物体や場所、状況に対して強い恐れを感じる人もいます。これは一般的に恐怖症と呼ばれます。恐怖症になると、恐怖症の対象に対して、非常に強い危機感を抱くようになります。

人によっては動揺や侵入思考もしくは侵入的イメージを抱く場合があり、強迫性障害(OCD)というメンタルヘルス疾患へと進行する可能性があります。OCDの人は、何かをする衝動に駆られることがあり、それを抗いがたいものに感じます。苦悩を与えるこれらの思考を止めるには特定の行動を取る必要があると感じ、さもなければ何か悪いことが起こるかもしれないという気持ちになります。

中には、不安感に押し潰されて、パニック発作と呼ばれるパニック症状を経験する人もいます。パニック発作は、長くは続かないものの、強烈なのが普通です。パニック発作になると、不安障害と同様に、恐ろしい考え(例えば、何か恐ろしいことが起こるのではないかという感覚)が浮かぶことがあります。

いつもより多くの不安を感じても、たいていの人にとってそれは自分で何とか対処できることであり、人間として成長するときの普通のストレスや緊張の一部です。時には、不安障害がより長く続くようになり、日常生活に大きな影響を与え続けることもあります。そのような場合は、さらに情報や支援を得ることが助けになります。 

心配や不安障害の原因

不安障害を経験しうる原因は数多くありますが、何がその原因なのかを正確に知ることは誰にとっても難しいことです。

不安障害を抱えた近親者がいると、あなたも不安障害を経験する機会が増えるかもしれませんが、あなた自身が自動的にそうした心配を抱えるという訳ではありません。

課題の多い、あるいは困難な生活体験によって、不安障害を発症する可能性が高まることは知られています。以下に、その例をいくつか挙げます。ただし、生活体験に対する反応は人それぞれであり、ある人が不安になることが、必ずしも他の人の不安障害を引き起こすわけではないことは覚えておきましょう。

次の事柄によって、不安障害がより長期にわたって続く可能性が高まる場合があります。

  • 生活に多くの変化や不確実なことがある
  • 家族の争いが続いている
  • 立ち退きや住所不定など、住居に関する問題
  • 両親が請求書や家賃を支払う余裕がないなど、お金に関する問題
  • 身近な人の死(死別による悲しみ)
  • 苦悩を与える出来事、またはトラウマ的出来事を経験する(暴行を受けた、交通事故に遭ったなど)
  • ニュースの話題に関する心配(環境や戦争など)
  • いじめ、差別、排除(対面やインターネット上で)
  • 試験や学業によるストレス
  • 身体健康疾患が続いている
  • 脱法ドラッグ、薬剤、アルコールの使用
  • 日常生活の大きな変化
  • 身体的、性的または精神的虐待、ネグレクト(愛情、ケア、注意の持続的な欠如)

あなたが現在何らかの虐待を受けていて(あるいは受けたことがある)、身の危険を感じている場合は、すぐに警察に通報してください。

通報はできないと感じる場合は、信頼できる大人(先生、家族、医師など)に助けを求めるか、Childlineのような支援サービスに連絡し、さらにアドバイスや支援を受けることをお勧めします。利用できるサービスは、この資料の最後に掲載されています。

不安障害はなぜ起こるのか

「闘争・逃走・凍結反応」

不安障害やその作用について少し学んでおくと役に立つことがあります。不安障害の一部として重要なものに「闘争・逃走・凍結反応」(別名ストレス反応)があります。

何千年も前、人間は捕食動物や他の人間など、環境から多くの危険に直面していました。生き延びるために、人間の身体は予想されるあらゆる危険から身を守るための警報システムを備えています。このシステムが作動すると、身体は闘う、逃げる、もしくは固まる態勢を整えます。

また、このシステムが作動すると、心拍数と呼吸が増加し、筋肉にエネルギーが送られます。思考のスピードが速くなるため、周囲の危険の兆候を察知し、素早く反応することができます。また、私たちの身体は、捕食者に居場所を知らせないよう、「固まって」動きを止める場合もあります。

今日では、このような物理的な危険をそれほど恐れる必要はありませんが、身体は今でも同じ警報システムを使っています。批判されることや失敗することへの恐れなど、心理的な危険と考えられていることが引き金となる可能性が高いかもしれません。

それが、不安障害が体調不良や病気ではなく、ごく当たり前の人間の生物学の一部である理由です。しかし、心配のあまり自分のしたいことができなくなったり、うまくいかなくなったりすると、問題となる可能性があります。 

詳しくは、「闘争・逃走・凍結反応」をご覧ください。

自分でできることは?

恐れと向き合う

恐れていることと向き合うことで、私たちは自分の不安を乗り越えることができます。

徐々に向き合う

中には、自分の恐れと徐々に向き合っていく人もいます。例えば、犬に対する恐怖心を取り除きたいのであれば、いくつかのステップを踏んで犬に慣れていくことができます。

  • 犬の写真を見ることから始める
  • これに苦痛がなくなったら、犬のビデオを鑑賞してみる
  • 次に、犬を飼っている友だちを訪ねてみる
  • 最後に、馴染みの犬が少ない公園に行く訓練をしてみる

正面から立ち向かう

恐れに正面から立ち向かうことを好む人もいます。犬に対する恐怖心の例でいえば、それは、犬のいる公園に行き、恐怖心が薄れるまでそこにいることを意味します。

この方法がなぜ効果を発揮するのかには、シンプルな生物学的理由があります。ある物事、場所、または状況を恐れるのは、それは通常、それに晒されると何か悪いことが起こると感じるからです。自分が恐れていることに時間を費やし、悪いことが起こらなければ、悪いことはおそらく起こらないと確信できるようになり、ストレス反応が軽減されます。

犬に対する恐怖心を例にとると、犬に噛まれたり攻撃されたりすることを恐れて、犬を怖がる人もいます。犬と一緒に過ごし、自分が噛まれたり攻撃されたりする可能性が低いことを実証することで、身体のストレス反応は自然に減少するでしょう。

これを行うことは最初は怖いように思えるかもしれませんが、何度か繰り返すうちに体と心がその感覚に慣れていき、ストレス反応は次第に弱まっていきます。

呼吸と体に集中する

呼吸法

シンプルな呼吸法によって、ストレス反応の軽減や解消に役立つと感じる人もいます。役に立つ可能性のある方法を2つご紹介します。

これらのエクササイズによって息切れやめまい、不快感を感じた場合は、どちらも行わないでください。

エクササイズで体を動かす

活動やエクササイズが身体をリラックスさせ、ストレス反応を減らすのに役立つと感じる人もいます。

これには、軽いウォーキングやランニング、その場での足踏み、スタージャンプなどがあります。これらの活動はすべて筋肉の緊張を和らげるのに役立ち、不安のレベルが高いときに気持ちを落ちつかせるのに役立ちます。

ウェブサイト「Open Minded Online」には、パワーパンチング、ヨガパンチング、顔のセルフマッサージ、チェアヨガ、緊張をほぐすエクササイズ、ブレインジムなど、役に立つエクササイズの例が多数紹介されています。詳しくはこちらをご覧ください。

「今」と「ここ」に集中する

現在に意識を向け、今とここに集中することは、ストレス反応の軽減に役立ちます。特に役に立つ方法の一つが、五感を使って現在に意識を集中することです。これは次のようにして行います。

  • 目に見える5つのもの
  • 触れられる4つのもの
  • 聞くことができる3つのこと
  • 匂いを嗅げる2つのもの
  • 味わうことができる1つのもの

これは、自分の思考を不安障害から遠ざけるのに役立ちます。 

「安らぎの箱」を作ることも、今とここに集中することに役立ちます。幸せで安らいだ気分を連想させるものを箱に入れていきます。ペットや友だちの写真、触って遊べるもの(ストレスボールやパズルなど)、その他にも安らいだ気分を連想させるものを入れることができます。

お気に入りの音楽やゲーム、映画で気を紛らわすことも役に立ちます。

自分の気持ちを表現する

話し合う

家族や友だち、カウンセラーと心配ごとを共有することは不安感を和らげるのに役立ちます。また、それは孤立感を減らし、似たような経験を持ち、アドバイスを共有できる他の人々とつながる助けにもなります。

日記をつける

自分の気持ちや生活の中で起こった出来事を記録することが役立つと感じる人もいます。紙に書き出すことは、自分の気持ちを外に出し、自分の経験を振り返り、何が心配の原因になっているのかを明確にするのに役立ちます。また、心配の種になっていることに対処する方法を考える余裕も与えてくれます。

心配ごとに対処するための時間を確保する

心配ごとに集中する時間を確保することで、その日の残りの時間を悩みから解放されて過ごすことができます。中には「心配の壺」に書き留めた悩みを入れておき、決められた「心配の時間」にだけその壺を開けるという方法を好む人もいます。

試してみることに決めた方法が何であれ、私たちの誰もが人生の中で他の人々の助けを必要とするときがあることを常に忘れないようにしましょう。恐れずに心を開き、自分が感じていることを分かち合いましょう。

さらに支援を受けるには

もし不安障害が多くの問題を引き起こしているなら、専門的な支援を受けることが役立つかもしれません。自分の気持ちについて、一般開業医(GP)に話をしたいかもしれません。医師は利用可能なオプションについてあなたと話し合い、あなたに最も適したものを決める手助けをしてくれるでしょう。以下はその数例です。

児童・思春期メンタルヘルスサービス(CAMHS)

児童・思春期メンタルヘルスサービスには、子ども・思春期のメンタルヘルスの問題に関するあらゆるトレーニングを受けたさまざまな専門家が従事しています。精神科医、心理士、看護師など、さまざまな専門家が異なるチームに在籍しています。彼らは専門的な評価を行い、治療の推奨を行います。

小児科

小児科医は、通常出生から16歳までの若者を評価し、治療する医師です。一般開業医(GP)が、あなたの基礎的な身体健康疾患があなたのメンタルヘルスに関連している可能性があり、評価が必要だと判断した場合(例えば、不安障害による失神が、原因は診断や治療が必要な身体疾患の可能性もあります)、小児科医を紹介される場合があります。

学校

もし問題が主に学校に関連している場合は、学校や地域の教育当局に申し入れることが解決を図る最善の方法かもしれません。学校には、援助を提供する特定のサービスがあることが少なくありません。これには、学校でのセラピーやカウンセリング、学校心理士、特定の責務(行動問題、自閉症、学習困難など)を担うその他のチームがあります。

すべての学校や教育機関が、いじめなどの問題やクラスでの追加支援に対する方針や手順を整備する必要があります。

社会福祉サービス

社会福祉サービスは、特に学習障害のある子どもを持つ家庭に対して実際的な支援を提供することができます。これには、サービスを受けたり社会活動に参加するための資金提供、里親や養子縁組のサポート、両親への支援やアドバイスなどが含まれます。また、社会福祉サービスには子どもを保護する特定の義務があるため、その結果、若者の安全や福祉に関する懸念がある場合には児童保護プロセスの手配に関与します。

チャリティサービス

慈善団体は、人々のメンタルヘルスを支援するサービスを提供していますが、これらのサービスは居住地域によって異なります。いくつかの団体は、特定のグループのニーズをサポートするために設立されている場合があります。たとえば、民族的マイノリティのコミュニティや、特定の疾患を持つ子どもを持つ家庭などです。また、YoungMindsRelateChildlineNational Autistic Societyなどのように、全国規模の団体の場合もあります。

プライベートセラピー

一部の人は、費用を支払ってプライベートセラピーを受けることを選びます。プライベートセラピストは、カウンセリング、行動療法、力動的精神療法、人間性心理療法、家族療法や全身療法など、多数のさまざまなセラピーを提供することができます。

費用はさまざまですが、多くの場合、セッションあたり£40から£100です。一部のプライベートセラピーサービスでは、低所得者向けに割引料金を提供しています。

プライベートセラピストを利用する場合は、セラピストがBACP(英国カウンセリング・心理療法協会)やACP(子ども心理療法士協会)などの登録認定機関に所属していることを確認するべきです。

2人の異なるセラピストと同時にセラピーに取り組むことは、彼らが同じチームに所属し、密接に連携していない限り、避けた方がよいでしょう。これは、異なるセラピストが、異なる手法を使用し、それらが同時にはうまく機能しない可能性があるためです。

さらなる情報

  • Childline  若者が経験しうるあらゆる懸念に対する情報源と支援。0800 1111に電話すると、無料、秘密厳守でアドバイスが受けられるほか、メールや掲示板で問い合わせることができます。
  • Young Minds – 若者とその両親に、若者のメンタルヘルスに関する情報とアドバイスを提供しています。
  • Mind - メンタルヘルスの問題を経験しているあらゆる人に力を与えるためのアドバイスや支援を提供しています。
  • Anxiety UK - 不安障害の問題に苦しむ人々に情報や支援を提供しています。
  • Youth Access - 情報、アドバイス、カウンセリングを提供しています。また、お住まいの地域の現地支援サービスを見つけるのにも役立ちます。

ビデオのリンク元:

  • Fablefy - The Whole Child
  • サニーブルック病院
  • Anxiety Canada
  • Minded Online

クレジット

この情報は、英国王立精神医学院(Royal College of Psychiatrists)の子ども・家族パブリック・エンゲージメント編集委員会(Child and Family Public Engagement Editorial Board, CAFPEB)が制作したものです。執筆時点での利用可能な最良のエビデンスを反映しています。

専門家執筆者:Dr Marianne Hilton, Dr Sami Timimi and Dr Tze Hui Phang

この資料の内容についてフィードバックを提供してくださった若い方々に心より感謝いたします。

ご要望により、この資料のすべての参考文献をご利用いただけます。

発行年月:  2022年8月

閲覧期限:  2025年8月

©英国王立精神医学院 (Royal College of Psychiatrists)

This translation was produced by CLEAR Global (Dec 2024)

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