双極性障害:キーファクト

双極性障害(躁うつ病)とは?

気分が激しく変動する疾患です。通常、気分の変動は数週間から数ヶ月続き、以下のような症状がみられます:

  • 気分の落ち込み、激しい抑うつや絶望。
  • 気分の高揚あるいは「躁的な(ハイ)」で楽しい気分、過活動。行動を慎むことができない。
  • 「混合状態」(例えば、イライラを伴う気分の落ち込みと躁状態の過活動が同時にみられる)


双極性障害の原因は?

  •  同一家族内で何人も発症することがあることから、遺伝が重要な役割を果たしていると考えられます。
  •  感情を司る脳の働きに障害があることがあります。したがって、多くの場合、薬物によって治療できます。
  •  ストレスが気分変動のきっかけになることがあります。

 

双極性障害の型

  • 双極I型障害
    これまで少なくとも1回の気分の高揚した躁病的な時期があり、これが1週間以上続いた型。気分の落ち込む時期があることが多いですが、躁病の状態だけの場合もあります。
  • 双極II型障害
    これまでに激しい抑うつの時期が少なくとも1回はあり、ほかには「軽躁状態」と呼ばれる軽い躁状態がみられる型。
  • 急速交代型
    12ヶ月の間に4回以上の気分変動がある。双極性障害の人の約10人に1人でみられます。
  • 気分変調症
    それほどひどくない気分の変動が、長く続く疾患です。


双極性障害になるとどんな感じ?

うつ状態の時

  •   悲しい気分が消えない。
  •   イライラして落ち着かない。
  •   自信がなくなる。
  •   自分が役立たずで無力だと思い、絶望的になる。
  •   自殺を考える。
  •   前向き、楽観的に考えることができなくなる。
  •   簡単なことも決断できなくなる。
  •   集中できない。興味がなくなる。
  •   食欲が減る。体重が減る。
  •   よく眠れない。朝早く目が覚める。
  •   性欲がなくなる。
  •   人と会いたくなくなる。

躁状態の時

  •   とても楽しい気分でウキウキする。
  •   普段より自分のことを偉いと感じるようになる。
  •   新しくて刺激的なアイディアがどんどん出てくる。考えがあちこちにすぐ飛ぶ。
  •   活気に満ちている。
  •   眠くなくなる。
  •   性欲が高まる。
  •   非現実的な計画を立てる。
  •   過度に活動的になる。早口になる。
  •   自分の気分や考えについて来られない人にイライラする。
  •   無謀なお金の使い方をする。

精神病症状

気分の変動が著しくなると、「精神病症状」がみられる場合があります。

  • うつ状態の時、自分が世の中で一番罪深い人間であると感じることがあります。その時には、自分が誰よりも悪い人間で、存在していないとすら感じることもあります。
  • 躁状態の時、自分には非常に重要な使命があると感じることがあります。また、自分には特殊な力や能力があると感じることもあります。
  • 幻覚を体験することがあります。実際にはないものを聞いたり、匂いがしたり、感じたり、見たりします。

 

治療でよくなりますか?

気分安定薬には3種類あります。これらの薬は効果がはっきりわかるまで数ヶ月かかることがあります。

  • リチウム

リチウムは躁状態、うつ状態両方の治療に用いられます。服用量が多すぎると有害なことがあるため、定期的な血液検査が必要です。副作用には、のどの渇き、多尿や体重増加があります。

  • 抗てんかん薬

通常はてんかんの治療に使われる薬剤で、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピンが双極性障害の治療に用いられます。

  • 「非定型」抗精神病薬

通常は統合失調症の治療に使われる薬剤で、オランザピン、クエチアピンやリスペリドンが双極性障害の治療に用いられます。

 

心理療法

心理療法は、躁やうつが落ち着いている時期に特に有効です。次のようなものがあります:

  •  心理教育-双極性障害についてもっとよく知る。
  •  気分の観察-気分が変動しているとき、それに気づきやすくなる。
  •  気分変動への対策-気分の小さな変動が本格的な躁状態やうつ状態に発展するのを防ぐ。
  •  問題に対処する全般的な能力を身につける。
  •  うつ状態に対する認知行動療法 (Cognitive Behavioural Therapy, CBT)

 

気分変動の治療

気分安定薬に加え、通常は以下のような治療も必要になります:

  • うつ状態

SSRIと呼ばれる抗うつ薬による治療。SSRI は効果が現れるまで2-6週かかる場合があります。うつ状態が改善した後も少なくとも8週間は継続して服用する必要があります。その後、ゆっくりと服用量を減らしていきます。

  • 躁状態

抗精神病薬による治療。

 

本人が自分でできること

  • 気分の変動がコントロールできなくなる際の兆候を知ること。そうすれば、早めに助けを得られます。
  • 双極性障害について、できるだけ多くの知識を得る。
  • ストレスが強くかかる環境を避ける。
  • 信頼でき、話ができる人を少なくともひとりは持つ。自分の調子のいい時に、その人に双極性障害についてよく知ってもらう。
  • 私生活と仕事、レジャーや人間関係のバランスを保つ。
  • 1週間に3回、20分間程度の運動をする。気分が改善するようです。
  • 楽しんでできること、生き甲斐を持てることをする。
  • 薬物療法を急に止めない。新たな気分変動のきっかけになります。
  • 自分の医師や家族と相談のもとに「事前指示書」を書いておくのもいいかもしれません。次に調子が悪くなった時にどのように治療してもらいたいか伝えることができます。

 

双極性障害の人のためにできること

  • うつ状態にある人に適切な言葉をかけるのは難しいものです。本人はあらゆることを否定的に捉えてしまいます。また、何をしてもらいたいのか言えなくなってしまう場合もあります。話をよく聞きましょう。忍耐強く、当人を理解するよう心がけましょう。
  • 躁状態にある時、本人は楽しそうで、活動的、社交的にみえます。しかし、人付き合いで興奮すると、気分はもっとハイになってしまいがちです。本人をパーティなどの集まりや白熱した議論などから避けるように心がけてください。そして治療を受けるように勧めてください。
  • 気分が安定している時期には、双極性障害についての知識を深めましょう。本人が望むなら診察に同席しましょう。あなた自身が充電するゆとりを持つことも忘れずに。

さらに詳しい情報は「双極性障害」や「躁病の薬物療法」についてのメイン・リーフレットを参照ください。

このリーフレットの作成にあたり、ノーサンプトンのセント・アンドリュース精神保健慈善基金のご後援をいただきました。

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