産後うつ病
Postnatal Depression
免責事項
このリーフレットについて
このリーフレットは産後うつ病(Postnatal Depression; 略してPNDともいう)についてさらに知りたい人たちに向けて書かれたものです。以下に該当される方は参考になさってください。
産後うつ病にかかっている女性、または自分が産後うつ病ではないかと考えている女性
産後うつ病になることを心配している妊娠中の女性
上記のような女性の配偶者(パートナー)、家族そして友人
このリーフレットでは以下のことについて書かれています。
- 産後うつ病とはどのような病気なのか。
- 自分自身でできる対処方法
- 配偶者(パートナー)、家族そして友人はどのように手助けができるか
- かかりつけ医や精神保健サービスにかかるタイミング
- 治療法
- 援助に関するさらに詳しい情報
産後うつ病とは?
産後うつ病とは、出産をした女性100人中10~15人に起こるうつ病のことです。その症状は産後以外の時期のうつ病とあまり変わりません。気分の落ち込みや、その他の症状が少なくとも2週間続きます。症状の重さによっては、自分自身や赤ちゃんの世話をするのに苦労するでしょう。ちょっとした作業でも大変だと感じることもあります。産後うつ病の原因が明白な場合もありますが、必ずしも原因があるわけではありません。赤ちゃんが産まれ、幸せになれると楽しみにしていたのに、心苦しく感じ、またそう感じてしまうことに罪悪感を抱くかもしれません。しかし、産後うつ病は誰にでも起きうることで、あなたのせいではありません。
援助を求めるのに遅すぎることは決してありません。しばらくの間うつ状態であったとしても、やがて快方に向かいます。あなたに必要な援助は症状の重さによって決まります。軽度の産後うつ病であれば、家族や友人からさらに支援してもらうことでよくなります。
状態がもっと悪い場合には、かかりつけ医や保健師の援助が必要になります。産後うつ病が重症の場合には、精神保健サービスからケアや治療を受ける必要があるかもしれません。
産後うつ病はいつ起きるのですか?
産後うつ病が起きる時期はさまざまです。産後1~2ヶ月以内に起きることがよくあります。出産後数ヶ月してから起こることもあります。産後うつ病にかかった女性の3分の1は妊娠中に症状が始まり、出産後もその症状が続きます。産後うつ病になるとどうなりますか?
次の症状の一部または全部の徴候が現れる可能性があります。- 気分が落ち込む
- イライラする
- 疲れる
- 眠れない
- 食欲が変化する
- 何も楽しむことができない
- 性への関心がなくなる
- マイナス思考と罪悪感
- とても否定的な考え方をするかもしれません。
- 自分が良い母親ではない、または赤ちゃんが自分のことを愛してくれないと考えることもあります。
- このように感じてしまうことに罪悪感を抱き、自分が悪いと感じてしまうこともあります。
- 自信がなくなるかもしれません。
- 物事に対処することができないと考えるかもしれません。
- 不安
- 赤ちゃんは重病にかかっている。
- 赤ちゃんの体重が十分に増えない。
- 赤ちゃんが泣いてばかりで、自分ではあやすことができない。
- 赤ちゃんがあまりにも静かなので、呼吸が止まったのではないか。
- 自分が赤ちゃんに危害を加えるのではないか。
- 自分は身体的な病気にかかっている。
- 自分の産後うつ病は決して良くならない。
不安を感じるときは、次のような症状が生じるかもしれません:
- 脈が速くなる。
- 心臓がどきどきする。
- 息苦しい。
- 汗ばむ
- 心臓発作を起こしたか、倒れるのではないかと心配なる。
- 他人を避ける
- 絶望的になる
- 自殺を考える
- 精神病症状
産後うつ病によって赤ちゃんへの感じ方はどうなる可能性がありますか?
- 自分の思い描いた通りに感じることができずに罪悪感を持つ。
- 自分の赤ちゃんを愛することもあるし、そうでないこともある。
- 自分の赤ちゃんに親しみを感じることもあるし、そうでないこともある。
- 自分の赤ちゃんが感じていること、または必要としていることに対処するのが難しいと感じる。
- 自分の赤ちゃんを憎らしく感じたり、そのように感じてしまうことについて赤ちゃんを責めたりする。
産後うつ病の女性は自分の赤ちゃんに危害を加えますか?
抑うつ状態の母親は自分の赤ちゃんを傷つけてしまうのではないかと心配しますが、そのようなことが起きるのは非常に珍しいことです。時々、ひどく疲れていたり絶望感を感じていたりすると、自分の赤ちゃんを叩いたり、揺さぶったりしたくなることがあるかもしれません。多くの母親(そして父親)は時々、このように感じてしまうことがあります。産後うつ病の女性だけではありません。時々このような感情を持つとしても、ほとんどの母親は実際に行動に移すことはありません。もしこのような感情を持つようなことがあれば、誰かに話しましょう。自分が感じていることを誰かに伝えると、赤ちゃんを取り上げられてしまうのではないかと、女性たちはよく心配します。実際は、かかりつけ医、保健師そして助産師は、あなたの気分が良くなるように援助したいと考えています。そうすることで、あなたは自宅で育児をできるようになり、また楽しめるようになるでしょう。
出産後、すべての人が抑うつ状態になるのでしょうか?
出産とは、大きな変化の時です。今までとは違った感情を持つようになることがよくあります。すべての人がうつ病になるわけではありません。母親になったばかりの女性の半数以上が「ベイビーズ・ブルー(産後のうつ症状)」を経験します。この症状は出産後3、4日して始まります。気分にムラがでてきます。ちょっとしたことで泣きだしてしまいます。時にはイライラしたり気分が沈んだり、不安になったりします。ものごとに過剰に反応するようにもなります。産後10日頃になると、たいていの症状は治まります。ベイビーズ・ブルーになった女性たちには治療は必要ありません。ただ、症状が2週間以上続く場合には、保健師やかかりつけ医に相談しましょう。産後うつ病かどうかをチェックしてもらうことができます。
出産期におこる、その他のこころの健康の問題
うつや不安は妊娠中にもっとも多く見られるこころの健康上の問題です。これらの症状は100人中、10~15人の女性に起こります。妊娠中のうつ病は、産後うつ病とほぼ同じ方法で、手助けをすることができます。女性はその他の時期と同じように、妊娠中はさまざまなこころの健康上の問題を経験します。妊娠中のこころの健康に関するリーフレットも参考にしてください。
産褥期(出産後)精神病
出産後に現れる精神疾患のうち、最も深刻なこころの病です。1000人中約1人の女性が発症し、その症状は出産後数日または数週間以内に始まります。数時間で進行することがあり、生命を脅かすこともあるため、その場合には緊急治療を行う必要があります。いろいろな症状が起こります。気分が高揚したり、落ち込んだり、急激な気分の変動がよくあります。女性は精神病の症状を繰り返し経験します。実際には真実ではないことを信じたり(妄想)、実際にはないものが見えたり、聞こえたりします(幻覚)。
この病気は常に医療サポートが必要です。入院が必要となるかもしれません。理想的には、赤ちゃんと一緒に入院できる母子専門病棟に入院するべきしょう。
過去に重い精神病、とくに双極性障害にかかったことのある女性は、産褥期(出産後)精神病にかかるリスクが高くなります。過去の出産後に重度の精神病にかかったことがある女性も、非常にリスクが高くなります。既往歴に関しては、かかりつけ医や保健師に伝えましょう。調子がいい状態を維持するにはどうしたらいいか、話し合いましょう。
産褥期(出産後)精神病は深刻な病気ではありますが、ほとんどの人が元通りに回復します。
出産後におこる、その他のこころの健康上の問題
妊娠以前に精神疾患にかかっていた場合もあるかもしれません。出産後に症状が悪化し、再発する場合もあります。その他の時期と同じように、女性はさまざまなこころの健康上の問題を経験します。何か精神疾患について心配な場合には、かかりつけ医と話し合ってみましょう。あなたが必要な手助けとサポートをきちんと受けられるようにしてくれます。産後うつ病の原因は?
産後うつ病の原因については、これまでに数多く挙げられています。原因はおそらく一つではありません。異なる多くのストレスが重なった結果、発症に至ります。以下に当てはまる場合、産後うつ病によりかかりやすくなります:
- うつ病などのこころの健康上の問題の既往歴がある。
- 妊娠中にうつ病や不安障害になったことがある。
- 家族や友人からのサポートがない。
- 身近な人の死・友人や配偶者(パートナー)との別離・失業など、ストレスを感じる出来事が最近あった。
産後うつ病ははっきりとした理由や原因がなく始まることもあります。これまでに挙げた問題を抱えているからといって、必ず産後うつ病にかかるわけではありません。
産後うつ病は予防できますか?
産後うつ病の予防に関してはまだはっきりわかっていません。次に挙げた項目は、実用的で、健康状態を保つのに役立つかもしれません。- 「スーパーウーマン(完璧な女性)」になろうとしないこと。頑張りすぎず、疲れすぎないようにしましょう。
- 妊娠中の女性や新米ママと親しくなりましょう。産後うつ病になると、新しい友人をつくることがより難しくなります。
- 話し相手を見つけましょう。頼れる親友がいない場合には、National Childbirth TrustやMAMAに連絡してみましょう。この両団体の地域グループは、出産前も出産後もサポートしてくれるでしょう。
- 母親学級・両親学級に参加しましょう。配偶者(パートナー)がいれば、一緒に参加しましょう。もしいなければ、友人や家族と一緒に行きましょう。
- 妊娠中に、医師からのアドバイスを受けずに抗うつ薬の服用を止めないようにしましょう。妊娠中に抗うつ薬の服用を中止した女性の約10人に7人が、再びうつ病になっています。妊娠中、および授乳中に治療を続けることのリスクと利点について話し合う必要があります。
- 過去にうつ病になったことがある場合には、かかりつけ医や保健師と連絡をとりましょう。妊娠中のうつ、または産後うつ病の兆候は早期に発見することができます。
- 妊娠中にうつ病の治療をきちんと受けましょう。対話療法かもしれませんし、薬物療法かもしれません。
- 友人や家族からの支援の申し出は受け入れるようにしましょう。
産後うつ病に気づくこと
まず初めに、うつ病にかかっていることに気がつくことです。「ベイビーズ・ブルー」として片付けてしまわないようにしましょう。赤ちゃんに対処しているとき、このように感じることは当たり前であると思い込まないようにしましょう。女性が支援を求めるのが遅くなってしまうのには多くの理由があります。以下のようなことをしてしまっているからかもしれません:
- うまくいっていないことに気づいていない。
- 他人にどう思われるかが心配である。
- 母親でいることを楽しんでいないと認めることは、恥ずかしいと感じる。
うつ病は世間でも認知されるようになりました。結果として、産後うつ病が見逃されることはそれほど多くないでしょう。
通常であれば、医師、助産師そして保健師は、母親になった女性のこころの健康についてたずねます。あなたにアンケート用紙への記入をお願いしたり、次のような質問をしたりします:
- ここ1ヶ月、気分が落ち込んだり、うつになったり、絶望感を感じたりすることに悩まされていませんか?
- ここ1ヶ月、楽しいことや何か行動することにほとんど興味がもてず、困っていませんか?
- 手助けが必要だと思いますか、あるいは手助けしてほしいと感じていますか?
支援が得られる場所
必要とする支援と治療は、産後うつ病の重さによって変わります。かかりつけ医と保健師はどのような支援が必要かを決める際に手助けをしてくれます。誰でも、次に述べるようなセルフ・ヘルプの方法を試すことができます。これでは十分でない場合、対話療法が役に立つかもしれません。さらに重いうつ病の場合には、対話療法と合わせて、あるいは単独で薬物療法を受けることもできます。かかりつけ医はこれらの治療法についてアドバイスをしてくれます。
少数の女性には精神保健サービスからの支援が必要です。出産前の精神保健サービスを提供している地域もいくつかあります。そのサービスは妊娠している女性、または1歳未満の赤ちゃんを持つ女性への高度専門サービスです。かかりつけ医から紹介してもらうことができます。このサービスは通常、より重い病気の女性のみ必要となります。
ごくわずかの女性だけ、産後うつ病の治療のために入院する必要があります。その場合は通常、赤ちゃんと一緒に母子専門病棟へ入院しなくてはなりません。
緊急治療
自分自身や赤ちゃんの世話をできなかったり、自傷行為を考えたりする場合には、至急、以下の人々の診察を受ける必要があります。- かかりつけ医
- 精神保健サービス-かかりつけ医が手配してくれます。あなたはすでに緊急時の電話番号を知っているかもしれません。
- 24時間対応している地域の救急外来
セルフ・ヘルプ
- 診断におびえないでください。多くの女性が産後うつ病になります。あなたもそのうちに良くなります。あなたの配偶者(パートナー)、友人または家族は、問題が何であるかを知れば、さらに支援・理解することができます。
- あなたが感じていることを誰かに話しましょう。理解してくれる人に話すことで非常に大きな安心感が得られます。話し相手は配偶者(パートナー)や家族、または友人でしょう。家族や友人に話すことができない場合には、保健師またはかかりつけ医に話しましょう。彼らはあなたが感じていることはよくあることとよくわかっていて、支援してくれます。
- 昼でも夜でも、できるだけ睡眠や休息をとるようにしましょう。協力してくれる配偶者(パートナー)、家族または友人がいれば、時には赤ちゃんに夜間ミルクを飲ませるように頼みましょう。搾乳しておいたり、粉ミルクを利用したりすることができます。頼れる人がいなければ、赤ちゃんが寝ているときに休息をとるようにしましょう。
- 食欲がなくても、規則的に食事をとるようにしましょう。健康的な食べ物を食べるようにしましょう。楽しいと思えたり、リラックスできたりすることをする時間を見つけましょう。例えば、散歩に行く、雑誌を読む、音楽を聴くなどです。
- 配偶者(パートナー)がいる場合には、一緒に楽しく過ごす時間をつくるようにしましょう。シングルマザーの場合は、友人や家族と一緒に楽しめることをしましょう。
- 地域にある、出産後すぐの母親や出産後の女性支援グループへ参加するようにしましょう。保健師が地元のグループについて知っています。うつ状態だとこのようなグループへ参加したくないと思うかもしれません。一緒に参加してくれる人を探しましょう。初めて母親になった他の女性から支援を得ることが役立つことがあります。また、他の女性たちの中には自分と同じように感じている人がいることに気がつくかもしれません。
- 家事、買い物、他の子供たちの世話を他の人たちに手伝ってもらいましょう。
- ちょっとした運動をしましょう。地域に母親と赤ちゃんの運動クラスがないか、保健師に聞いてみましょう。赤ちゃんをベビーカーに乗せて散歩することは良い運動になります。定期的な運動は気分をもち上げてくれます。
- セルフ・ヘルプに関する書籍やウェブサイトを利用しましょう。
- 産後うつ病の女性を支援してくれる団体へ連絡してみましょう。
- 自分自身や配偶者(パートナー)、親しい友人または家族を責めてはいけません。この時期は人生を辛く感じます。疲れていたりイライラしたりしていると、口論につながることがあります。配偶者(パートナー)に「八つ当たり」することは、一番関係が強くなくてはいけないときに関係を弱める恐れがあります。これはあなたを支援しようとしてくれている家族や親友に対しても同じことです。
- アルコールや非合法の薬物を使用してはいけません。ちょっとの間、気分を良くしてくれるかもしれませんが、長くは続きません。アルコールや薬物はうつ状態を悪化させるおそれがあります。体の健康にも良くありません。
配偶者(パートナー)、家族、友人はどのように支援できますか?
- 配偶者(パートナー)、友人または家族が産後うつ病であることを伝えられてもショックを受けたり落胆したりしないでください。これはよくあることで、効果的に治療できるものです。
- 産後うつ病についてきちんと理解しましょう。もっと情報が必要な場合には、保健師またはかかりつけ医にたずねてください。
- ともに時間を過ごすだけでもうつ状態の人にとって手助けになります。話を聞き、励ましや支援を申し出ることが重要です。良くなると言って安心させてあげましょう。
- 配偶者(パートナー)、家族または友人が「生きていたくない」と話したり、自傷行為について話したりする場合には真摯に受け止め、本人が緊急の支援を得られるよう確認しましょう(上述した緊急治療の項を参照してください)。
- 必要な支援や治療を受けるように配偶者(パートナー)、家族または友人に勧めましょう。治療について何か不安なことがあれば、医師と話し合いましょう。
- 実際に支援できることは、何でもしましょう。ミルクをあげる、おむつ換え、買い物、料理、または家事が含まれます。
- もしあなたが母親の配偶者(パートナー)である場合には、あなた自身もきちんと支援を得ましょう。
- もし一人目の赤ちゃんの場合には、赤ちゃんと配偶者(パートナー)の両方の要求のために窮屈に感じるかもしれません。でも怒らないようにしてください。配偶者(パートナー)はあなたの支援を必要としているのです。
- 父親も子どもが生まれた後にうつになることがあります。母親が産後うつ病であると、その可能性は高くなります。もしあなたが父親で、自分がうつであると思う場合には、かかりつけ医に話してください。必要な支援を得ることはあなた自身と家族にとって重要なことです。
なぜ治療が重要なのですか?
ほとんどの女性は治療を受けなくても3~6ヶ月以内に良くなります。産後うつ病の女性の4人に1人は、子供が1歳になってもまだうつ状態にあります。しかしこれは、多くの苦しみを伴うということです。産後うつ病が初めて母親になる経験を台無しにしかねません。自分と赤ちゃん、そして配偶者(パートナー)との関係に負担をかけるおそれがあります。赤ちゃんや自分自身を、元気であればできるほどは世話ができないかもしれません。産後うつ病はそれが治った後でも子どもの成長や行動に影響を及ぼします。そのため、産後うつ病にかかっている期間が短いほど良いのです。どんな治療法がありますか?
必要となる治療法はどのくらい調子が悪いかによって異なります。治療上考えられる利点とリスクについて説明を受けてください。そうすれば、自分にとって最善の選択ができるようになります。治療には以下が含まれます:
- 対話療法
- 薬物療法
対話療法
どんなうつ状態にあったとしても、自分の感情について話すことは役立ちます。時には、親しい人に自分の感情を表現するのが難しいことがあります。訓練を受けたカウンセラーやセラピストへは、話しやすいです。自分がどう感じるのかを誰かに話すことで、安心感が得られます。また、自分自身の困難な問題を理解するのに役立ちます。今では多くの診療所でカウンセラーが働いています。地域によっては、訓練を受けた保健師が自宅でカウンセリングを行うこともできます。
また、より専門的な心理療法があります。認知行動療法(Cognitive behavioural therapy; CBT)は、あなたの思考の癖や行動パターンが、どのようにあなたをうつ状態にしているのかを理解するのに役立ちます。その他の症状に良い影響を与える考え方に変える方法を学ぶことができます。その他の心理療法は、あなたの人間関係や過去の出来事の観点からうつ病を理解するのに役立ちます。
最近出産した人は、通常よりも早くカウンセリングや心理療法サービスを受けられることもあります。地域のサービスについてかかりつけ医や保健師にたずねてみましょう。
対話療法には何か問題がありますか?
対話療法は通常とても安全ですが、望ましくない効果をもたらすことがあります。いろいろなことを話すことによって、過去の嫌な記憶が呼び起こされるかもしれません。そうすると、気分が落ち込んだり、悩んだりしてしまうでしょう。対話療法は親しい人々との関係が負担になる場合があります。セラピストを信頼できるかどうか、必要な訓練を受けたかどうか、確認するようにしましょう。
対話療法に関するもう一つの問題は、地域によってはまだその治療を受けることが難しいということです。英国の治療指針では、産後うつ病の女性は一ヶ月以内に診察を受ける必要があると述べられています。現実には、長い順番待ちリストがあることも少なくありません。そうなると、かなりの期間治療を受けることができないことになります。
薬物療法
さらに重いうつ病の場合や、支援・対話療法では改善しない場合には、抗うつ薬が役立つでしょう。抗うつ薬には数種類あります。すべて同じようによく効きますが、副作用はさまざまです。依存性がある薬ではありません。薬剤はすべて産後うつ病に使用できますが、授乳している場合には、中でもより安全な薬剤がよいでしょう。
抗うつ薬は効き目が現れるまでに少なくとも2週間かかります。気分が良くなった後も、約6ヶ月服用する必要があります。
授乳中でも抗うつ薬は安全ですか?
授乳中であることを医師に必ず伝えてください。多くの抗うつ薬に関して、母乳を飲んでいる赤ちゃんに問題を引き起こすという明らかなデータはありませんので、通常授乳は可能です。しかし、決断は女性によってそれぞれ違います。抗うつ薬の中には長年にわたって授乳中の女性に使用されています。新しい抗うつ薬についてはまだ情報が少ないです。担当医師から最新の情報とアドバイスを得ることができます。
抗うつ薬を服用している期間に授乳するかどうかを決めるためには、以下のことを検討する必要があります:
- 現在のうつ症状の重さの程度(過去の状況)
- 今までに役に立った治療法
- 副作用
- 授乳期間中の薬物治療の安全性関する最新情報
- 授乳のメリット
- 赤ちゃんが未熟、または健康状態がよくないかどうか
- うつ病を抗うつ薬で治療しない場合の赤ちゃんに及ぼす影響
ホルモン治療について
ホルモン剤は産後うつ病の治療方法のひとつとしてすすめられてきました。しかし、ホルモン剤に効果があるという科学的根拠はほとんどありません。特に、血栓症(血管の中で血が固まる疾患)がある場合には、ホルモン治療そのものに危険が伴います。その他の治療法
セント・ジョンズ・ワートは、処方箋なしに薬局で入手できるハーブ薬です。軽度から中等度のうつ病には、セント・ジョンズ・ワートが効くという科学的根拠があります。一部の抗うつ薬とほぼ同じように作用しているようです。しかし、セント・ジョンズ・ワートの方が副作用が少ないと思っている人もいます。セント・ジョンズ・ワートは、他の薬物の作用を妨げるおそれがあることが問題とされていいます。他に薬を服用している場合には、かかりつけ医と話し合いましょう。
セント・ジョンズ・ワートが授乳中も確実に安全だと言える十分な情報はありません。少量が母乳に入りますが、「ハーブ薬」だから安全と思いこんではいけません。授乳中のリスクと利点について、かかりつけ医と話し合いましょう。
参考文献
Antenatal and postnatal mental health: clinical management and service guidance. NICE Clinical Guideline 45 (2007) National Institute for Clinical Excellence: London.Musters C, McDonald E, Jones L (2008) Management of postnatal depression. British Medical Journal, 337, 399-403.
Dennis CL, Hodnett ED (2007) Psychosocial and psychological interventions for treating postpartum depression. Cochrane Database of Systematic Reviews. Oct. Issue 4.
支援可能な団体
Association for Postnatal Illnessヘルプライン: 020 7386 0868
産後うつ病経験者による電話相談サービス、情報リーフレット、ボランティアのネットワークを提供しています。
Cry-sis
ヘルプライン: 08451 228669
過剰に泣き、眠ってくれない、手のかかる赤ちゃんを持つ家族のためのセルフ・ヘルプおよび支援を提供しています。
Family Action
電話番号: 020 7254 6251
精神疾患に悩む家族のための支援および実践的な援助を行います。「Newpin」サービスを運営しています。このサービスは、5歳以下の子どもを持ち、精神状態が育児の安全性に影響がある親を支援するものです。
Home Start
電話番号: 0800 068 6368
5歳以下の子どもが、少なくともひとりいる家族への支援と実践的な援助を提供します。様々な事情からうまく対処することが難しいと思っている両親へ支援を提供します。その事情には、産後うつ病やその他の精神疾患、孤立、親しい人との死別、親または子どもの病気が含まれます。
National Childbirth Trust
電話番号:
妊娠および出産について: 0300 330 0772;
授乳について: 0300 330 0771;
出産後の問題について: 0300 330 00773
妊娠、出産および早期の育児のあらゆる分野に関する支援および情報提供を行います。地域グループおよび電話ヘルプラインがあります。
Netmums
妊娠および育児に関する支援および情報を提供するウェブサイト。支援提供に関する特別な部門があります。地域のサービス源やサポート・グループに関する情報もあります。
Pandas Foundation
産前・産後にうつになった人々や家族へのアドバイス、また支援を提供する団体。
The Samaritans
24時間ヘルプライン: 08457 90 90 90 (英国) ; 1850 60 90 90 (アイルランド);
電子メールアドレス: jo@samaritans.org.
秘密厳守のもと、自殺願望を抱くほどの悩みや絶望感を経験し、苦しんでいる人に、感情面での支援を提供します。
Relate
電話番号: 0300 100 1234.
カップルや家族のカウンセリングなど、人間関係に関する支援を提供します。対面、電話またはオンラインでのカウンセリングがあります。
参考文献
- Overcoming postnatal depression: a five areas approach by Christopher Williams, Roch Cantwell and Karen Robertson, Hodder Arnold (2009)
- Coping with postnatal depression by Dr Sandra Wheatley, Sheldon Press (2005)
- Surviving postnatal depression by Cara Aitken, Jessica Kingsley Publishers (2000)
- Feelings after childbirth: the NCT book of postnatal depression by Heather Welford, NCT Publishers (2002)
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