成人のADHD
ADHD in adults
Below is a Japanese translation of our information resource on ADHD in adults. You can also view our other Japanese translations.
免責事項
この情報は注意欠如・多動性障害(ADHD)を持つ成人の方、自分がADHDかもしれないと考えている成人の方、そして、そうした人を知っていたりサポートしたりする方々のためのものです 。
内容:
- ADHDとは
- ADHDのある人々が抱える問題と強み
- ADHDの原因
- 苦しんでいる方への援助と治療
- 自分自身または他の人をサポートする方法。
ADHDとは
注意欠如・多動性障害(ADHD)とは、以下のような困難を抱える人に与えられる診断名です。
- 不注意 - 集中できない
- 多動性 - 落ち着きがなく、じっと座っているのがつらい
- 衝動性 - 結果を先に考えずに物事を言ったり、行なったりする。
ほとんどの人が、人生のある時点や特定の状況で、これらの問題を経験します。 例えば、寝不足があれば、翌日は集中しづらいものです 。
しかし、ADHDの人の場合、こうした困難はたいてい子どもの頃に始まり、変化したり改善したりすることがあるものの、ほとんどの場合は成長しても続きます。このような困難は、人生のさまざまな分野にも影響を及ぼします。
「私にとって、読書は人込みの中で誰かに本を持たされ、回転木馬に乗っているようなものです。車を運転していて、我慢の効かない自分がアクセルとブレーキをコントロールしている一方で、好奇心旺盛な自分がハンドルを握っているといったような気持ちになる作業です。」 ADHDのある人
ADHDの症状
ADHDは「神経発達障害」で、学習、コミュニケーション、運動、感情、注意力など、さまざまな脳の機能に影響を及ぼす障害です。
神経発達障害は小児期から始まり、多くの人では生涯続きます。「治癒しない」ということです。ただ、神経発達障害のある人は、支援や環境の変化により変化が出ます。
1つの神経発達障害のある人は、以下のような別の障害のある可能性が高くなります。
- 自閉症スペクトラム障害
- 協調運動障害
- 発語、言語、コミュニケーション障害
- トゥレット症候群
- 失読症
- 算数障害(ディスカリキュリア)。
ADHDが認識されなかったり、適切に治療されなかったりすると、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
ADHDの人は、他の精神および身体健康疾患と診断されることがよくあり、そのために根本的なADHDを認識することが難しくなることがあります。
ADHDはよくあることか
成人100人に約3~4人がADHDの影響を受けています。どのような背景を持つ人でもADHDは見られますが、以下のような背景のある人で多くなっています。
- ADHDの兄弟または近親者
- てんかん
- その他の神経発達障害 、学習障害、または学習困難
- メンタルヘルス疾患
- アルコールや薬物の誤用歴
- 刑事司法制度に抵触
- 後天性脳損傷
- 介護を受けている
あるいは
- 未熟児だった
- 子供の頃に「反抗挑戦性障害」または「行為障害」と診断された。
- 子どもの頃に不安障害やうつ病などのメンタルヘルス疾患を患っていたと思われる
ADHDでの性差
ADHDは女児よりも男児に多く見られますが、成人では、ADHDの診断を受ける男女の数はより均等になっています。これは、子供の頃は男児のほうで多動、衝動的な症状が目立ちやすいからかもしれません。
診断に関しては、女児と女性で以下のよう傾向が高くなっています。
- ADHDと診断されていない
- ADHDの評価を受けるよう紹介を受けていない
- 他のメンタルヘルスまたは神経発達疾患として誤った診断を受けている。
ADHDかどうかを判断する方法
以下がADHDの中核となる症状の一覧です。ADHDと診断されるには、これらの症状が、例えば、家庭、学校または職場、人間関係、住環境などの日常生活において、少なくとも2つの領域で著しい困難を引き起こしている必要があります。
ADHDの人から報告されている体験は他にも沢山あり、ここでは網羅しきれていないかもしれません。ここでは、まだ勉学中の若者から職場で働く人々まで、幅広い年齢層に該当する例を挙げています。
不注意 |
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多動性と衝動性 |
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これらの症状のすべては、他人から見て明らかであるとは限りません。ADHDの人が自分の症状を隠す方法を身に着けることが多いですが、そうすると、非常に疲れて、精神衛生に悪影響を及ぼします。
ADHDの強み
ADHDを単なる欠陥や障害としてではなく、「違い」として考えることが有益です。ADHDのある側面を、特定の状況や環境における長所と捉える人もいます。
- 過集中 - ADHDの人の中には、関心のあることに「過集中」する人がいます。 これは、特定のトピックについて非常に博識であったり、何かにやる気や情熱を感じているときには、非常に生産的であったりするということです。
- 危機への対応 - ADHDの人の中には、危機に際して全神経を集中させるので、より上手に切り抜けられる人がいる。
- 創造性 - 注意散漫になる傾向があるために、ADHDの人が問題に対する代替的で創造的なアプローチを探れることがある。
ADHDの人の中には、こうした特性をうまく利用できる人もいます。また、こうした強みを生かすための支援体制が必要となる人もいます。
「妨害をする、失礼だ、いつも邪魔をする、と言われ続けてうんざりしていました。でも、私は感心に満ちていて、何にでも夢中で、ワクワクしていただけなのです。高校時代に教えてくれたある素晴らしい先生は、『夢中になってくれるのは分かるけれど、5分だけ待ってちょうだい』と言ってくれたので、気持ちよく過ごせたのを覚えています。」 ハミード
他の人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)を見分ける方法
友人や家族が当事者のADHDの兆候に気づくこともあるでしょう。Canadian ADHD Resource Alliance (CADDRA) では、知り合いでADHDへのサポートを受けていない人がいる可能性を見極めるのに役立つリストを用意しています。
- 整理に関する問題(時間管理が不十分、約束の時間に間に合わない、遅刻が多い、未完成のプロジェクトがあるなど)
- 不安定な仕事ぶりや学業成績
- アンガーマネジメントの問題
- 家族または結婚の問題
- 決まった習慣の欠如(睡眠パターンが一定でない、など)
- 財政管理が困難
- 薬物使用、強迫的な買い物、ギャンブルなどの依存行動
- 無謀な行為または不注意による事故が多い
- スピード違反、重大事故、免許喪失など、運転に関する問題
- 仕事量を減らさなければならない、あるいは教育環境で課題をこなすのが難しい
- 自尊心の低さ、慢性的な成績不振。
直系親族にADHDの人がいる人は、自分自身もADHDである可能性が高くなります。
「私は自分の脳と格闘しながらも、脳を誇りに思えるようになっています。このバランスが重要なのですが、ここに至るまでに何年もかかりました。この神経タイプのおかげで、自分の長所を認識できるようになりました。私は『欠陥』のある人間にはなるつもりはありません。人との違いのおかげで、自分だけの体験ができるのです。」 クレア
ADHDは以前より一般的になりつつあるのか
近年、イギリス全土のADHDサービスで紹介件数が増加していますが、これには以下のような多くの理由が考えられます。
- 一般の人々や医療従事者の間でADHDに対する認識がより広まった
- COVID-19の大流行により、職場や教育環境が変化し、ADHDの行動がより目立つようになった可能性がある。
ADHDの評価を受ける人が増えるということは、ADHDの人が必要なサポートを受けられるということですから、ポジティブなことです。ADHDではないけれども、関連する支援な人も、支援を受けることができます。
ADHDは「流行」である、「でっち上げ」であると間違ったことを言う人もいますが、実際、ADHDに似た疾患について医師が最初に記述したのは18世紀のことでした。障害の名称は時代とともに変化してきましたが、今日、私たちがADHDと認識しているものと同じ問題が記されています。
ADHDが有効な診断であることは、世界中の医療専門家や科学者の間で一致しています。ADHDをどのように診断、評価、支援、治療すべきかを記した明確なガイドラインがあります。
ADHDはいつ始まり、時間の経過とともにどのように変化するのか
子ども時代
ADHDは幼い頃から現れることがあり、学校で初めて気づくこともしばしばです。しかし、人によっては成人するまで困難を感じないこともあれば、かなり年を経てから気づくこともあります。
ADHDの人には共通の「典型的な」症状がありますが、人によって違った現れ方をします。ADHDがどのように発現するのかは、以下により異なってきます。
- 背景
- 性格
- 環境への適合性
- 受けるサポートと仕組みのレベル
- 肯定的・否定的な人生経験
- 人生のステージ。
多動性と衝動性は小児期に多くみられる傾向があり、時間の経過とともに問題が少なくなる人もいます。不注意の症状は、10代から成人期にかけて問題になる傾向があります。
成長期
通常、若者は成長するにつれて、より多くの困難を経験し、支援をそれまでほど受けなくなります。例えば、家族と暮らし、多くのサポートを受けてきた人であれば、実家を出るまでADHDが問題にならないかもしれません。
ADHDの若者は、以下のような新たな課題に直面することが多くなります。
- 仕事あるいは学校
- 自立生活
- 人間関係
- 財政。
成人期
人生全体で、子育てのような新たなチャレンジで、ストレスレベルがさらに高まる可能性があります。DHDは、年齢を重ねるにつれて、より多くの問題を引き起こすということです。
全体的な要求やストレスのレベルが上がると、ADHDの人はついていくのに苦労するようになります。そうなると、無理をして体調を崩すことになりますが、これは適切なサポートによって回避することができます。これについては、この資料のサポートのセクションで詳しく説明しています。
「つい昨日一般開業医(GP)から言われて…確認のために紹介してもらいました。今は気持ちを整理しているところです。38歳の今まで、ずっと見逃してきたのです。自分の気持ちを声に出すことができなかったのです。」 レイチェル
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の原因
多くのADHDの人の症状は、遺伝因子と環境因子の両方が組み合わさって引き起こされています。
- 遺伝因子 - ADHDを引き起こす遺伝因子は大抵が、一つの遺伝子ではなく、多くの僅かな遺伝的差異により生み出されます。
- 環境因子 - 環境因子には以下のようなものがあります。
- 母親の胎内にいるときの障害
- 出産時の合併症
- 毒物への暴露
- 栄養失調
- 脳損傷。
研究により、ADHDを引き起こす遺伝因子と環境因子は、他の一般的な精神疾患や身体健康疾患にも関わっていることが分かっています。
自分がADHDだと思った時にすべきこと
自分がADHDで、それにより生活にマイナスの影響が出ている可能性があると思ったら、もっとも適切な援助ができる一般開業医(GP)に相談してください。地域精神保健や神経発達症を専門とした支援がこれに該当します。
残念ながら、ADHDの評価のために紹介を受けるまでに時間のかかる場合があることが分かっています。成人のADHDに関する知識が不足していたり、あるいは、その他の要因が引き金で問題が起きているのだと考えらている場合です。例えば、不安障害、うつ病、薬物使用障害などのメンタルヘルスの問題と診断されており、この診断のみで、抱えている問題が説明されているのです。こうした例では、根本原因のADHDが見落とされてしまう可能性があります。
また、評価を受ける期間が長く、診断にも時間を要することもあるでしょう。待つ期間は、お住まいの場所によっても異なります。
ADHDの診断方法
問診や質問表によりADHDかどうかを判断します。問診はADHDを判断する過程で補助とはなりますが、確実な診断には以下が必要です。
- 面談
- 話し合いベースの評価
NICE (英国国立医療技術評価機構) ではADHDのためのガイドラインを用意しています。評価は、国内のどこでもこのガイドラインに従ってなされます。
総合評価報告書には少なくとも以下が記載されています。
- 評価する人の役職、資格、経験
- ADHDの症状について話し合い、診断の基準に当てはまるかを判断します。これは通常、構造的評価ツールと問診により行なわれます
- あなたのメンタルヘルスの全体的な考察。
- 幼少期、発達期、学校教育、日常生活の領域での機能能力についての情報。
- あらゆる身体健康疾患の考察。
- 可能な場合、あなたを知る人による、あなたについての情報、特に幼少期の様子について。
民間機関による評価
NHSの他にも、民間でADHDを評価を行なっているプロバイダーがたくさん存在します。
他の場所で評価を受けた場合は、NHSの成人期ADHDの専門家が、以上の詳細をすべて含めた報告書を確認し、NHSサービスの認定を受けることとなります。これは、ADHDの薬剤処方者が、しかるべき症状に対して安全に処方できる情報をすべて有する必要があるためです。
こうした理由から、代替のプロバイダーから評価を受ける前に、地元のNHSサービスで結果が認められるか必ず確認してください。
ADHDだとわかった後の行程
ADHDと診断されたら、気持ちを整理する期間が必要となるかもしれません。以下のようなさまざまな感情を経験することがあるでしょう。
- 自分の障害について説明を受け、自分がひとりではないと知ったことから感じる安堵感。また、「怠け者」、「腰が重い」、「ずぼら」など、過去に貼られたレッテルについて、自分がそうではないのだと知ることでも安堵感を感じるかもしれません。
- 症状の診断や治療がすぐに受けられないことへの苛立ち。また、すぐに気付かなかった親や教育機関、医療機関への怒りが沸きおこるかもしれません。
- 診断の機会が得られず、ADHDを治療しなかったために自分や周りの人の生活に影響が出ていたことに対する悲しみ。
ADHDの診断は、これが時分自身を見つめる重要な役割を果たす機会となるかもしれませんが、以下の点について、バランスの取れた考え方をすることが難しい場合もあるでしょう。
- ADHDにより、自分の生活が多方面で影響を受けることを認める
- ADHDが自分にとって最も重要なことであるとは見なさない
生活する上で何が困難で、どうすれば物事をよりやりやすくできるかを考える解決志向アプローチが、これらのバランスをとるのに役立つでしょう。
「今、ジェットコースターに乗っているような気持ちです。もっと早くに気付きたかったです。偏見だらけのステレオタイプではなく、生の体験に耳を傾けてようやく、こうした気持ちになれるようになりました。」 - レイチェル
診断後
ADHDの診断を受けたら、評価者と以下の点を話し合います。
- ADHDによる影響
- あなたの目標
- これまでに、あなたにとって役に立ったこと
- その他の症状と、それがADHDに影響を与えるのかどうか。
その他に、役立ちそうな支援や情報について話を聞きます。
治療を開始する前に
治療を開始する前に、評価者から以下の点について話があります。
- 家や職場、学校での環境の改善
- 日常生活上で有効となる変更
- 治療の利点と副作用
- 治療に対するあなたの要望
- その他に気にかかること。
ADHDで受けられるサポート
DHDを理解している人が周りにいること、そして、自分を最善の状態にすることができる環境があることで、最も大きな差が出てきます。つまり、職場で合理的に調整を行ってもらったり、自宅でのルーチンを首尾よく作れるよう、作業療法士の援助を得たりするいったことです。
これらについては、以下でさらに詳しく見ていきますが、ADHDへのサポートで最も大切な点の一つが、環境の改善だということを覚えておいてください。
ADHDの全症状を改善する唯一の解決策はないことを記憶しておくことが大切です。この情報を読めば、あなたの症状が、生活のさまざまな領域にどう影響するかを考える手助けとなるでしょう。
「ADHDと付き合うのはとても難しいことですが、私は援助を受けることで、好きな活動には集中できる自分なりの傾向をつかみ、これを建設的な方法で利用できるようになりました。」 ジェームズ
ADHDの理解
ピアサポートグループ
ピアサポートは、無料または低料金で、ADHDの人たちが、経験やアドバイス、方略、コツを聞いたりシェアしたりできる場所を提供しています。また、社交の機会でもあります。グループミーティングは、オンラインまたは対面の場合があります。ピアサポートグループの利用可能状況や質は、お住まいの地域により異なります。
ネット上の情報
健康上の問題について学ぶことは有効です。ADHDについての情報は、ネット上でたくさん見つけることができます。ただ、ネット上にはさまざまな質の情報があることを覚えておいてください。残念ながら、不正確であったり、誤解を招いたり、間違っていることさえあります。このリソースの末尾に、役立つウェブサイトをいくつか記載しています。
作業療法 (OT)
作業療法は、ADHDを患う人にとって以下の点で役に立ちます。
- 物理的・社会的環境を整える
- 効果的なタイムマネジメントの技術を身につける
- 職務要件を満たすのに役立つ効果的な計画予定を作成する
- 注意散漫にならずに、活動を計画通りに持続する自制心を身につけ、変更に対する柔軟性も持つ。
作業療法の目的は、できるだけ自立した生活ができ、意義のある活動に参加できるように援助することです。
NHSまたは社会福祉サービスから無料の作業療法の紹介を受けられることもあります。これは状況によりさまざまです。独立した有料の作業療法士を選ぶことも可能です。The Royal Collegeof Occupational Therapistsには、資格のある登録作業療法士のリストを載せています。
「ADHDの人が、多くの事に手を広げても終えられないことを知っていれば・・・まぎれもなく私のことでしたから。それがADHDによるものだとわかっていれば、私は、何も考えずに衝動にまかせて物事を行うことに対して、もっと注意を払っていたでしょう。」 ハミード
雇用と教育
合理的配慮
2010年の平等法の下、雇用者、カレッジおよび総合大学は、保護特性を持つ人が実質的に不利な立場に置かれないように、「合理的配慮」を行うようになりました。これらの保護特性には、ADHDなどの障がいも含まれています。障がいとこの法律についてさらに知りたい場合は、政府のウェブサイトをご覧ください。
以下の点に従い、ADHDの人が受けられる合理的配慮が決まります。
- 症状による影響の様子
- 現実的な問題
- 機関の規模
- 資金と情報の利用可能状況
- 配慮により、経験する不都合が克服可能かどうか。
以下が合理的配慮の数例です。
- オフィスの静かな場所に机を配置する
- 口頭だけでなく紙面でも説明する
- 適切であれば職務を委任する
- 仕事の構造化の援助
The Association of Graduate Careers Advisory Serviceがさらに例を提示しています。
Access to Work
Access to Workは、労働・年金省が提供するサービスです。障がい者に対して、実用的支援や経済的支援を行なっています。被雇用者や自営業、求職中の人が利用できます。
これは、法律で雇用者への提供が定められている「合理的配慮」の範囲を超える支援と適用が必要な人を対象としています。例えば、Access to Workでは、ジョブコーチへの支払いや追加のトレーニングの支援を行います。
適格者、応募過程などの情報をさらに知りたい方は、英国政府のウェブサイトをご覧ください。
心理療法
心理療法には、ADHDの症状をコントロールするのに役立つものがあります。以下がその数例です。
- 心理教育コース
- マインドフルネス
- 認知行動療法(CBT)
有効な療法についてさらに知りたい方は、NHSのウェブサイトをご覧ください。
セラピストを探している場合は、セラピストがADHDについての知識を豊富に持っているか、それを学ぶ姿勢があるかを見極めてください。協力的で積極的なケアを受ける手助けとなります。また、この点は、ADHDに伴う問題が治療に影響を及ぼすことがあるため、重要となります。例えば、忘れっぽい場合、予約を忘れたり、予約日に遅刻したり、それ以外の場でタスクに取り組む際に苦労したりすることにつながります。
NHSのウェブサイトで、お近くのトークセラピーのサービスを探しましょう。
認知行動療法(CBT)
CBTは、不必要な思考パターンを見つけ出し、それを克服する技術を身につける手助けをする治療の構造化されたプログラムです。
ADHDの人には、CBTは以下の点で役に立ちます。
- 整頓と時間管理のスキル
- 感情の制御とコントロール
- 他人への共感と他者の視点の理解を育む
- 注意力と衝動管理を向上させる方略。
ADHDでは、認知行動療法(CBT)は薬剤を組み合わせると最も効果的である傾向があります。
コーチングとメンタリング
コーチやメンターは、時間管理などの日常生活のスキルの構築や環境の改善を手伝います。ADHDの人々を支援するのが得意なコーチもいます。
コーチングやメンタリングは、規制法的基準のない自主規制業であることに留意することが重要となります。コーチングとメンタリングのサービスは、品質と専門性にばらつきがあります。 ADHD Europは、適切なコーチを選ぶのに役立つ質問のリストを提示しています。
薬剤
環境の変更を試みたけれどもまだ苦戦している場合は、薬剤が役立つかもしれません。
薬剤による治療を始める前に、治療者により、精神的および身体的な健康をチェックしてもらう必要があります。他の健康上の問題があれば、治療者は、刺激薬を服用することに関連するリスクについてあなたに情報を提供し、副作用が出ないように自己監視する支援を行う必要があります。効果があると感じている薬剤を服用している場合、少なくとも1年に1度は再評価しなくてはなりません。
ADHDの治療には、いくつかの異なる薬剤があり、2つのグループに分けられます。
刺激薬
- メチルフェニデート
- アンフェタミン塩
刺激薬は、注意や行動を制御する脳の領域である神経伝達物質ドーパミンとノルアドレナリンを活発化させます。刺激薬を使用したADHD治療には良質なエビデンスがあり、ほとんどの人で効果的、安全で、副作用がほとんどありません。有効かどうかは、通常すぐにわかります。
副作用を最小限に抑え、適切な投与量を見つけるために、徐々に薬剤を増やす必要があります。ほとんどの人は最初に試す薬剤から明らかに効き目が得られます。最良の結果を得るために異なる薬剤を試す必要のある人もいます。
多くの人々が、過活動を引き起こす状態を治療するために薬剤を使用する理由に疑問を抱いていますが、これらの薬剤は、過活動を促す脳の領域を制御するのに役立つ脳の一部を強化してくれるのです。
非刺激薬
- アトモキセチン
- グアンファシン
非刺激薬は、ノルアドレナリンの利用を増やす、あるいは、その効果を模倣する薬剤です。刺激薬よりも効果が現れるまでに時間がかかる傾向があります。刺激薬が効果を発揮しない場合や、服用が難しいと感じられる場合に一般的に使用されます。
ADHDの人の多くは、薬剤を使用することで非常に助けを得られますが、薬剤を服用したくない人や服用できない人もいます。どの薬剤にも副作用があるため、その影響を感じる人もいます。
市販薬
ADHD薬を処方箋なしで購入する人もいます。自分がADHDではないかと疑っているけれども、評価を受けたくない、または受けられないことが理由かもしれません。医師の処方箋なしでADHDの薬を入手する他の理由には次のようなものがあります。
- 学業や職業のパフォーマンスの向上
- パーティーや社交
- 体重減少。
ADHD薬をオンラインで購入したり、処方箋なしで入手することは、以下の理由で危険です。
- 希望した薬剤を必ずしも受け取らない可能性がある
- 医師のサポートがないため、薬剤が効いているかどうか、あるいは正しく使用する方法を知るすべがない
- 必要なモニタリングを受けることができない
ADHDの診断を受けていない人がADHDの薬剤を服用しても、能力が向上するという決定的な証拠はない。
「そうしたブラックマーケットのウェブサイトは存在していますが、規制されておらず、何が手に入るのか必ずしも分かりませんし、非常に危険です。」 ジェームズ
自分を支えるためにはできること
ADHDの人が全体的な健康と幸福を支えるために、できることがいくつかあります。
1.周りの人にどう助けて欲しいのか伝える
健康上の問題に関しては、人々は手助けをしたいとはよく考えるものの、どうすればいいか分からず、役に立たないアドバイスをすることがあります。周りの人に、役立つと感じること、そうでないことを伝えましょう。
2.定期的に運動する
定期的な運動は誰にとっても良いものです。ADHDの人にとって、不安やうつ病など、ADHDの症状を悪化させる症状が大幅に軽減されることが分かっています。エクササイズは、多動性、衝動性、あるいは不注意の症状には良い影響を与えることが示されていません。
3.十分な良質の睡眠を取る
良く眠らないと、ADHDの症状を悪化させることがあります。良い睡眠習慣を身につけることは難しいかもしれませんが、試せる方法がいくつかあります。
- 例えば、入浴したり、音楽を聞くなど、眠るときに快適な習慣を身につけて、それを維持します。
- 毎日、週末も含めて、起床・と就寝時間を同じにします
- 就寝時間の少なくとも1時間前までにスクリーンに向かうのを止めます
- 就寝の数時間、砂糖、カフェイン、アルコールの摂取を控えます
- 日中、十分な運動をします
- 寝室を暗く静かに保ちます。できれば、新鮮な空気を取り入れるために窓を開けます。
4.定期的で栄養バランスがとれた食事を目指す
大規模な研究で、不注意の症状と不健康な食習慣、特に添加された砂糖の多い食品を食べることの間に関係があることが示されています。不健康な食事は身体の健康に悪影響を及ぼし、おそらく気分にも悪影響を与え、これがADHDの症状管理をより困難にする可能性があります。
5.運転
法律に従うと、安全な運転能力に影響を及ぼす可能性がある状態については、運転免許庁(DVLA)に通知する必要があります。
自分のADHDや治療薬剤が安全な運転能力に影響を与えるかどうかがわからない場合は、医師に相談します。ADHDが運転に影響を与える場合、そして運転免許庁(DVLA)に通知していない場合、最大で£1,000の罰金が科せられることがあります。事故に巻き込まれた場合、起訴される可能性があります。
運転免許庁(DVLA)のウェブサイトで詳細を確認できます。
ADHDの人のサポート方法
ADHDの人を知っている場合、当事者とあなた自身の生活をより快適にできることがいくつかあります。
1.症状について学ぶ
1人のADHDの人に会ったからといって、すべての人と出会ったわけではありません。症状についてもっと知ることで、ADHDへの理解が深まります。また、その人を気にかけていることにもなります。
「1日に何度も、疲れ果て、気分が変わって、イライラするのです。生活のあらゆる面で影響があるのですが、その多くは隠れています。特に女性の場合、家庭、仕事、家族を両立させることが負担になります。誰も分かってくれません。」 マーガレット
2.ピアサポートグループに参加する
いくつかの成人向けADHDピアサポートグループでは、パートナーや配偶者向けに別グループを運営したり、彼らがADHDグループに参加することを許可したりしています。参加する前に、まずグループに連絡してください。通常、ピアサポートグループについての詳細はオンラインで見つけることができます。
3.当事者に話しかける
本人に手伝えることがあるか尋ねます。今は何も思いつかなくても、将来、誰かに話す必要がある場合には手助けができることを知らせるのも良いでしょう。
4.スティグマ(汚名)に注意する
ADHDやそれを持つ人々についての誤解は沢山あります。ADHDの現実について自他共に情報を提供することで、手助けができます。
5.欲求不満を管理する
当事者の行動が不快であったり、それにイライラしたりする場合は、信頼できる人に気持ちを打ち明けましょう。提起したい問題がある場合は、問題がどういったことで、どうすれば解決に役立つと思うか、明確に説明してみましょう。もしかしたら、2人でその問題を解決できる方法があるかもしれません。
「障害について話すとき、私たちはそれが目に見えるものでなければならないと想定しがちです。ADHDの場合、あまり目立たないことがあるため、単に個性だと捉えられるのです。」 ハミード
詳細情報とサポート
ADHDに関するNICEによるガイダンス
これらのガイドラインでは、子ども、若者、成人のADHDの認識、診断、管理を扱っています。ADHDの人々への認識と診断、さらにはケアやサポートの質を向上させることを目指しています。
- 一般向け情報 | 注意欠陥・多動性障害:診断と管理 | ガイダンス | NICE- ADHDと診断された場合によく見られる一般向けの情報。
- 概説 | 注意欠陥・多動性障害:診断と運営 | ガイダンス | NICE – ADHDの治療と診断に関する完全な臨床ガイダンス。
ADHDに関する情報
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD) - NHS (www.nhs.uk)- NHSによるADHD、診断、治療に関する情報。
- ADHDと精神衛生 - MIND- ADHDとメンタルヘルスに関するメンタルヘルス関連の慈善団体、MINDからの情報。
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)と運転 - GOV.UK (www.gov.uk)- ADHDと運転に関する政府からの情報。
- 職場でのADHDに関する雇用主向けガイド- Scottish ADHD Coalitionは職場でADHDの人々をサポートするために雇用主に情報を提供しています。
ADHD慈善団体
以下は、ADAHの人々と共に活動する慈善団体の詳細です。
- ADHD Aware - Support for Adult ADD, ADHD - ADHD Aware - 自身がADHDの経験を持つ人もボランティアに入り、情報提供やサポートミーティングを提供している、ボランティア運営の慈善団体。
- HOME - ADHD基金 - ADHDおよびその他の身体的および精神的な健康上の問題を抱える人々のための慈善団体。
- Scottish ADHD Coalition - ADHDの成人、子どもとその親、介護者、家族を支援するスコットランドの慈善団体。
ピアサポートグループ
- Support | ADHD UK - ピアサポートグループのADHD UKでは、役立つレクチャーやQ&Aセッションを行っています。
- ADHDサポートグループミーティング - ADHS AWARE - ADHD AWAREは、ピアサポートのグループミーティングを開いて、安全なスペースを提供しています。これらのグループは、ADHDを持つ人々、友人や家族に向けたものです。
ウェルビーイング関連情報
- Live Well - NHS (www.nhs.uk) - 健康な生活に関するNHSからの情報。
- Mindfulness - NHS (www.nhs.uk) - マインドフルネスに関するNHSから情報。
- Sleep and tiredness - NHS (www.nhs.uk) - 睡眠と疲労に関するNHSから情報。
クレジット
この情報は英国王立精神医学院のパブリック・エンゲージメント編集委員会(PEEB)が制作しました。執筆時点での利用可能な最良のエビデンスを反映しています。
専門家執筆者ディートマー・ハンク博士(Dr Dietmar Hank)およびケイト・フランクリン博士(Dr Kate Franklin)
このリソースの開発に協力していただき、進んでADHDの生の体験を共有していただいた方々に心から感謝いたします。
Bristol Adult ADHD Support Groupの創設者・ファシリテーターのスーザン・ダン・モルーア(Susan Dunn Morua)氏に特に感謝申し上げます。
ご要望があれば、引用文献をお送りします。
© Royal College of Psychiatrists
This translation was produced by CLEAR Global (Mar 2024)