拒食症と過食症

Anorexia and bulimia

Below is a Japanese translation of our information resource on anorexia and bulimia. You can also view our other Japanese translations.

下記に該当する方にとって本書の情報が役立てば幸いです。

  • 体重やボディ・イメージについて常に考えている。
  • 食生活やダイエットに問題があると感じている。
  • 食事以外の方法で体重を減らすため、過度な運動や意図的な疾患といった方法にこだわっている。
  • 自分は拒食症または過食症かもしれないと思う。
  • 体重が極端に落ちたことを他の人から心配される。
  • あなたの友人や親戚、息子や娘がこの種の問題を抱えている。

体重過多はこの文書では取り扱いません。

はじめに

食習慣は人それぞれです。健康を維持するための食事法は数多く存在します。その一方、肥満への強い恐怖に駆られるあまり実際には健康を損なうものもあります。それらを総称して「摂食障害」といいます。

  • 過食
  • 少食
  • 有害な方法によるカロリー排出

実際、「摂食障害」は通常、食行動以外にも多くのことが関係しているため、摂食障害を抱える人は、カロリーを摂取しない、燃焼させる、あるいは排出するにはどうすればいいか、常に頭を悩ませています。また、自分の体重や外見を確認することを一時も怠らず、体重が増えていないと安心したいため鏡を見たり写真に写ることを避ける癖に自分で気づいています。

この刊行物では、神経性痩せ症と過食症という、2つの摂食障害を扱っています。2つの疾患は別々に説明されていますが次のことに留意ください。

  • 拒食症と過食症の症状はしばしば混在する。
  • 過食症から拒食症に移行する場合もあれば、最初は拒食症の症状があっても、後に過食症の症状が現れる場合もある。

摂食障害を抱えているのはどんな人?

少女や女性が拒食症や過食症になる確率は、少年や男性よりも10倍高いと言われます。

しかし、摂食障害は少年や成人男性の間でも増えているようです。男性の場合は、過度の運動と関連して障害を発症し、やせ体型よりも筋肉質な体型になりたがる傾向にあります。

神経性痩せ症

その兆候とは?

次のようなサインが見受けられます。

  • 体重がますます気になる。
  • 食事量が減り続ける一方で、カロリー計算をしている。
  • カロリーを燃焼するために運動量をどんどん増やしている。
  • 自分の年齢と身長に見合った安全体重を大幅に下回っていても、体重を減らしたいという気持ちが抑えられない。
  • タバコを吸ったり、ガムを噛んだりして体重制限している。
  • 体重や体型、鏡に映る自分の姿を執拗にチェックする。
  • 人と食事する機会を避ける。
  • 体形を隠すためにだぶだぶの服を着ている。
  • 体重測定の前に水分を大量に摂る。
  • 特定の食品群を排除し、特定の食品を良いもしくは悪いと見なす。
  • (特に学校で)食事の時間を避ける。
  • 性的興味がなくなる。
    • 少女あるいは成人女性の場合、月経が不規則になったり止まったりする。
    • 少年あるいは成人男性の場合、勃起や夢精が止まり、睾丸が縮小する。

上記以外にも、厳格な日課や時間にこだわらなければならない、あらゆる汚染を恐れる、あるいは恒常的に勉強や仕事をしなければ気が済まないといった強迫観念を形成する場合や、適切な支出管理が出来ないと気づく人もいます。

発症時期は?

拒食症は年齢を問わず発症する可能性があることが現在わかっていますが、10代で発症することが一般的です。発症頻度は次のとおり。

  • 15歳の少女の場合、150人に1人。
  • 15歳の少年の場合、1000人に1人。

兆候は?

  • 毎日摂取するカロリーが極端に少ない。フルーツ・野菜・サラダなど、一般的に健康と言われる食事をしているが、実は体に十分なエネルギーを与えていない。
  • 体重を低く抑える目的で、運動したり、ダイエットピルを服用したり、喫煙量を増やしたりしている。
  • 自分自身の食事を拒否する一方で、他の人のために食料を買ってきて料理をする。
  • 空腹感は相変わらずで、食べ物のことが頭から離れない。
  • 体重が増えることを恐れるようになり、体重を正常値よりかなり低く保とうと決心するようになる。
  • 自分の痩せ体型や体重減少を家族に指摘されて初めて気づいた。
  • 本当はどれくらい食べているか、どれだけ体重が減っているのか、他人に言えない自分に気づくことがある。
  • 食べるつもりが無かったものを食べて体調を崩し、さらには、食べることを制御できなくなり、暴飲暴食に走ることがある。これは神経性過食症とは違い、過食と嘔吐を伴う神経性痩せ症の一種とされる。神経性過食症の患者は、定義上、標準体重の範囲にある。

神経性過食症

その兆候とは?

次のようなサインが見受けられます。

  • 体重がますます気になる。
  • 暴飲暴食(下記参照)。
  • 嘔吐を誘引したり、下剤を使ったりしてカロリーを排出する。
  • 生理不順がある。
  • 倦怠感がある。
  • 罪悪感がある。
  • ダイエットに励んでいるにもかかわらず、標準体重を維持している。

発症時期は?

神経性過食症は10代半ばで発症する場合が多いのですが、援助を求める心の準備ができるまで数年間も症状に苦しむ人は少なくありません。新しい人間関係が始まったり、初めて他人と一緒に暮らさなければならなくなったりと、生活が変化したときに助けを求める人が多いようです。

大体100人に4人の割合で女性は過食症にかかります。男性の場合はむしろこれより低い数字となります。

やけ食い

  • 冷蔵庫をあさったり、普段なら避けるような太りやすい食品をたくさん買いに出かけたりする。
  • それらを全部、短時間で、たいていは秘密裏に食べる。
  • ビスケットの詰め合わせ、チョコレート数箱、ケーキの数々を、ほんの2~3時間で食べ尽くしてしまうことがある。
  • 暴飲暴食の衝動を満たすために、他人の食べ物を奪ったり、万引きをしたりすることさえある。
  • やけ食いは、計画的な食事から始まるかもしれないが、食事制限を続けてきたせいで普通の食事では満足できず、食べるのをやめられなくなる。
  • やがて満腹度や腹部の膨張感を意識すると、おそらくは罪悪感にさいなまれ意気消沈するかもしれない。わざと体調を崩したり、下剤を服用することで、食べたものを排出しようとする。非常に不快で疲れるにも関わらず、この暴飲暴食・嘔吐・排泄の習慣に陥っていることに気づく。

過食性障害

この種の障害に悩まされる人は、ダイエットのかたわらで暴飲暴食に走るのですが、自ら進んで嘔吐を試みることはありません。 

非常に辛く苦しい経験です。体重が大幅に増えることがあります。

心理療法が有効です。一般開業医(GP)が「心理療法へのアクセス改善」(IAPT)サービスへ紹介してくれるでしょう。

この摂食障害の治療に関する詳細は、NHS Choices websiteで確認できます。

拒食症や過食症による影響は?

カロリー不足の場合は次のような影響が考えられます。

心理的症状

  • 眠りづらくなる。
  • 食事やカロリー以外のことに集中したり、明確に考えたりすることが難しくなる。
  • 抑うつ状態になる。
  • 他人への関心を失う。
  • 食べ物や食事に執着する。場合によっては、洗濯、掃除、片付けなど、他のことにも強くこだわる。

身体症状

  • 胃が縮小し食事が困難になる。
  • 身体代謝が落ち、いつも疲れる、力が出ない、寒がりになる。
  • 便秘。
  • 髪や肌の変化に気づく。髪の毛がぬける。体の他の部分にうぶ毛が生える。皮膚が乾燥し、褥瘡ができることもある。
  • 身長が伸びきらなかったり、反り腰になって身長が伸びなかったりする。
  • 骨がもろくなり、折れやすくなる。
  • 妊娠できない。
  • 特にアルコールを飲むと肝臓にダメージを与える。
  • 極端な場合は死亡の可能性もある。神経性痩せ症は、あらゆる精神疾患の中で死亡率が最も高い。

嘔吐の場合は次のような影響が考えられます。

  • 歯のエナメル質が失われる(嘔吐物の胃酸で溶けるため)。
  • 顔がはれる(嘔吐で唾液腺が腫れるため)。
  • 不整脈に気づく(嘔吐により血液中の塩分のバランスが崩れ動悸が発生)。
  • 脱力感がある。
  • 日常的に疲労感がある。
  • 体重が大きく変動する(下記参照)。
  • 腎臓を傷つける。
  • てんかん発作がある。
  • 妊娠できない。

下剤を多用する場合は次のような影響が考えられます。

  • 胃痛が続く。
  • 指が腫れる。
  • 下剤を使わないとトイレに行けなくなる(下剤を常用すると腸の筋肉が傷つく可能性がある)。
  • 体重の変動が大きい。排出時には大量の水分が失われる。後で水を飲んで再び水分を摂取できる(下剤を使用してもカロリーは無くならない)。

摂食障害の原因は?

単純な回答は無いものの、次の案が説明になると考えられています。

  • 遺伝: 摂食障害は、必ずしも同居していなくても家族内で発症するという証拠が多くある。また、摂食障害だけでなく、それによって引き起こされる様々な症状にかかりやすくなる遺伝子を裏付ける証拠も多い。
  • オフのスイッチがない: 身体から空腹のサインを感じると、たいていの人はダイエットにブレーキをかける。拒食症の人の中には、このような体のスイッチが入らず、体重が危険なほど低い状態を長く持続する人がいる。
  • コントロール: ダイエットから満足感を得ることができる。体重が2~3キロ減ったことを体重計で知った時の達成感は、多くの人が知っている。はっきりと目に見える形で自分自身を管理できると感じるのは良い事だし、人生の中で唯一、自分が制御できると感じられる部分が体重かもしれない。
  • 思春期: 拒食症は、大人になるにつれて変化する身体的変化を逆行させることがある。男性では陰毛や顔の毛、女性では乳房や月経など。特に性的な現象など、年を重ねることによる身体要求を先送りするにあたって、拒食症が助けになるかもしれない。
  • 社会的圧力: 私たちの社会的環境は、私たちの行動に強力な影響を与える。やせていることに価値を置かない社会では、摂食障害は少ない。バレエ学校など、細さが評価される場所では摂食障害が多い。西洋文化では細いことは美しいとされる。テレビ、新聞、雑誌には、理想的で人工的にスリムにした人々の写真が掲載されている。ネガティブなボディ・イメージを持つ人にとって、ジムやヘルスクラブはそのような認識を強めることにもなりかねない。 このため、たいていの人は人生のある時点でダイエットに挑戦する。ダイエットをしすぎたところで平気な人もいるが、摂食障害になる危険性のある人にとっては、ダイエットは危険であり、拒食症になる可能性もある。
  • 家族: 食べることは、他の人と一緒に生活する上で重要だ。食べ物を受け入れることは喜びを生むが、拒否することは周囲の人を動揺させることがある。家族内ではなおさらだ。 食事を断ることが、自分の気持ちを表現したり、家族のことに口を出したりできる唯一の方法だと患者は感じているかもしれない。 介護者と患者の間のオープンで正直なコミュニケーションが不可欠である。批判的になりすぎないことも重要だ。一方、愛情深い家族は摂食障害の影響から患者を守ろうとすることが多く、摂食障害が長引く可能性がある。
  • うつ病: 私たちの多くは、心が動揺した時や単に退屈だと感じた時でさえ、感情をなだめるために食事を摂る。過食症の人は抑うつ状態であることが多く、暴飲暴食は自分が不幸だという感情に対処する方法として始まることがある。残念なことには、嘔吐や下剤の服用で、食事前と同じ負の感情が残ってしまう。
  • 自尊心が低い: 拒食症や過食症の人は、自分のことをあまりよく思っていないことが多く、他人と自分を不利に比較する。体重を減らすことは、尊敬と自己価値の感覚を得ようとする方法かもしれない。
  • 感情的な苦悩: 悪いことが起こったり、生活が変わったりしたときの反応は人それぞれだ。拒食症と過食症は下記の項目と関係がある。
    • 生活難
    • 性的虐待
    • 身体疾患
    • 死や人間関係の破綻など、感情が動揺する出来事
    • 結婚や引っ越しなど、重要な出来事
  • 悪循環:摂食障害は、当初のストレスや理由が過ぎ去っても続くことがある。胃が縮んでしまい、食事をするのが不快で怖く感じることがある。
  • 物理的な原因:まだ解明されていない物理的な原因があるのではないかと考える医師もいる。
  • 特定の病気や治療:糖尿病や嚢胞性線維症など、食事を監視しなければならず、適切な治療を受けなければ体重が減少する病気にかかっている人の拒食症の発生率は比較的高い。健康を犠牲にして体重を減らす気持ちに駆られることがあっても、それは特段に危険である。

男性、障がいのある人、小児

男性の場合に異なることは?

  • 摂食障害は、少年や男性の間でもより一般化した模様。
  • 摂食障害は、低体重または低体脂肪を要求される職業により一般的。乗馬、ボディビル、レスリング、ボクシング、ダンス、水泳、陸上競技、ボートなどがその一例。
  • 摂食障害について黙っているよりも助けを求める男性が増えたかもしれない。

障がいのある人、小児

学習障害や自閉症、その他の発達上の問題があると、食事に支障をきたすことがあります。例えば、自閉症の人の中には、食べ物の色や食感が嫌いで、食べることを拒否する人もいるのです。

10才未満の子どもたちの問題は、やせたいという欲求よりも、食感や偏食、怒りっぽさなどに関係しています。そういった問題を解決する方法は、拒食症や過食症の場合とはかなり異なります。

自分は当てはまる?

医師が使用するSCOFF問診票の質問内容です。

  • 不快なほど満腹になるまで食べて自分を病気(S - sick)に追いやっていませんか?
  • 食べる量を制御(C - control)できなくなったことを心配していますか?
  • 最近、3カ月で6キロつまり石1個分(O - One stone)以上減量しましたか?
  • あなたは痩せていると周囲の人に言われるけれども、自分は太っている(F - fat)と思いますか?
  • あなたの人生を支配しているのは食べ物(F - food)だと思いますか?

上記のうち2つ以上に「はい」と答えた人は、摂食障害の可能性があります。

自分でできることは?

過食症には、療法士の指導を受けながら自助マニュアルを使って取り組めることがあります。

拒食症には、通常、クリニックや療法士によるより組織的な支援が必要です。自分にとって最良の選択ができるよう、選択肢についてできるだけ多くの情報を得るのは有意義です。

やるべきこと:

  • 朝食、昼食、夕食と、規則正しい食事時間を守る。体重が非常に少ない場合は、朝、昼、夜の間食もとる。
  • より健康的な食生活に向けて、何か小さな一歩を踏み出してみる。朝食を食べることに抵抗があるなら、朝食時に数分間テーブルに座り、コップ1杯の水を飲むだけでもいい。慣れてきたら、トースト半分でもいいから少し食べる。ただし習慣は毎日続ける。
  • 毎日、何をいつ食べたか、自分の考えや感情を日記につける。この方法で、自分の気持ち、考えていること、食べ方に関連性があるかどうかを確認することができる。
  • 食べているもの、食べていないものについて、自分にも他人にもオープンになるようにする。秘密主義は摂食障害の最も孤立した側面の一つである。
  • 常に物事を達成する必要はないと自分に言い聞かせ、時には自分を解放してあげる。
  • もっと体重を減らせば、短期的には気分がよくなるかもしれないが、中期的には不安感が増え抑うつ状態になるということを、今一度思い出す。
  • リストを2つ作る。ひとつは摂食障害が与えてくれたもの、もうひとつは摂食障害によって失ったもの。自助に関する本が手助けになる。
  • 自分の体に優しくすることを心がけ、罰を与えないこと。
  • 自分にとって適正な体重がどれくらいなのか、その理由をきちんと理解しておくこと。
  • 他の人の回復体験談を読む。自助に関する本やインターネットで見つけることができる。
  • B-eatのような自助グループに参加することを考える。一般開業医(GP)から推薦される場合もある。
  • 減量や超低体重の維持を勧めるウェブサイトやソーシャルネットワークは避ける。そういった団体は、健康を害することを勧めるが病気になったときには何もしてくれない。

注意すること:

  • 体重を測るのは週に1回まで。
  • 自分の体をチェックしたり、鏡の中の自分を見たりすることに時間を費やしてはいけない。完璧な人間などいない。自分を見つめる時間が長ければ長いほど、嫌なことを見つける可能性が高くなる。常にチェックしていると、どんなに魅力的な人でも自分の見た目に満足できなくなる。
  • 家族や友人との関係を断ち切らないこと。彼らはあなたが痩せすぎだと思っていて、そのために関係を絶ちたいとあなたが感じるかもしれない。しかし、彼らはあなたの命綱になることがあるかもしれない。

もし、助けを得なかったり、食習慣を変えなかったら?

重篤な摂食障害を抱える人のほとんどは、何らかの治療を受けることになります。ですので、摂食障害に何の対処もしなかった場合に、どうなるかは未知数です。

ただ、深刻な摂食障害は殆どの場合、自助のみでは回復に至らないようです。

拒食症の患者の中には死亡する人もいます。

低体重での運動は危険で、特に寒い屋外で運動する場合はなおさらです。

拒食症の専門家による治療

一般開業医(GP)は、専門のカウンセラーや精神科医、心理学者を紹介することができます。

民間の療法士や自助グループ、クリニックなどを選択することも可能です。ただ、自分に何が起きているかを自分のかかりつけの一般開業医(GP)に知らせることはより安全です。

良質な健康診断を受けるのは賢明です。摂食障害は身体的な問題を引き起こしているかもしれません。あまり一般的ではありませんが、認識されていない病状がある場合もあります。

あなたにとって最も有用な治療法は、おそらくあなたの特定の症状、年齢、状況によって異なります。

拒食症という診断で専門医に紹介されたら

  • 精神科医や心理学者は、まずあなたと話をし、その問題がいつ始まり、どのように発展していったのかを知りたがります。体重を測定し、体重の減り具合によっては健康診断や血液検査が必要になることもあります。あなたの許可があれば、精神科医はおそらくあなたの家族、そしておそらく友人と話をし、彼らがこの問題をどのように解明できるか検討したいと思うでしょう。もしあなたが家族を巻き込みたくないのであれば、たとえ幼少の患者であっても個人の守秘義務があります。虐待や家族内のストレスが原因の場合に、これは当てはまります。
  • もしあなたがまだ実家で暮らしているのなら、少なくとも最初のうちは、あなたが食べているものを確認する作業を両親が担当するかもしれません。家族と一緒の規則正しい食事、ならびに十分なカロリー摂取が順当に行われるような配慮がここに含まれます。定期的に療法士に会い、体重を確認し援助を受けることになります。
  • このような事態に対処することは、関係者全員にとってストレスとなる可能性があるため、あなたの家族にもなんらかの援助が必要かもしれません。若年層にはそれが有効な場合がありますが、とは言え、全ての場合において必ずしも家族全員が一緒にセラピーを受けなければならないというわけでではありません。あなたの家族が問題を理解し、対処するための助けを得ることが可能だということです。とは言え、患者と精神科医に親が関わることで、回復が促されることもあります。
  • 人間関係、勉強、仕事、自分に自信が持てないことなど、悩んでいることを何でも相談してください。
  • 最初のうちは、おそらく普通の体重に戻そうとは思わなでしょう。ですが、気分良くなりたいと思うことでしょう。そして、気分が良くなるためには健康的な体重まで戻す必要が出てきます。下記の項目をあなたは知っておく必要があります。
    • あなたの健康的な体重は?
    • 健康的な体重を保つのに毎日どれだけの食料が必要?
    • 確実に太らないようにするには?
    • 確実に食事を制御するには?

拒食症の心理療法またはカウンセリング

  • だいたい毎週1時間を費やして、と自分の考えや感情について療法士と対話することになります。それによって、問題の発端を理解し、物事に対する考え方や感じ方をどうすれば変えられるかを理解するのに役立つかもしれません。話すことで気が動転してしまうこともあるが、良い療法士であれば、あなたが困難にうまく対処できるように手助けしてくれるはずです。また、自分自身をより大切にし、自尊心を取り戻す手助けをしてくれるでしょう。
  • セラピーによる試練をストレスよりむしろ恩恵に感じられるまであなたが回復したならば、特定の焦点に絞り込んだ認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapyや対人関係療法(Interpersonal Therapy)が提供されることがよくあります。体重が減少したり目標値に届いていない時にセラピーを受けると、そのストレスで事態を好転させるどころか悪化させることがあります。
  • 同様の問題を抱える少人数のグループと一緒に達成できることもあります。
  • 本人の許可があれば、家族も参加できます。 拒食症に対する家族療法で最も研究が進んでいるのは、「モーズレー・モデル」と呼ばれます。パートナーがいる成人は、カップルとして扱われることがあります。また、あなたに起こったことを理解し、あなたとどのように協力し、どのように状況に対処していくかを助けるために、親族や介護者が個別にセッションを受けることもあります。
  • この種の治療は数カ月から数年続くことがあります。
  • 医師が入院を勧めるのは、これらの措置がうまくいかない場合や、体重が危険なほど低い場合のみです。

病院での治療

患者が摂取する食事の管理、問題に関する対話が含まれ、より構造化された厳密な管理体制のもとで実行されます。

  • 貧血や感染リスクがあるかどうかを調べるための血液検査。
  • 定期的な体重チェック。体重が少しずつ増えていることを確認するため。
  • その他、心臓や肺や骨へのダメージをモニターするために、身体的な検査が必要になることもある。

食事と運動に関する助言と支援

  • 健康的な食事について、どの程度食べるか、健康を維持するために必要な栄養素をすべて摂取するにはどうすればいいかについて、管理栄養士があなたと話し合うことがあります。
  • 体に必要な栄養素が不足している可能性があるため、しばらくの間はビタミンやミネラルのサプリメントが必要かもしれません。
  • 健康的な体重に戻すには、食べる量を増やすしかなく、初期段階では、それは難しいかもしれません。スタッフによるサポートは下記を含みます。
  • 適正な体重増加目標を設定する。
  • 定期的に食べる。
  • 不安感に対処する。
  • 一般開業医(GP)は、適切な資格を持つ運動生理学者を紹介し、あなたに適した運動の量、種類、強度をアドバイスすることができる。

摂食障害の薬剤療法

あなたが病気と取り組んでいる間に経験する不安を軽減するために、また特に、患者が語る反芻を軽減するために、医師が薬剤を処方することがあります。

若年層や低体重の人に最も安全であるため、オランザピンという薬剤が用いられることが多いです。精神安定剤のジアゼパムや類似薬よりも効果が高いと言われており、癖になりにくいです。

体重を増やすことと回復することは同じではありません。とは言え、体重を増やさずに回復することは出来ません。深刻な飢餓状態にある人は通常、集中したりはっきりと物事を考えることが難しく、特に自分の感情について明確に考えることができません。

拒食症の強制治療

これは珍しい場合です。この処置がとられるのは、症状があまりに悪化して下記のような状況に至る場合に限られます。

  • 自分で適切な判断ができない。
  • 深刻な被害から保護される必要がある。

拒食症の場合、過酷な体重減少によって健康や生命が危険にさらされ、思考が深刻な影響を受けることがあります。

拒食症の治療効果は?

  • 患者の半数以上は回復しますが、症状は平均して6~7年間続きます。
  • 重度の拒食症が20年続いた後でも、完全に回復することができます。
  • 過去に入院した重症患者を調査した結果、5人に1人が死亡する可能性があることが示唆されています。最新の医療を受け、治療を続けることができれば、死亡率はずっと低くなる。
  • 心臓や他の臓器が損傷していない限り、飢餓の合併症のほとんどは、十分に食べられるようになると徐々に改善するようです。

過食症の専門家による治療

一般開業医(GP)は、専門のカウンセラーや精神科医、心理学者を紹介することができます。

民間の療法士や自助グループ、クリニックなどを選択することも可能です。ただ、自分に何が起きているかを自分のかかりつけの一般開業医(GP)に知らせることはより安全です。

良質な健康診断を受けるのは賢明です。摂食障害は身体的な問題を引き起こしているかもしれません。あまり一般的ではありませんが、認識されていない病状がある場合もあります。

あなたにとって最も有用な治療法は、おそらくあなたの特定の症状、年齢、状況によって異なります。

過食症の心理療法

神経性過食症には2種類の心理療法が有効であることが示されています。どちらも週1回、約20週間にわたって行われます。

認知行動療法(CBT: Cognitive Behavioural Therapy)

これは通常、個々のセラピスト、自助に関する書籍、グループ・セッション、あるいはCDロムと一緒に行われる。

CBTは、自分の考えや感情を詳しく観察するのに役立ちます。暴飲暴食の引き金になるものを見つけるために、食習慣の日記をつける必要があるかもしれません。

そうすれば、こうした状況や感情について、よりよい考え方や対処法を見つけることができます。拒食症の治療と同じように、セラピストはあなたが人としての価値観を取り戻す手助けをします。

対人関係療法(IPT: Interpersonal Therapy)

これも通常、個人セラピストと一緒に行われるが、より他者との関係に集中するものです。あなたはこれまでに、友人を失ったり、愛する人が亡くなったり、引っ越しなど人生の大きな変化を経験したかもしれません。感情的な欲求を満たすために、食べることよりもっと心の支えとなる人間関係を再構築するのに役立つでしょう。

過食症に有効な食事の助言

規則正しい食事に戻り、飢えたり嘔吐したりすることなく安定した体重を維持するために、助言は役に立ちます。管理栄養士が健康的な食事について助言することができます。

「一口ずつ良くなる」などのガイド本が有効です(参考文献を参照)。

過食症の薬剤治療

うつ病でなくても、プロザックなどのフルオキセチン抗うつ薬を大量に服用すると、暴飲暴食への衝動が抑えられることがあります。

2~3週間で症状を軽減し、心理療法の始めの一歩になるかもしれません。残念なことに、他の助けを借りなければ、しばらくすると効果は薄れてしまいます。

過食症の治療効果は?

  • 患者の約半数は回復し、暴飲暴食は少なくとも半分に減る。完全に治癒しなくとも、摂食障害による干渉を減らし、自分の人生を制御できるようになります。
  • 薬物やアルコール、自傷行為などの問題があれば、結果はさらに悪くなります。
  • 認知行動療法(CBT)と対人関係療法(IPT)は1年以上かけても同じように効果的に作用するが、CBTの方が少し早く効き始めるようです。
  • 薬剤と心理療法の併用が、どちらか単独の治療よりも効果的であるという証拠がいくつかあります。
  • 回復は通常、数カ月から数年かけてゆっくりと進みます。

詳細情報

オンラインアドバイス

B-eat(ビート、旧名は摂食障害協会):ヘルプライン成人(0845 634 1414)ヘルプライン若年層―25歳未満(0845 634 7650)ビートは、摂食障害や食に関する問題に苦しむ人々を、家族や友人を含めて支援する英国有数の慈善団体。

Bodywhys(ボディワイズ、アイルランド摂食障害協会): ヘルプライン(1890 200 444)Email: info@bodywhys.ie

DWED(摂食障害を持つ糖尿病患者のウェブサイト)

Eating Disorder Hope(摂食障害の希望): 摂食障害に悩む人、その治療提供者、愛する人への情報、摂食障害治療の選択肢、回復ツールやリソースを提供するアメリカのウェブサイト。

Healthtalk.org(ヘルストーク) 摂食障害の若者に焦点を当てたセクションがある。

Mental Health Ireland(アイルランド精神衛生)
Email: information@mentalhealthireland.ie.精神的に病んでいる人々に援助を提供し、前向きな心の健康を促進する。

NHS 111: NHS選択肢について。999緊急通報用番号を選ぶほどではないにしても、医療支援が直ぐに必要な場合はNHS 111に電話すること。24時間、365日通信可能。固定電話、携帯電話からの通話は無料。

オンラインCBTリソース

参考文献

『神経性痩せ症からの脱却:家族、友人、患者のためのサバイバルガイド』ジャネット・トレジャー著(心理学出版)

『神経性痩せ症と過食症:どのように助けるか』M. デュカー、R・スレイド著(オープン大学出版)

『摂食障害:両親のための手引き』レイチェル・ブライアント・ウォー、ブライアン・ラスク著(ペンギン・ブックス)

『摂食障害を持つ愛する人を介護するためのスキルベースの学習:新しいモードスレー・メソッド』ジャネット・トレジャー、グレイン・スミス、アンナ・クレーン著

『神経性過食症と暴飲暴食:回復への道しるべ』P.J.クーパー、クリストファー・フェアバーン著(コンスタブル&ロビンソン)

『暴食の克服』クリストファー・フェアバーン著(ギルフォード出版)

『一口ずつ良くなる:神経性大食症・暴飲暴食障害のためのサバイバル・キット』ジャネット・トレジャー、ウルリケ・シュミット著(ホーブ心理学出版)

神経性痩せ症と関連摂食障害(ANRED)

自助のヒント:http://www.anred.com/slf_hlp.html

参考文献とクレジット

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発行年月: 2019年11月

閲覧期限: 2022年11月

© Royal College of Psychiatrists

This translation was produced by CLEAR Global (Oct 2023)

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