双極性障害

 

Bipolar Disorder

はじめに 

このリーフレットは双極性障害(または躁うつ病とも呼ばれます)について詳しく知りたいと思っている方のためのものです。特に双極性障害を抱える方や、その友人、家族にとってこのリーフレットは役立ちます。

このリーフレットでは以下のことを説明します:

  • 双極性障害
  • この障害によって引き起こされる問題
  • 対処方法
  • 利用可能な治療

 

双極性障害とは何ですか?

双極性障害はかつて「躁うつ病」と呼ばれていました。この古い名称が示すとおり、双極性障害を抱える人は激しい気分の変動があります。通常こうした気分の変動は数週間または数カ月続き、私たちのほとんどが経験する気分の変動をはるかに超えています。気分変動の種類は以下のとおりです:

 気分の落ち込みまたは「抑うつ状態」強い抑うつ気分および絶望感 
 気分の高揚または「躁状態」極度の幸福感および高揚感 
 混合状態例えば、気分はうつなのに、落ち着きがなく行動が活発すぎるという躁病の病相がある状態 

 

双極性障害はどれくらいの人が発症するのですか?

だいたい成人100人のうち1人が一生のある時点で双極性障害になります。通常10代から20代の始めに始まり、40歳を過ぎてから始まることは稀で、性別に関係なくかかります。

 

双極性障害にはどのような種類がありますか?

双極性Ⅰ型障害

  • 少なくとも一回の躁病エピソード(訳注:躁状態やうつ状態の症状が始まってから収まるまでの期間を病相期、またはエピソードと呼びます)があり、その症状は一週間以上続きます。
  • 双極Ⅰ型障害の人の一部は、躁病エピソードのみ経験することがあります。ただし、ほとんどの人は抑うつ期間もあります。
  • 治療を受けない場合、一般的に躁病エピソードは3ヶ月から6ヶ月続きます。
  • うつ病エピソードはやや長く続きます。治療を受けない場合は6ヶ月から12ヶ月続きます。

双極性II型障害
重度の抑うつ状態が1回以上ありますが、躁病エピソードは軽度です。これは「軽躁病」と呼ばれます。

急速交代型
12ヶ月の間に4回以上気分の変動が起きます。この型は双極性障害保持者の約10人に1人に生じ、双極Ⅰ型およびII型障害のどちらにも起こりえます。

気分循環症
気分の変動は本格的な双極性障害に見られるほど重度ではありませんが、より長く続く場合があります。気分循環症は本格的な双極性障害に発展することもあります。

 

双極性障害の原因は何ですか?

双極性障害の原因はよくわかっていませんが、研究により以下のことが示唆されています:
  • 双極性障害は血縁関係内で発症します。育て方よりも遺伝に関係していると考えられています。
  • 気分を調節する脳のシステムに何らかの機能障害があるかもしれません。それゆえ、双極性障害はしばしば薬物療法でコントロールすることができます。
  • 時にストレスや身体の病気が症状を引き起こすことがあります。

 

どのような症状なのでしょうか?

それは、あなたの気分がどちらに振れたかにより異なります。

 

抑うつ

抑うつ気分は私たち誰もがときどき経験します。また人生における問題を認識し対処するために役立つ場合すらあります。しかし、臨床的抑うつ状態、あるいは双極性障害の抑うつ気分はさらにひどいものです。持続期間も長く、日常的なことに対処することが困難になるか、あるいはできなくなります。抑うつ状態になると次のような変化に気づくでしょう:

感情

  • 消えることがない不幸感
  • 理由もなく泣き出したくなる
  • 物事に対する関心を失う
  • 物事を楽しむことができない
  • 気持ちが落ち着かず、動揺する
  • 自信がなくなる
  • 役立たずで無力だと感じたり、絶望感を感じる
  • 通常より怒りっぽくなる
  • 自殺を考える

思考

  • 肯定的または希望的に考えられない
  • 簡単な決断すら困難を感じる
  • 集中することが難しい

身体

  • 食欲が失せ体重が減る
  • 寝付きが悪い
  • 通常よりも早く目覚める
  • 非常に疲れを感じる
  • 便秘
  • 性欲の減退

行動

  • 日常の雑事であっても何かを始めたり、あるいは終わらせることが困難である
  • よく泣く-あるいは、泣きたいのに泣くことができない
  • 他人との接触を避ける

 

躁状態

躁状態では過度に元気になり、活力を感じて、楽観的になります。またその状態が激しいため、思考や判断に影響を及ぼします。自分自身について奇妙なことを信じ、判断力をなくし、害になるような恥ずかしい行動をとります。そして、時には危険なふるまいをすることもあります。

うつ状態と同様、日常生活でうまく対処することが困難になったり、不可能になったりすることがあります。躁状態期は人間関係および仕事に影響を及ぼすおそれがあります。症状がそれほど過度ではないときには、「軽躁状態」とよばれます。

もしあなたが躁状態になった場合は、自分が以下の状態であることに気がつくでしょう:

感情

  • とても楽しくて興奮している
  • あなたの楽観的な見方に共感しない他者にいら立つ
  • 通常よりも自分は重要だと感じる

思考

  • 新しく面白い考えに満ちている
  • 一つの考えからすぐに別の考えに移る
  • 他者には聞こえない声が聞こえる

身体

  • 活力にあふれている
  • 眠ることができない、または眠りたくないと思う
  • 性欲が高まる

行動

  • 誇大で非現実的な計画を練る
  • 非常に活動的で素早く動き回る
  • 変わった行動をする
  • 非常に早く話す。他者はあなたの話を理解するのが難しいと感じることもある
  • 衝動的に奇妙な決断をしてしまい、時々悲惨な結果となる
  • やたらと出費をする
  • 他人に慣れ慣れしくなる、または見境もなく批判的になる
  • 全般的に心理的な抑制が効かなくなる

あなたが初回の躁病エピソードにあるとき、友人、家族あるいは同僚が気づいていても、あなたは問題を認識することができません。誰かがそのことを指摘しようとすると、あなたはむしろ気分を害します。日々の問題や他者の感情が次第に理解できなくなります。

 

精神病症状

躁病またはうつ病エピソードが極めて深刻になった場合は、精神病症状が起こることがあります。
  • 躁病エピソード-重要な使命に関わっているとか、特別な力や能力があるなどと、自分自身についての誇大な思い込みをもつ傾向があります。
  • うつ病エピソード-自分は誰よりも罪深く、最悪な人間であり、または自分が存在すらしていないなどと考えます。

これらの通常とは異なる信念に加え、幻覚を経験することがあるかもしれません。何かが聞こえたり、臭ったり、何かを感じたりあるいは見たりしても、そこにはその感覚を説明できるもの(あるいは人)は存在しません。

 

エピソードが収まってから次のエピソードまでの間

以前は双極性障害がある場合、気分の変動の間には通常状態に戻ると考えられていました。現在は、双極性障害の人々の多くは、そうではないことがわかっています。気分が良さそうにみえる時でも、軽度の抑うつ症状と思考の問題が続いていることがあります。

双極性障害になると、しばらくの間車の運転を中断することになるかもしれません。詳しくは DVLA (Driver and Vehicle Licensing Agency;運転者および車両免許局)のホームページをご覧ください。

 

治療

気分の変化をコントロールして本格的な躁病エピソードまたはうつ病エピソードまでには至らないようにするため、試せることがいくつかあります。これらは下記に述べていきます。それでも、依然として薬物治療が必要となりますが、それは次のような理由によります:
  • 気分を安定させる(予防法)
  • 躁病エピソードまたはうつ病エピソードを治療する

 

気分を安定させるための薬物療法

気分安定剤はいくつかあり、それらのほとんどがてんかんの治療にも使用されています。しかし、リチウム(自然に存在する塩)が最初に効果が認められた気分安定剤です。

 

リチウム

リチウムは気分安定剤として50年間使用されています。しかし、それがどのような作用で効果があるのかは、まだ分かっていません。躁病およびうつ病エピソードの両方を治療するために使用されます。

リチウムを用いる治療の開始は、精神科医が担当しなければなりません。体内のリチウム値を適正なレベルにすることが難しく、値が低すぎれば効果がなく、値が高すぎれば中毒を生じます。そのため、適正な用量を服用していることを確認するために、最初の数週間は血液検査を定期的に受ける必要があります。ひとたび用量が安定すれば、かかりつけ医があなたに合った量のリチウムを処方し、定期的な血液検査をおこないます。

血液中のリチウム量は体内の水分量の変化に影響されやすいのです。脱水症状に陥った場合、体内のリチウム値は上昇し、副作用、あるいはさらに中毒症状が起こりやすくなります。そのため、以下のことが重要となります:

  • 水分を十分に取ること。気温が高い時、あるいは活動中にはより多くの水を飲むこと
  • お茶やコーヒーには注意すること。これらの飲み物は尿中に排出される水分量を増加させます

リチウムの効果が十分に現れるまでには、3ヶ月かそれ以上かかります。この期間に気分変動が続いたとしても、リチウムの服用を続けることが大切です。

副作用
リチウムによる治療を始めてから数週間で副作用が出現します。いらいらする不快な症状ですが、時間が経つにつれてそれらの症状はたいてい消えていくか、あるいは改善します。

副作用には以下の症状が含まれます:

  • 喉の渇き
  • 普段よりも尿の量が多くなる
  • 体重増加

まれに見られる副作用は以下の通りです:

  • 視界がぼやける
  • 軽度の筋力低下
  • 不定期に起こる下痢
  • 手の細かい震え
  • やや体調が悪いと感じる

通常、これらの症状はリチウムの用量を減らすことで改善します。

下記の症状が起こる場合、リチウム値が高すぎるかもしれません。気づいたら、ただちに医師に連絡してください:

  • 強い喉の渇き
  • ひどい下痢または嘔吐
  • 手および足の明らかな震え
  • 筋肉の軽い痙攣
  • ぼんやりとしたり混乱したりする

血液検査
血液中のリチウム値が適切であることを確認するために、最初は数週間ごとに血液検査を受ける必要があります。リチウムを服用する間は血液検査を受けなければいけませんが、最初の数カ月が経過した後は検査の回数はそれほど頻繁ではなくなります。

リチウムを長期にわたって服用すると、腎臓または甲状腺に影響を与えるおそれがあります。これらの臓器が適切に機能していることを確認するために、数ヶ月ごとに血液検査を受けることが賢明です。もし何か問題があればリチウムの服用を止めて、代わりの治療法を考慮する必要があるかもしれません。

自己管理

  • バランスのとれた食事をすること。
  • 糖分が含まれない飲み物を定期的に飲むこと。体内の塩分と水分のバランスを保つのに役立ちます。
  • 規則正しく食事をすること。これも体内の水分バランスを保つのに役立ちます。
  • お茶、コーヒーあるいはコーラに含まれるカフェインに注意すること。カフェインは利尿作用があるため、体内のリチウム量が乱れることがあります。

その他の気分安定剤

リチウム以外にも有効な気分安定剤があります。
  • 抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウムは、リチウムと同等の効果があると考えられていますが、断言できるほどの科学的根拠はまだ十分でありません。出産可能な年齢の女性に処方すべきではありません。
  • オランザピン(抗精神病薬)
  • カルバマゼピンやラモトリジンもまた、人によっては効果があります。

最善の治療法はどれですか?

医師と話し合う必要がありますが、一般的原則は以下の通りです:
  • リチウム、バルプロ酸ナトリウムおよびオランザピンは通常、長期治療の場合に勧められます。
  • より早く頻繁に気分の変動が起こる場合には、カルバマゼピンがいいかもしれません。
  • 双極性Ⅱ型障害にはラモトリジンを提案されるかもしれません。
  • 時には、多剤併用療法が必要になる場合もあります。

治療法は本人に効果のあるものを選びます。ある人に適するものが別の人には適さないこともありますが、より良い科学的根拠がある治療法を最初に試すことが賢明です。

 

薬物治療を受けないとどうなりますか?

リチウムは再発率を30~40%まで減少させますが、これまでに躁病エピソード)の回数が多いほど、躁病エピソードがまた起こる可能性は高まります。
 
 過去の躁病エピソードの回数翌年に躁病エピソードが起こる可能性
   リチウムを服用しない場合     リチウムを服用する場合
 1-2回 10% (100人中10人) 6-7% (100人中6-7人)
 3-4回 20% (100人中20人) 12% (100人中12人)
 5回以上 40% (100人中40人)  26% (100人中26人) 


年を取るにつれても、エピソードの再発率はほとんど変わりません。長期間調子が良くても、エピソードが再発する危険性は依然としてあります。

 

気分安定剤の服用を開始する時期

一回のエピソードがあっただけでは、再発の可能性を予測することは困難です。エピソードが極めて重症で悪影響が大きいものでなければ、この段階で治療を開始することは望まれないかもしれません。
 
二回目のエピソードを経験した場合は、さらにエピソードが起こる可能性が極めて高くなります。そのため、ほとんどの精神科医は通常この時点で気分安定剤を勧めます。

 

気分安定剤はどれくらい長く続ければよいのでしょうか?

双極性障害のエピソードが一回起こった後、少なくとも2年間は気分安定剤を服用する必要があります。さらに、以下のことが当てはまる場合には最長で5年間の継続的な服用が必要です:
  • 過去に再発を頻繁に経験した
  • 精神病症状を伴うエピソードがある
  • アルコールまたは薬物乱用
  • 家庭または職場での継続的なストレス 

厄介な気分変動が続く場合は、より長く治療を継続する必要があります。
 
気分安定剤に関するさらなる情報については、「躁病の薬物療法(Medications for Mania)」のリーフレットを参照してください。

 

心理療法

躁病エピソードまたはうつ病エピソードの間の期間には、心理療法が役立ちます。この治療法では6ヶ月から9カ月にわたり一時間のセッションが約16回行われます。
 
心理療法には含まれるものは以下の通りです:
  • 心理教育 – 双極性障害についてもっとよく知る
  • 気分の観察 – 気分が変動しているときに調子を持ち直すために役立ちます
  • 気分対策 – 本格的な躁病またはうつ病エピソードへと気分を変動させないために役立ちます
  • 一般的な対処能力を向上させるための支援
  • うつ病に対する認知行動療法 (CBT)

(CBTに関する詳細な情報については、「認知行動療法 (Cognitive Behavioural Therapy) 」のリーフレットを参照してください。)

 

妊娠

精神科医と妊娠の計画について話し合う必要があります。合わせて妊娠中および出産後の最初の数カ月間の気分の管理方法について、前もって準備することができます。

妊娠している場合は、リチウム服用を中止するかどうかを精神科医と話し合いましょう。他の気分安定剤に比べ、リチウムは妊娠中に服用しても安全ですが、あなたがうつ病あるいは躁病になる危険性にも考慮しつつ、胎児への危険性を慎重に検討する必要があります。胎児への危険性は妊娠3ヶ月目までの期間が最大となります。妊娠26週目以降のリチウム服用は安全ですが、リチウムを服用している場合は授乳をしてはいけません。
 
妊娠中はすべての関係者(産科医、助産師、保健師、かかりつけ医、精神科医そして地域精神科専門看護師)が互いに連絡を取り合う必要があります。

 

躁病エピソードまたはうつ病エピソードの治療

うつ病エピソード

  • うつ病エピソードが中程度である場合、医師はSSRI系抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を勧めるでしょう。
  • すでにリチウムまたはバルプロ酸ナトリウムを服用している場合は、クエチアピンの追加が役立つ時もあります。
  • 最近躁病エピソードがあったり、または急速交代型双極性障害がある場合は、抗うつ薬によって躁転するおそれがあります。抗うつ薬は使用せず、気分安定剤の用量を増やす方がより安全です。
  • 抗うつ薬によっては気分が改善するまでに2-6週間かかりますが、多くは睡眠と食欲が最初に改善されます。抗うつ薬は抑うつが改善された後少なくとも8週間は継続して服用する必要があり、その後は用量をゆっくりと減らしながら中止することを検討します。
  • 抗うつ薬を服用していて抑うつエピソードを繰り返す一方で躁病エピソードへは一度も交代しない場合、さらにエピソードが発生することを予防するために気分安定剤と抗うつ薬の服用を続けることができます。
  • 躁病エピソードを経験したことがある場合は、抗うつ薬を長期間服用し続けてはいけません。

 

躁病および混合性うつ病エピソード

すべての抗うつ薬を中止しなければいけません。躁病エピソードの治療によく処方される薬は、リチウム、バルプロ酸ナトリウム、オランザピン、クエチアピンまたはリスペリドンです。

ひとたび治療を始めると、症状はだいたい数日間のうちに改善されますが、完全に回復するまでには数週間かかります。この種類の治療を受けている間に運転をしたい場合は医師に確認しなければいけません。

 

気分の変動を止める-自分でできること

自己観察
自分の気分が変動しコントロールできなくなる兆候を認識する方法を学び、早い時期に支援が得られるようにします。本格的なエピソード発生や入院を避けることができるかもしれません。気分日記をつけると、生活の中で役立つものとそうでないものとを認識できるようになります。

知識
自分の病気について、またどのような支援があるのかをできる限り調べるようにしましょう。このリーフレットの終わりに詳細な情報源が記載されています。支援グループおよび役に立つ団体の項(support groups and caring organisations)を参照してください。

ストレス
特にストレスがかかる状況を避けるようにしてください。躁病またはうつ病エピソードを誘発するおそれがあります。しかしすべてのストレスを避けることは不可能なので、上手にストレスに対処する方法を学ぶと役立つでしょう。CDやDVDを使ったリラクゼーションの練習や、リラクゼーション・グループに参加したり、あるいは臨床心理士からアドバイスを得ることもできます。

人間関係

  • うつ病または躁病は友人や家族に大きな負担をもたらすおそれがあります。エピソードがおさまった後に彼らとの関係を修復する必要があるかもしれません。
  • あなたが心から信頼できる人が少なくとも一人いると助けになります。調子が良い時には自分にとって重要な人たちに病気について説明するようにしましょう。彼らはあなたに起こることや、あなたにしてあげられることを理解する必要があります。

活動
生活、仕事、余暇そして家族や友人との関係のバランスを取るようにしましょう。忙しすぎると、躁病エピソードを引き起こす恐れがあります。

リラックスしてくつろげる十分な時間を確保するようにしましょう。仕事に就いていない場合は、精神疾患とはまったく関係のない分野の講座を受けたりボランティア活動を行ったりすることを考えてみましょう。

運動
20分程度の適度な運動を一週間に3回行うことは気分を改善するのに役立つようです。

楽しみ
生活に有意義で楽しめることを定期的に行うようにしましょう。

服薬を続けましょう
医師が安全と考えるよりも前に服薬を中止したくなるかもしれません。そうすると-残念なことに、さらなる気分変動が引き起こされることがよくあります。あなたの調子が良いときに、服薬中止について医師や家族とよく話し合いましょう。

治療法について自分の意見を伝えましょう
双極性障害で入院したことがあれば、医師および家族と一緒に「事前指示書」を書いて、再発した場合にはどのような治療を希望するか伝えることができます。

 

かかりつけ医から何をしてもらうことができますか?(イングランドおよびウェールズのみ)

双極性障害の治療としてリチウムまたはその他の薬を服用している場合は、かかりつけ医はあなたの健康診断を毎年おこなうことになっています。この検査に含まれるものは以下の通りです:
  • 血圧
  • 体重
  • 喫煙および飲酒
  • 血糖値
  • 脂質レベル-40歳以上のすべての人が対象となります。

リチウム値の検査は3~6ヶ月おきに行う必要があり、甲状腺および腎臓機能の血液検査は少なくとも15ヶ月おきに行う必要があります。

 

家族や友人へのアドバイス

躁病またはうつ病は家族や友人にとってとても辛く、心身ともに疲れてしまうことがあります。

 

気分エピソードへの対処
-  うつ病

重度の抑うつ状態の人に言葉をかけるのは難しいものです。抑うつ状態の人はすべてのことを否定的にとらえます。そしてあなたに何をしてほしいのかをうまく話せないこともあります。彼らは引きこもってしまったり、怒りっぽくなったりしますが、同時にあなたの支援を必要としています。不安を感じている一方で、アドバイスを受け入れることを嫌がったり、または受け入れることができないこともあります。できるかぎり辛抱強く思いやりを持つようにしてみましょう。

 

-  躁病

躁的気分の始まりの時期は、幸福そうで、活動的、そして外向的なので、パーティや白熱した議論において盛り上げ役のように見えるでしょう。しかし、そのような状況で興奮するとさらに気分が高揚する傾向があります。したがって、そのような状況を避けるよう仕向けてください。支援を得るように、あるいは病気の自己ヘルプについて情報を得るように説得してみましょう。

実践面での支援が非常に重要です。そして大いに感謝されます。あなたの身内の人や友人が自身のケアを十分にできるようにしましょう。

 

大切な人が健康を維持できるように支援する

気分エピソードの合間には、双極性障害についてもっとよく知るようにしましょう。友人や大切な人がかかりつけ医や精神科医の診察を受ける際、一緒についていくことが助けになるかもしれません。

 

自分自身が元気でいる

あなた自身の元気を取り戻すための場所と時間を持ちましょう。ひとりで過ごす時間、あるいは必要とするサポートをしてくれる信頼できる友人とともに過ごす時間を持つようにしましょう。あなたの身内や友人が入院する必要がある場合は、訪問するのを誰かと分担しましょう。疲れすぎていないほうが、友人や身内を上手にサポートすることができます。

 

緊急事態への対処

  • 重度の躁病では、当人は敵意を持ち疑り深くなりすぐに怒り出して、罵ったり暴力をふるうようになります。
  • 重度の抑うつでは、当人は自殺を考え始めることがあります。

もし以下の状態であることに気がついたならば、ただちに医療支援を受けてください:

  • 食べものや水分をとらず、自分のことをほとんど構わなくなっている
  •  自分自身または他人を危険にさらすような行動をとる
  •  自傷行為や自殺することを口にする

そのような非常事態に備えて、信頼できる専門家の名前(電話番号も)を控えておきましょう。短期間の入院が必要となることがあります。

 

子どもの世話

躁病または抑うつになった場合、一時的に自分の子どもの世話を適切に行えなくなる可能性があります。あなたの気分が優れない間は、配偶者(パートナー)、またはその他の家族が子どもの世話をする必要があるでしょう。あなたの調子が良いときに、あらかじめ計画を立てておくと役立ちます。

あなたの調子が良くないとき、子どもが不安を感じたり、混乱していることに気付くかもしれません。子どもが自分の悩みを言葉で表現できない場合、幼児は手がかかるようになったり甘えるようになり、もう少し年長の子どもだとその他の方法で表現するでしょう。

子どもたちが負担に感じている問題に対し、周囲の大人たちが気を配り、思いやりを示し、いつも励ましつつ冷静に対応してくれると子供達は救われます。なぜ親がいつもと違うように振る舞っているのか、子どもたちが理解できるようにしてあげましょう。子どもからの質問に対しては、わかりやすい言葉で事実に則して落ち着いて答える必要があります。普段の日常生活を維持できると、子どもたちは気が楽になります。

 

子どもに双極性障害を説明する

年長の子どもは、自分が親の病気を引き起こしてしまった、自分のせいだと心配するかもしれません。彼らが悪いのではないのだと安心させるだけではなく、彼らにもできることがあると伝える必要があります。年長の子どもが病気の親の介護をしている際は、特に深い理解や実践的な支援が必要となります。
 
病を抱える親と向き合う子供達を支援するための詳細な情報は、「親の精神疾患-子どもへの問題(Parental mental illness - the problems for children)」のリーフレットに記載されています。

支援グループおよび関連の団体

Bipolar UK
電話番号:08456 340 540(英国内)
E-mail アドレス: mdf@mdf.org.uk.
双極性障害の人々やその友人、および介護者のための支援、アドバイスおよび情報を提供しています。

Bipolar Fellowship Scotland
電話番号: 0141 560 2050.(英国内・スコットランド地方)
双極性障害に苦しむ人々や彼らをケアするすべての人々への情報、支援およびアドバイスを提供しています。スコットランドにおいてセルフ・ヘルプを推進したり、双極性障害と同団体についての情報提供や教育を行っています。

Depression Alliance
電話番号: 0845 123 23 20(英国内)
E-mail アドレス: information@depressionalliance.org.
うつ病の人たちと、彼らを助けたい家族に情報や支援、および理解を提供しています。うつ病のための自助グループや情報提供、そしてうつ病に関する認識を高める活動をしています。

Journeys - towards recovery from depression
電話番号: 029 2069 2891(英国内・ウェールズ地方)
E-mail アドレス: info@journeysonline.org.uk
うつ病を患う人々の支援を行うウェールズの団体

Samaritans
電話番号: 08457 90 90 90 (英国)(アイルランド1850 60 90 90);
E-mail アドレス: jo@samaritans.org.
心配ごとがあったり、動揺していたり、自殺を考えている人々のために、電話や電子メールを通じて1日24時間体制で秘密厳守の中立的な支援を行っています。

参考文献

Goodwin, G.M. (2003) Evidence-based guidelines for treating Bipolar Disorder: recommendations from The British Association for Psychopharmacology. Journal of Psychopharmacology, 17; 149-173.
 
Geddes, J. (2003) Bipolar disorder. Evidence Based Mental Health, 6 (4): 101-2.
 
Morriss, R. (2004). The early warning symptom intervention for patients with bipolar affective disorder. Advances in Psychiatric Treatment, 10: 18 - 26.
 
NICE Guideline 38: Bipolar Disorder: the management of bipolar disorder in adults, children and adolescents, in primary and secondary care (2006) National Collaborating Centre for Mental Health: London.
 

Translated by Mariya Sasaki, Yumi Wheeler and Dr Nozomi Akanuma. May 2013.


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