児童や若者のうつ病について
Depression in children and young people: information for young people
免責事項
このリーフレットは、親、教師、青少年に向けた「こころの健康と成長」のシリーズの一つです。どのようにうつ状態を理解するか、そしてうつ状態に苦しんでいる人々のために何ができるかを解説しています。あなた自身が苦しんでいる場合にも役立ちます。
15歳のセイラの場合
私は15歳でした。医者に連れて行かれました。気分が落ち込んでいて、自分を切り付けて傷つけるようになっていたからです。自分では何も意識していませんでした。切り付けるとと気分がよくなったし、ちょっとやってみる、くらいの軽い気持ちでした。よく話すようになってから、自分がどんなに変わってしまったかやっと気づきました。以前は、いつもじゃないにしても楽しいと感じていました。今では、前のように感じることができなかったのです。
学校の先生とはうまくいっていませんでした。先生たちに、きちんと勉強していないと言われると腹が立ちました。勉強はしようとしていたのに、ただ8年生や9年生のときのようには良くできなかったのです。お医者さんは、それは私の集中力のせいかもしれないと言いました。そんなことは考えてもみませんでした。自分の頭が悪くなっただけだと思ってました。
お医者さんに他にもいろいろなことを聞かれ、ようやく見えてきました。ちゃんと眠れなかったし、サッカーをしに出かけようという気にもなれませんでした。サッカーなんてつまらないと言っていたけれど、気分が良くなってくるとまたサッカーをやるようになったので、つまらないと言っていたのは全部うつのせいだったと思います。家族のことも同じでした。つまり、今だっていつもうまくいっているわけじゃなくて、時にはうんざりすることもあるけれど、私がうつだった時にはいつも言い争いをしていました。家族とは話ができなかったし、イライラさせられていました。
家族のほうから私に話をしてくるようになって、ようやく変わり始めました。振り返ってみると、私がどれだけ落ち込んでいたのかよくわかりました。
うつ病とは?
たいていの子供も大人も、時には気分が落ちこんだり、「ブルー」になったりします。悲しい気分になることは、ストレスやつらい経験をかかえたときの正常な反応です。しかし、この感情がずっと続き、いつもの自分ではなくなったり、普段の生活にも支障がでるようになってきた場合は病気の状態といえます。この疾患を「うつ病」といいます。
どれくらいよくあるのですか?
うつ病は通常10代で、とくに成人に近い時期に始まります。12歳未満の子供にはまれです。誰にでも起こる可能性がありますが、男子に比べて女子に多く見られます。
自分がうつ状態にあるとどのようにわかるのでしょう?
うつ病になると、次のような症状が見られます:
- 感情的になったりいらいらしたり、すぐに取り乱したり、「短気」になったり泣きたくなります。
- ひきこもりがちになり、友達や家族を避けたり、いつもやっていることができなくなります。
- 自分を悪く思ったり罪悪感を感じ、自分を非難したり責めたり、自己嫌悪におちいったりします。
- 不幸に感じたり惨めに思ったり、孤独を感じることが多くなります。
- 絶望的に感じ、死んでしまいたくなります。
- 物事に集中することが難しくなります。
- 自分の外見をかまわなくなります。
- 睡眠のリズムが乱れ、少ししか眠れなかったり、ずっと寝ていたりします。
- 疲れていると感じます。
- 食べることに興味がなくなったり、あまり食べなかったり、食べ過ぎたりします。
- 体調が悪くなり、痛みを感じることがあります。頭痛や胃痛などです。
- 自分の容姿が悪いと感じます。
これらの兆候のすべて、あるいはほとんどがあてはまり、そして長く続いている場合、あなたはうつ病であるかもしれません。自分がどのように感じているかを説明するのは難しいでしょう。
うつ病の原因は?
- たいていの場合、うつ病は特にこれといった特定の原因で起こるより、次のようなことがいくつか重なって起こります。
- ある出来事や自己の経験が引き金になることもあります。これには家庭の崩壊、愛する人を失うこと、無視、いじめ、身体の病気などが含まれます。
- 人生の中で多くの変化があまりに急に生じた場合にも引き金になりうるでしょう。
- 多くのストレスを抱えていて、同じ悩みを分かり合える人がいなかったり、支えが得られない人はよりなりやすいでしょう。
- 遺伝的要因もあり、家族にうつの人がいるかもしれません。すでに体の病気や障害がある場合、うつ病が起こりやすくなります。
- うつ病は、脳の中で感情をコントロールする部分における化学物質の変化と関係があると考えられています。
気分が落ち込んでいるときはどうしたらよいのでしょうか?
いくつかのことを自分で試してみて、気分がよくなるかどうかみてみましょう。
あなたが信頼し、あなたを理解してくれると思える人に話してみるだけで、気持ちが楽になることがあります。また、問題に対する現実的な解決策を見つけやすくしてくれることもあります。たとえば、学校の宿題ができないと感じている場合には、先生や家族に話して宿題を終わらせられるよう、サポートをしてもらうことが役に立ちます。
試してみる方法をいくつか挙げておきます:
- 助けてくれる人に話しましょう。
- 体を動かして、健康的な食生活を送りましょう。
- できるだけ活動的に忙しく過ごしましょう。あまり楽しめないと感じても、とにかくやってみましょう。
- 日中はとくに、自分の部屋にこもってひとりで過ごさないようにしましょう。
- 自分にストレスをかけ過ぎないように、楽しみや余暇の時間をとりましょう。
どこで助けを得ることができますか?
うつ病の人を助けるためにいろいろなことができます。
親や先生がしてあげられること
うつ病にかかっていると、自分の今の状態を恥ずかしく思ったり、やましく感じたりするかもしれません。具合が悪いことを家族や他の人たちに伝えると、仮病だと思われたり、あるい自分のせいだと責められそうで、心配かもしれません。それに、自分の気持ちをうまく言葉にするのは、とても難しいことです。けれど、同じような状況に置かれた多くの青少年は、いったん話をしてわかってもらえることで、気が楽になっています。適切な助けやサポートを得るためには、あなたがどう感じているかを伝えることが重要です。
誰かに相談した方がよい場合
若者の多くは、支えと理解を得ることで自然に回復します。うつ病が長引き、いろいろなことに支障が出ている場合には、治療を試みることが大切です。気分が落ち込んでいると、時には薬物やお酒で忘れようと考えてみたり、実際に試してみるかもしれません。まったく希望が見えなくなり、何もかも投げ出してどこかへ行ってしまいたいと感じるかもしれませんが、そういう行動は状況を悪くするだけです。もしこのようなことがあった場合には、誰かに話して助けを得ることが大切です。
どこで助けが得られますか?
かかりつけ医や場合によっては学校の保健室の先生が、どのような助けがあるのかアドバイスしてくれたり、地域の児童・思春期専門の精神保健サービス(CAMHS; Child and Adolescent Mental Health Service)に紹介してくれます。こうした専門家たちがあなたや家族と面談して、あなたに合った治療法を一緒に考えてくれます。
うつ病にはどんな治療法があるのですか?
うつ病がそれほど重くなくて、学校に行ったり普段のことができているようであれば、対話療法のような心理療法が役に立つでしょう。
認知行動療法(Conitive Behavioural Thearapy; CBT)は心理療法のひとつで、うつ病の治療に効果があります。
その他の有効な対話療法には、家族療法や対人関係療法があります。どちらもCAMHSを通じて受けられるでしょう。うつ病が重かったり長引いたりする場合は、話をすることも難しいでしょう。こんな場合には、薬物療法が落ち込んだ気分を改善するのに役立ちます。
この状態には「抗うつ薬」と呼ばれる薬が用いられます。児童・思春期専門の精神科医による念入りな診療後に処方されます。薬を処方された場合には、飲み始める前に健康診断を受け、薬を飲み始めてからは、定期的に診察を受ける必要があります。
薬は通常なら数ヶ月、場合によってはもっと長い期間服用を続けます。薬を処方された場合は、処方された通り(飲む量や時間)に、服用することが大事です。
この病気で苦しんでいるのはあなただけでないことを忘れないでください。うつ病はよくある病気で、回復します。
さらに知りたい方のために
Campaign against living miserable – 若者を対象にしたキャンペーンと慈善事業ですが、助けやサポートを必要とする人は誰にでも対応しています。ヘルプライン、雑誌、オンラインのコミュニティがあります。
ChildLine – 子どものための無料の電話サービスを提供しています。相談の秘密は厳守します。電話番号: 0800 1111.
Depression Alliance – うつ病とその症状に関して、また、セルフ・ヘルプのグループについてのサポートや情報を提供しています。
Epic friends – こころの健康の問題はよくあることです。このウェブサイトは、こころの問題で苦しんでいるかもしれない友人を手助けするためのものです。
YoungMinds – 子どものこころの健康の問題に関する情報とアドバイスを提供しています。
Rethink Mental Illness – こころの健康の問題についての慈善団体で、若者のための部門があります。
その他の情報
Changing Minds: Mental Health: What it is, What to do, Where to go? – このCDは13-17 歳を対象にして作られています。聴覚、視覚、文書による、広範囲に渡る情報が含まれています。さらに詳しく調べるための資料も用意されています。うつ病の項もあります。
参考文献
Rutter, M. & Taylor, E. (eds) (2002) 'Child and Adolescent Psychiatry' (4th edn). London: Blackwell.
NICE (2005) ‘Depression in children and young people’ Clinical Guidelines CG28.
Translated by Sachiko Kino, Yumi Wheeler and Dr Nozomi Akanuma. July 2013