強迫性障害

Obsessive Compulsive Disorder

このリーフレットについて

このリーフレットは、強迫観念や強迫行為の問題を抱える方、その家族、友人、そしてこの問題についてより深く知りたい方のためにあります。

ここでは次のようなことを説明しています。
  • 強迫性障害になるとどうなるのか
  • 自分を助けるために自分でできること
  • どのような助けが得られるのか
  • どこで援助を得られるのか
  • 他の情報源
  • 研究資料および治療方針の参考文献

はじめに

「彼はものすごくこだわりのあるサッカーファンだ。」「彼女は靴に取り付かれたようだ。」「彼は嘘をつかずにはいられない。」他人からみるとその行動の理由がわからないことを何度も繰り返す人にたいして、こういった表現がよく使われます。このような行動は、通常はたいした問題ではなく、職業によってはむしろ役立つことさえあります。しかし、ある行動や考えに繰り返し取り付かれてしまう状態は、生活に支障を来たすこともあるでしょう。

もしも次のようなことがある場合、あなたは強迫性障害(OCD)かもしれません。
  • 嫌でたまらない事柄が、いくら追い払おうとしても心に浮かんでくる。
  • 繰り返し何かを触ったり数えたり、あるいは何度も洗うなどの同じ行動を繰り返さずにはいられない。

強迫性障害になるとどのようになるのですか?

リズの場合

私は他人から何かが感染することを恐れています。病原菌を防ぐために家のすべてのものを消毒することに何時間も費やします。そして一日に何度も手を洗い、できるかぎり外出しないようにします。夫や子供たちが帰宅したときには、どこへ行っていたのか詳細に尋ねます。病院のようなどこか危険な場所に行っていたときの用心のためです。またすべての衣類を脱いでもらい、徹底的に洗います。心の一部では、こんな恐怖心はばかげていると理解しています。家族はこのことに嫌気がさしていますが、これは長年にわたって続いており、私は今止めることができないのです。

ジョンの場合

私は何も間違ったことがないか確認するために、一日中時間を費やしています。朝家を出るのに1時間かかります。調理器具のようなすべての電化製品を止めたかどうか、すべての窓の戸締りをしたか確信が持てないためです。それからガスの火が消えていることを5回確認します、しかしそれが大丈夫と感じられない場合は、私は全行程を繰り返さなくてはなりません。結局私はパートナーに、とにかく再度すべてを確認するよう頼みます。職場では、間違いをした場合の用心としてすべてのことを数回見返すので、いつも同僚に遅れをとっています。確認をしなければ、とても心配で耐えられません。ばかげているとわかっているのですが、何か恐ろしいことが起こったとしたら自分のせいだと思ってしまうのです。

ドーンの場合

私は幼い娘を傷つけてしまうことを恐れています。そんなことはしたくないと自分ではわかっています、しかし悪い考えが頭に浮かび続けるのです。自分が自制心を失ってナイフで彼女を刺してしまう状況が浮かびます。これを忘れ去る唯一の方法は祈ることです。そうすれば「私は彼女をとても愛していることはわかっている」というように、良いことを考えることができます。その後はいつも少しの間は良い気分になれますが、恐ろしい想像がまた頭に浮かんできてしまうのです。家の中のすべての鋭利なものやナイフを隠してあります。自分のことを「こんなことを考えるなんて恐ろしい母親だ。気が狂ってってしまうに違いない」と思います。

強迫性障害には3つの主な点があります:
  1. あなたを不安にさせる思考(強迫観念)
  2. 不安感
  3. 不安感を減らすための行動(強迫行為)

あなたが思うこと(強迫観念)
  • 思考:不愉快な、ぞっとする、ばちあたりな単語や短い言葉や韻文。それらについて考えたくなくても、考えずにはいられません。自分がバイ菌、汚れ、HIVウイルス、またはがんに侵されるかもしれないと心配したり、自分の不注意のために誰かを傷つけるかもしれないと心配したりします。
  • 心の中に浮かぶ情景:家族が亡くなっている場面、あなたがまったくあなたらしくない暴力的なことや性的なことをしているところ(誰かを刺したり虐待したり、あるいは浮気をする)が思い浮かびます。強迫観念を持った人々が暴力的になったり、そのような観念に基づいた行動をしないことはわかっています。
  • 疑い:自分が誰かに対して事故や不幸を引き起こすかもしれないと何時間も考えます。誰かを車ではねてしまうかもしれないとか、ドアや窓の鍵を開けたままにしているかもしれないと心配することもあります。
  • 反芻(すう):あることをすべきかどうか、いつまでも考え続けてしまうため、簡単な決断もできなくなります。
  • 完璧主義:他の人たちが気にしないようなことでも、物事がきっちり正しい順序でなかったり、バランスが悪かったり、正しい場所になかったりすると気になって仕方がありません。たとえば、本が本棚に正確に並べられていない場合などです。

不安感(感情)
  • 緊張や、不安、恐れ、罪悪感、嫌悪感、憂うつを感じます。
  • 強迫行動や儀式を実行したときは気分が良くなりますが、長続きしません。

あなたの行動(強迫行為)
  • 強迫的な思考を修正する:強迫観念を「中和する」ための思考を考えます。例えば数を数える、祈る、何度も特別な言葉をいうことなどです。そうすると、悪い事が起こるのを防いでくれるかのように感じます。こういったことが、あなたを悩ます不愉快な思考やイメージを追い払う方法になる場合もあります。
  • 儀式:頻繁に手を洗ったり、物事を本当にゆっくりと注意深く行ったり、対象や行動を特別な方法で調整したりします。こういったことに大変長い時間をかけるので、どこへ行くにも何か有用なことをするにも長時間かかります。
  • 確認:自分の体が汚染されていないか、電化製品のスイッチを切ったか、家の鍵をかけたか、旅行の行程が安全か確認します。
  • 回避:心配なことを思い出させるものは何でも回避します。あなたは特定の物に触ったり、ある場所へ行ったり、危険を冒したり、責任を引き受けることを避けます。例えば、鋭利なナイフがあることを知っているために、台所を避けるかもしれません。
  • 溜め込み:無用で使い古されたものを溜め込みます。何も捨てることができません。
  • 再保証:あなたは他の人にすべてのことが大丈夫か繰り返し尋ねます。

 

強迫性障害はどのくらいの頻度で起きますか?

約50人に1人の方が人生のある時期に強迫性障害になります。男女比は同程度です。英国では約100万人の人がこの障害を持っていることになります。有名人で強迫性障害を持っている人としては、生物学者のチャールズ・ダーウィン、看護師の先駆者フローレンス・ナイチンゲール、「Pilgrim’s Progress」の著者ジョン・バニヤンがいます。

「強迫的に」賭け事をしたり、食べたり飲んだりすることは、強迫性障害でしょうか?

違います。「強迫行為の(compulsive)」および「強迫観念の(obsessive)」という言葉は、賭け事をする人、飲酒をする人、違法薬物を使用する人、運動をしすぎる人に対してもときどき使われます。しかし、これらの行動は楽しめるものです。強迫性障害における強迫行為は楽しいものではありません。それはいつも嫌な要求や負担と感じるものなのです。

強迫性障害になるとどのような悪影響があるのでしょうか?

影響は様々ですが、強迫性障害にわずらわされずにすめば、仕事、交友関係、家族との生活すべてがより生産的で充足したものになります。重度の強迫性障害があると、規則正しく仕事をすることや家族生活に加わること、家族とうまくやっていくことさえも難しくなります。特に、あなたが家族を儀式に巻き込もうとすると、家族は不快に思うこともあるでしょう。

強迫性障害の人は「気が狂っている」のですか?

いいえ、そんなことはありません。しかし、もしもあなたが他人に気が狂っていると思われると考えるならば、援助を求めることに気が進まないかもしれません。自制心を失うことを恐れているのかもしれませんが、強迫性障害の方々がそうはならないことはわかっています。

強迫性障害と似た状態

  • 身体醜形障害、または「自分が醜いと想像して苦悩する状態」。顔や体の一部が醜悪だと確信し、鏡の前で何時間も費やしてチェックしたり隠そうとしたりします。人前に出られなくなることもあります。
  • 髪の毛や眉毛を引抜くことへの強い衝動(抜毛癖)。
  • がんのような深刻な身体の病気になるという恐れ(心気症)。
  • トゥレット症候群(突然大きな声で言葉を発したり、制御できない体のピクつきが起こる)の人は、しばしば強迫性障害を併発します。
  • 例えばアスペルガー症候群などの自閉症をもつ子どもは、強迫性障害をもっているように見えます。なぜなら、彼らは物事が同じであることが好きであり、不安を和らげるために同じことを何度も繰り返したりするからです。

強迫性障害はいつ始まるのですか?

多くの子どもたちが軽度の強迫行為をします。おもちゃを几帳面に整理したり、歩道の割れ目を踏みつけるのを避けたりします。これは、たいていは成長するにつれてなくなります。大人の強迫性障害は、通常、10代または20代の前半に始まります。症状は時間とともに現れたり消えたりしますが、本人はしばしば強迫性障害が始まってから何年も経つまで助けを求めようとしません。

助けや治療を求めなかった場合はどうなるのですか?

軽度の強迫性障害をもつ人の多くは、治療しなくても改善しますが、中等度や重度の強迫性障害の人はそうではありません。もっとも、症状がなくなったように見えるときもあるかもしれませんが、人によっては徐々に悪化し、あるいはストレスが加わったり気分が沈んだりしたときに症状が悪化します。通常は治療が有効です。

強迫性障害の原因は何ですか?

遺伝子:強迫性障害は時に遺伝します。このため家族内で起こることがあります。
ストレス:3人のうち1人は、ストレスのかかる生活上の出来事によって発症します。
生活の変化:突然より大きな責任を持たなくてはならなくなった場合に起こります。例えば、思春期、子供の誕生、あるいは新しい仕事などです。
脳の変化:はっきりとわかっているわけではありませんが、研究によると、強迫性障害の症状がかなりの期間続いているのであれば、脳の中でセロトニンと呼ばれる化学物質(5HTとしても知られています)の不均衡が起こっていると考えられています。
性格:かなりのきれい好きで、非常に注意深く、几帳面な場合は、より強迫性障害になりやすいかもしれません。これらの資質はふつうは有用ですが、もしも度が過ぎた場合、強迫性障害に至ることもあります。
考え方:誰もが時々奇妙な、または苦悩を与えるような思考やイメージを心の中に浮かべることがあります。例えば、「あの車の前に立ったらどうだろう?」、「自分の子供を傷つけるかもしれない。」といった考えです。多くの人は速やかにこういった考えを捨て、日常生活に戻ります。ところが、道徳感と責任感が特に強いと、そのような考えを持つことすら恐ろしく感じてしまうかもしれません。そういう考えがよみがえってくることを警戒しますが、そうすることでより一層よみがえりやすくなります。

どうして強迫性障害が続くのですか?

驚くべきことに、自分を救おうとして行うことが実際には強迫性障害を継続させてしまいます。
  • 不愉快な考えを心の中から追い出そうとすること。これは通常、その考えを呼び戻してしまうことにしかなりません。恥ずかしかった過去の出来事について1分間考えないようにしてみてください。おそらくそれ以外のことを考えるのも難しくなります。
  • 儀式、再確認、回避および再保証を求めることによって、不安は少しの間軽くなります。こうすれば何か恐ろしいことが起こるのを防ぐかもしれない、と感じる場合は特にそうです。しかしそうするたびに、それが悪い事が起こるのを止めてくれる、という信念をより強くしてしまうのです。そして、さらにそのことを実行せざるを得ない、という衝動を感じます。この繰り返しです。
  • 不安を中和させる思考。他の思考(例えば、10数える)やイメージ(例えば、生きていて健康な人を思い浮かべる)によって、不安を引き起こす思考を「修正する」ことに時間を費やしているのならば、それを止めて、不安感が消え去るのを待ちます。

自分でできること

  • 厄介な思考に自ら触れてしまいましょう。
  • 奇妙に聞こえるかも知れませんが、それは思考を制御しやすくする方法のひとつなのです。思考を録音して聞き返したり、書き出してから読み返してみます。不安が軽くなるまで、これを毎日約30分間規則正しく行う必要があります。
  • 強迫行為には抵抗し、強迫観念には抵抗しないでください。
  • 不安を抑えるための飲酒はやめましょう。
  • 思考が信仰や宗教に関する心配事で、これが強迫性障害の問題である場合は宗教指導者に相談し、それが本当に強迫性障害によるものなのかどうか、はっきりさせましょう。
  • このリーフレットの最後に記載されている支援団体やウェブサイトのどれかひとつに連絡してみましょう。
  • このリーフレットの最後に記載されているセルフ・ヘルプ用の本を一冊買ってみましょう。

治療を受ける

認知行動療法(CBT)

強迫性障害の治療には2つのタイプの認知行動療法があります。暴露・反応妨止法(Exposure and Response Prevention, ERP)認知療法(Cognitive Therapy, CT)です。

暴露・反応妨止法(ERP)

これは強迫行為と不安とがお互いに強め合うことを止める方法です。ストレスのかかる状況に長くいると、徐々にそれに慣れて不安がなくなることがわかっています。したがって、徐々に恐れる状況に向き合い(暴露)、いつもの強迫的儀式である確認や掃除などはやらずに(反応妨止)、そして不安が消え去るのを待ちます。

通常、段階を踏んで少しずつ行うほうがより効果的です。
  • 今恐れていることや避けたいことのリストを作ります。
  • 最も恐れている状況や思考を一番上に、恐れの一番少ないものを一番下に書きます。
  • そして、一覧の最後から始め、一度に一つずつ取り組んでいきます。前の段階を克服するまでは次に進まないでください。

少なくとも1〜2週間は毎日これを行う必要があります。毎回、不安が最も強い時の半分以下になるまで続けます。初めは約30〜60分間かかります。どれだけ不安に感じているか、例えば0(まったく不安なし)から10(非常に不安)までの間で5分ごとに評価して記録すると、役に立つかもしれません。不安がどのように強まり、そのあと減っていくのか分かるでしょう。

いくつかの段階はセラピストと一緒に行うことになるかもしれませんが、大部分の時間はあなた一人で、自分が快適と感じるペースで行います。すべての不安を除く必要はなく、よりうまく対処できるところまで減れば十分だということを覚えておきましょう。不安について、次のことを忘れないでください。

  • 不愉快ですが、あなたに危害は与えません。
  • 結局はなくなります。
  • 定期的に練習することで、対処が容易になります。
暴露反応妨害法を実施するには、主に二つの方法があります。
セルフ・ヘルプ用のガイド
本、テープ、ビデオ、DVDやコンピュータ・ソフトウェアの指導に従います。また、アドバイスやサポートを求めて専門家と連絡を取ります。しかしその頻度は多くはありません。あなたの強迫性障害が軽度で、かつ、セルフ・ヘルプをやっていくことに自信がある場合、この方法は適しています。

定期的に専門家から直接、個人または集団で指示を受ける。
これは対面または電話になるでしょう。通常、1週間または2週間に一回から始め、一回あたり45~60分間になります。初めは計10時間までの指導がすすめられますが、もっと時間が必要になる場合もあります。

暴露・反応妨害法の例:
ジョンは毎日、出社するのに予定通りの時刻に家を出ることができませんでした。なぜなら、家でとても多くのことを確認しなければならないからです。それぞれの確認を5回ずつしなければ、家が全焼してしまうかもしれない、または強盗に入られるかもしれないと心配でした。彼は自分が確認していることを取り組みやすいことから順に一覧にしました。すると、このようになりました。
  1. 料理用コンロ(もっとも恐れが少ない)
  2. 電気ポット
  3. ガスの火
  4. ドア(もっとも恐れている)
彼はステップ1から始めました。料理用コンロのスイッチが切れていることを数回確認するかわりに、一度だけ確認しました(暴露)。最初は、彼はとても不安に感じました。彼は再度確認するために戻ることを止めました。その上、妻にすべてのことを確認するよう頼まないこと、そして家は安全であると安心できるよう妻に尋ねることもしないようにしました(反応妨止)。2週間のうちに、彼の不安は徐々に少なくなっていきました。そして彼は第2ステップ(電気ポット)へ進みました。ついに、彼はどんな確認の儀式もせずに家を出ることができ、時間通りに職場に着くことができるようになりました。

認知療法(CT)

認知療法は心理学的治療法で、あなたの思考を取り除こうと試みる代わりに、思考に対する反応を変えることを手助けします。これは、厄介な強迫的思考を持ちながらも、気持ちを楽にするための儀式や行動がまったくない場合に有用です。強迫性障害を克服するために、暴露・反応妨害法(ERP)と併用することもできます。次のようなことを対象にします。
  • 非現実的な自己批判の思考。例えば次のようなことです。
    • 思考に重みを置きすぎる
    • 何か悪い事が起こる可能性を過大評価する
    • 自分がコントロールできる範囲外のことに対しても、悪いことが起こると責任を感じる
    • 大事な人の生活におけるすべての危険を取り除こうとする
    • 不愉快でじゃまな思考

認知療法は以下のような効果をもたらします:
異なる視点を得る:

誰でも時々奇妙なことを考えるものです。しかしそれだけのことです。あなたは悪い人ではなく、悪い事が起ころうとしているわけでもありません。そのような思考を振り払おうとしても、うまくいかないでしょう。そういう時は気を楽にしましょう。軽い好奇心や楽しみを持ちながら思考を扱いましょう。もしも、より不愉快な思考が侵入してきたら、抵抗せずに起こるに任せましょう。そしてまた、同じように考えてください。

個々の思考を見つめる
  • この考えが真実か、または真実でないという証拠は何ですか?
  • この思考はどのような役に立ちますか?他にどんな見方がありますか?
  • 最も悪い/最も良い/最も現実的な結果は何ですか?
  • 友人がこのような問題を抱えていたら、どんなアドバイスをしますか?もしそれが自分自身へのアドバイスとは異なるのであれば、あなたは何が特別なのですか?
認知療法のセラピストは、あなたが変えたい考え方はどれかを決める手助けをしてくれます。そしてより現実的でバランスが取れ、有用な新たな考え方を築く手伝いをしてくれます。

セラピストとの面談のほとんどは、あなたの地元のかかりつけ医の診療所、外来クリニック、時には病院で行われます。あなたが家を出ることができない場合には、電話やあなたの自宅で認知療法を行うこともできるかもしれません。資格のあるセラピストは英国認知行動療法協会(British Association of Behavioural and Cognitive Psychotherapies)に登録しています。

抗うつ薬

SSRIという種類の抗うつ薬はあなたがうつ状態でなくとも、強迫観念や強迫行為を減らすことができます。SSRIは中等度から重度の強迫性障害に対し、単独または認知行動療法と一緒に使われます。SSRIでの治療を3か月間続けても効果がなかった場合、次の段階としてSSRIの種類を変えるか、クロミプラミンと呼ばれる抗うつ薬に変更します。

これらの治療はどのくらい効果がありますか?

暴露・反応妨止法(ERP)
暴露・反応妨止法を完了した人の約4人中3人には大きな効果があります。効果があった人のうち約4分の1は将来症状が再発し、追加の治療が必要となります。しかし、約4分の1の人は暴露・反応妨止法を受けることを拒んだり、暴露・反応妨止法を終了できなかったりします。おそらく暴露・反応妨止法に対して恐れがあったり、負担が大きすぎるのでしょう。

薬物療法
約10人のうち6人が薬物療法で改善します。平均で、彼らの症状は半分まで軽減します。治療薬を服用している間は、それが数年間に渡っても強迫性障害の再発は防げます。残念ながら、服薬を止めた人の2人に1人は中止後数か月のうちに症状が再発します。服薬しながら認知行動療法を行っていた場合は、再発はより起こりにくいようです。

薬と心理療法と、どちらの治療が私にとって一番相応しいですか?

暴露・反応妨止法(ERP)は専門家の手助けなしに試すことができ(軽度のOCDの場合)、効果的で不安以外の副作用はありません。一方、多くの熱意と大変な努力が必要です。また、短期間の新たな不安を伴います。

認知行動療法と薬物療法の効果はほぼ同じくらいです。軽度の強迫性障害の場合、認知行動療法のみで効果があります。

中等度の強迫性障害の場合、初めに認知行動療法(専門家と10時間までのセッションをおこなう)、または抗うつ薬(12週間)のどちらかを選択することができます。もしも改善がみられない場合、両方の治療を併用するべきです。英国国内のいくつかの地域では、セラピストに見てもらうのに数か月待つ必要があるかもしれません。

重度の強迫性障害に対する最も良い治療法は、初めから抗うつ薬と認知行動療法を一緒に行うことでしょう。強迫性障害が中等度以上で、暴露・反応防止法や強迫性障害そのものからくる不安に向き合えないと感じる場合には、抗うつ薬単独による治療も一つの選択肢です。抗うつ薬単独は10人のうち約6人に有効ですが、3人は将来強迫性障害が再発する可能性があります。再発は、暴露・反応妨止法では4人に1人だったのが、抗うつ薬単独では2 人に1人となります。薬は約1年間続けて服薬する必要があり、妊娠中や授乳中の人に相応しい治療ではありません。

さらに必要な情報を提供してくれるかかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。あなたが信頼する友人や家族に相談したいと思うかもしれません。

治療に効果がなかった場合は?

かかりつけ医はあなたを専門家チームに紹介することができます。精神科医、心理士、看護師、ソーシャル・ワーカー、作業療法士などのチームです。彼らは以下のことを提案するでしょう。
  • 暴露・反応妨止法や抗うつ薬に、認知療法を追加する。
  • 同時に2種類の強迫性障害治療薬を使用する(例えば、クロミプラミンとシタロプラム)。
  • 不安障害やうつ病、アルコール乱用など、他の状態を治療する。
  • 抗精神病薬を追加する。
  • あなたの家族や介護者と協力し、援助やアドバイスをする
ひとりで生活するのが困難であれば、自立できるよう手助けしてくれる人々がいる居住型施設の利用を勧められるかもしれません。

治療のために入院する必要がありますか?

ほとんどの人は、かかりつけ医の診療所や病院に付属するクリニックでの診療で改善します。以下のような場合にのみ、精神科病棟への入院が提案されます。
  • 症状が非常に重度で、あなたが自分の世話をきちんとできない場合や、自殺を考えている場合。
  • 他の重大な心の健康上の問題を抱えている場合。例えば摂食障害、統合失調症、精神病または重度のうつ病など。
  • 強迫性障害の症状によって、治療のためにクリニックへ行けない場合。

どの治療が強迫性障害には無効ですか?

次のような治療法のうちのいくつかは、他の病気には効果があるかもしれませんが、強迫性障害の治療に関しては確固とした科学的根拠はありません。
  • 効果がありそうに思えるかもしれませんが―補完的療法または代替療法。例えば催眠、ホメオパシー、鍼治療、ハーブ薬
  • 他のタイプの抗うつ薬(うつ病を併発していない場合)。
  • 睡眠薬および精神安定薬(ゾピクロン、ジアゼパム、および他のベンゾジアゼピン系薬剤)の2週間以上の服用。これらの薬には常習性があります。
  • 強迫性障害以外に二人の関係に問題がなければ、カップル療法または夫婦療法は効果がありません。ただ、パートナーや家族が強迫性障害や手助けする方法についてより深く知ることは有用です。
  • カウンセリングと精神分析的精神療法。人によっては、子供時代や過去の経験について考えることは有用です。しかし科学的根拠によれば、恐れに向き合うことのほうが、恐れについて話すよりも効果があります。

家族や友人への助言

  • 強迫性障害の人の行動はとても苛立たしいかもしれません。彼らは故意に気難しく奇妙にふるまったりしているのではないことを覚えておいてください。自分なりに精一杯対処しているのです。
  • 助けが必要な状況であることを本人が受け入れるのに、しばらく時間がかかる場合もあるでしょう。強迫性障害について読んだり専門家に相談するよう勧めましょう。
  • 強迫性障害に関する情報をさらに増やしてください。
    • 本人の強迫行為に対して異なる行動をすることで、あなたは暴露療法の手助けができるかもしれません彼らが恐ろしい状況に取り組むことを励ましましょう。
    • 儀式や確認に加わることに対して「いいえ」と言いましょう。
    • 物事がうまくいっていると安易に安心させないでください。
  • 暴力的になることを強迫的に恐れている人が、実際に暴力的になる心配はしないでください。そのようなことは、ほどんど起こりません。
  • かかりつけ医や精神科医、または他の専門家との面談に一緒に行ってもいいか聞いてください。

認知行動療法を開始するまでに長期間待つ場合は?

今のところ、認知行動療法の訓練を受けたNHSの専門家は不足しています。いくつかの地域では、治療を開始するまでに数か月間待たなければならないかもしれません。もしも「自分でできること」の項で述べた治療が有効でない場合、取りあえずは抗うつ薬の投与を始めてもよいかもしれません。

支援団体

OCD Action
電話ヘルプラインおよび情報提供:0845 390 6232;Eメール:info@ocdaction.org.uk
強迫性障害、身体醜形障害、強迫性皮膚摘み取り症、抜毛症の人々のための代表的で全国的な慈善団体。

OCD-UK
電話:0845 120 3778;Eメール:admin@ocduk.org
OCD-UKは、強迫性障害の人々とともに、強迫性障害の人々のために独立して活動する代表的で全国的な慈善団体です。

No Panic
ヘルプライン:0808 808 0545;電話01952 590 005;Eメール:ceo@nopanic.org.uk
不安の問題を抱える人々のための協会で、本人やその家族と介護者たちを支援します。電話のヘルプラインとカウンセリング、立ち寄りセンター、認知行動療法セルフ・ヘルプ教材(本、ビデオ、テープ)などを提供しています。

Aware
ヘルプライン:+353 1890 303302;電話:+353 1661 721;Eメール:info@aware.ie
アイルランドと北アイルランドで、うつ病の人たちに情報提供や援助をする団体。

Scottish Association for Mental Health
電話:0141 568 7000;Eメール:enquire@samh.org.uk
スコットランドの精神保健の慈善団体で、こころの健康の問題をもつ人たちやホームレス、依存症の人、およびその他の社会から疎外されている人たちの援助をするために活動しています。

さらなる情報

NHS ダイレクト
看護師により運営されている24時間対応可能な電話ヘルプラインで、個人の秘密を厳守しながら、健康管理のアドバイスや情報提供をしています。電話:0845 4647

英国認知行動療法協会(BABCP)
電話:0161 797 4484;ファックス:0161 797 2670;Eメール:babcp@babcp.com
NHS内および外部で認知行動療法を行っている、異なる専門職のスタッフから成る協会。治療の適切な基準を作成・管理し、情報やリーフレットを提供し、NHS以外で治療をおこなっている会員メンバーの登録名簿を管理しています。

コンピュータ・プログラムによっておこなう認知行動療法

不安、抑うつ、恐怖症、パニック障害および強迫性障害のセルフ・ヘルプ向けの情報は、認知行動療法についてのリーフレット、または下記のリンクをご覧ください。
www.nice.org.uk/guidance/index.jsp?action=byID&o=11568
www.anxietyuk.org.uk/
www.ccbt.co.uk

参考図書


参考文献

  • Core interventions in the treatment of obsessive-compulsive disorder and body dysmorphic disorder. Clinical guidelines 31 (Quick reference guide), National Institute for Health & Clinical Excellence, November 2005.
  • Blenkiron P. Treatment of obsessive compulsive disorder (review). Continuing Professional Development Bulletin in Psychiatry, (2001), vol 2 (2), pages 68-72.

Translated by Wakako Okeya, Yumi Wheeler and Dr Nozomi Akanuma. January 2014.

 

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