子どもや若者の強迫性障害(OCD)
Obsessive compulsive disorder (OCD) in children and young people
Below is a Japanese translation of our information resource on obsessive compulsive disorder (OCD) in children and young people. You can also view our other Japanese translations.
免責事項
この情報では、子どもや若者のOCDがなぜ起こるのか、また受けられる支援について見ていきます。
OCDとは何か?
OCDは、日常生活に影響を及ぼす強迫観念や強迫行為を経験する不安障害の一種です。OCDによって、家から出ることや特定の状況におかれること、あるいは以前は楽しんでいた活動で時間を過ごすことが困難になる場合があります。
「強迫的(obsessive)」という語がよく使用されますが、それが意味するものは人によって異なる可能性があります。OCDという言葉は、非常にきれい好きであること、あるいは非常に特殊な日課があることを言い表すのに使われることもあります。しかし、単にきれい好きや几帳面なだけではOCDだとはいえません。
OCDの人々にとって、これらの習慣は不愉快で動揺を引き起こし、生活に大きな悪影響をもたらす可能性があります。
OCDの症状は?
強迫観念とは、自分では望んでいないのに心に絶えず湧き上がってくる思考、イメージ、または衝動をいいます。強迫観念は、悩ましく、不愉快か、苦悩を与える場合があります。
強迫観念の一例として、実際はそうでないにもかかわらず、自分の手が汚れているという考えが挙げられます。OCDでは、人によって次のようなさまざまな強迫観念があります。
- 自分は不潔である、または病気を拡散するかもしれないと考える
- 自分は人を傷つけるかもしれない、または傷つけていると考える
- 自分、または他の誰かに何か悪いことが起こるかもしれないと考える
- 自分は病気かもしれないと考える
強迫観念は、しばしば不安障害や不快感につながることがあり、「それを正したい」という衝動に駆られるかもしれません。そこで湧き起こってくるのが強迫行為です。
自分では望んでいないのに、自分の「強迫観念」を制御する必要があると感じることを強迫行為といいます。こうした強迫行為は、自分で止めることが難しい場合があります。
強迫行為が、何かを何度も繰り返して行うことを意味することも少なくありません。これは「儀式的行為」としても知られています。強迫行為をすることで、起こるかもしれないと恐れていることについて、不安を止めたり、軽くしたりできるかのように感じられるかもしれません。例えば、明かりを20回つけたり消したりするのは、そうしないと何か悪いことが起こるかもしれないと恐れているからです。
OCDの人には、人によってさまざまな強迫行為があります。そうした例には次のものがあります。
- 洗う
- 確認する
- 触る
- ものを整理する、整頓する、並べる
- 数える
- 特定のことを考える
強迫行為がある場合、強迫観念を引き起こす可能性のある状況を自分で避けようとしている可能性があります。例えば、汚れに関する強迫観念があるために、ドアノブを使った後に手を頻繁に洗わなければならないといった場合、自分の手でドアを開けることを避けることがあるかもしれません。
OCDの原因は?
OCDはよくあるもので、年齢、人種、民族、階級、宗教、性別を問わず誰でも罹患する可能性があります。
OCDの発症に影響する要因は多くあります。
- 遺伝子-OCDは複雑な障害です。ある人がOCDを発症するかどうかには、様々な遺伝的危険因子が関与していることが研究により示されています。親族にOCDの人がいる人は、そうでない人よりもOCDを発症する可能性が高いと言われています。
- ストレス-誰かの死や病気など、ストレスがかかる人生の大きな出来事が、OCDを引き起こす可能性があります。これは、OCDを発症した人のおよそ3人に1人または2人に該当します。
- 人生の変化-人生の大きな出来事が、OCD発症のきっかけとなる場合があります。例えば、思春期、転居、転校などです。
- 脳の変化-OCDの症状が短期間のものではない場合、セロトニンという化学物質の脳内の働きが変化している可能性があると研究者は考えています。これらの変化によってOCDが引き起こされるのか、あるいはOCDが原因でこれらの変化が起こされるのかは分かっていません。
- 性格-きれい好きで、几帳面で、順序立てて物事を行うのが好きで、かつ高い基準を持つ人は、OCDを発症する可能性が高まるかもしれません。通常、そういった性質は役に立つものですが、極端になりすぎるとOCDにつながってしまう場合があります。
- 考え方-私たちのほぼ誰もが、時として奇妙な、あるいは苦悩に満ちた考えや、イメージを心に描くことがあります。例えば、道が混んでいる時に、実際にそうしたいとは思っていなくても、車の前に飛び出すことを考えたりします。ほとんどの人は、このような考えをすぐに捨て、生活を続けています。しかし、特に高い倫理観や責任感を持っている人は、このような考えを持つことさえ恐ろしいと感じるかもしれません。そのため、そうした考えが再び出てこないように気を付けるのですが、それが結果としてその考えを引き寄せてしまうことになるのです。
OCDの治療方法
OCDの治療には、心理療法や薬剤が利用できます。OCDについて支援を受けるには、幅広い能力の指導を受けて、OCDによって生じる不安障害を管理し、OCDに支配されてしまうのではなく、OCDを制御するための戦略を学ぶことになります。
認知行動療法(CBT)
OCDにとって有効な心理療法またはトークセラピーの1つが、認知行動療法(CBT)です。これは、自分の考え方や行動を変えることで、気分を改善し、人生に折り合いをつけることを助ける治療法 です。
曝露反応妨害法(ERP)
ERPは、強迫行為と不安が互いに強化し合うのを止めるための認知行動療法です。
OCDの人は、特定の状況を避けたり、強迫行為を実行することが、強迫観念を遠ざけたり、それが実際に起こることを阻止するのに役に立つと考えることが少なくありません。しかし、それで不安が消えることはありません。
ERPでは、セラピストが自分の恐れやこれまで避けてきたことと向き合う手助けをしてくれます。その際、セラピストは普段しがちな反応を止める手助けをしてくれます。
例えば、自分は汚い、病気を拡散するかもしれないという強迫観念がある場合、頻繁に手を洗うことによって、その強迫観念をうち消そうとするかもしれません。セラピストは、そこまで手を洗うのではなく、その強迫観念と向き合うよう求めてくるかもしれません。
時には、セラピー中に身近な家族や友人の関与をセラピストから提案される場合もあります。
薬剤
OCDが重度の場合や、セラピーを受けることに苦労している場合は、薬剤が必要となる場合があります。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)は、OCDの治療に効果のある抗うつ薬の一種です。通常、この薬剤は認知行動療法と併用して投与されます。薬剤による治療は、心理療法の効果を最大限に高めるのに役立ちます。
支援を得る方法
OCDは恐ろしく感じられますし、中には自分が「おかしくなった」とか「コントロールを失った」ように感じる人もいます。OCDは他のものと同じメンタルヘルス疾患であり、援助やサポートが得られることを覚えておきましょう。早期に支援を受ければ受けるほど、改善も早期に始まります。OCDを抱える大人の多くが、若い頃に自分の問題に対して支援が得られず、今になってそれが受けられることを望んでいます。
親御さん、介護者、友人、先生など、信頼できる人に相談してください。一般開業医(GP)やスクールナースは、児童・思春期メンタルヘルスサービス(CAMHS)の専門家の援助を得られるよう、アドバイスや手助けをしてくれます。彼らは、あなたが経験している困難を理解するためにあなたと話をします。
自分の強迫観念や強迫行動を詳しく話すことはつらいことや恥ずかしいことに感じられる可能性はあります。しかし、できるだけ詳しく話をすることは、セラピストや精神科医から適切な治療を受けることに役立つでしょう。メンタルヘルスの専門家は、あなたが抱く考えや感情によってあなたが「悪い」人間になってしまうわけではなく、それらがOCDのせいであることを理解するでしょう。
OCDによって生活に深刻な影響が出ている場合は、他の専門家の助けも必要となる場合があります。例えば、学校や大学で普通の生活に戻れるようにするための教員の支援などです。
ジョン(18歳)の体験談
「それは、本当に自分でも気づかないうちに始まりました。家族のうちの誰かが死んでしまうのではないかと不安になったので、心配になった時は3度足を踏み鳴らして幸運を祈り、気持ちを静めるようにしました。これは、夜寝る前にもする必要がありました。それも1度ではなく、3回を3度です」
「テレビで病院内の細菌に関する番組を観てから、状態が悪化し始めました。父や母にその話はできませんでした。とても馬鹿げているように思えたからです。私が感染症をうつして、誰かが死ぬのではないかと考えて、常に自分の手を洗っていなければ気が済みませんでした。それは主に自宅でのことでしたが、その後学校で何かをうつされることを恐れるようになりました。
「私は、母に学校の制服を毎日洗濯させていました。母は拒否しようとしましたが、私があまりにも興奮するので降参してしまいました。朝、浴室で何時間も過ごしていたせいで時間通りに学校に到着できなくなり、事態は急迫しました。私は髪を3回洗い、洗う順番も決まっていました。誰かが浴室を使う必要があって中断させられると、最初からやり直さなくてはならなかったのです」
「母が、私に支援を手配してくれました。ロバーツ博士は本当に良い先生で、なぜ私が何かにつけて興奮していたのかを理解してくれました。当時、私は14歳でした。今、私は18歳です。認知行動療法を実践するのは大変でした。自分がなぜそんなに不安になるのかを試行錯誤の中で理解し、試行錯誤の中でそれをコントロールしていかなければならないのです。現在、私は大学に在籍し、自分が希望する課程で学んでいます。私は今でも数えたりしていますが、それを制御できています」
さらなる情報
- エピック・フレンズ(Epic friends)-メンタルヘルスの問題はよくあるものです。このウェブサイトは、精神的に苦しんでいる可能性のある友人を助ける時に役立ちます。
- OCDアクション(OCD Action) - OCDを抱える人々のための全国規模の慈善団体。
- OCDユース(OCD Youth) - OCDの若者によって、OCDの若者のために書かれたウェブサイト。この障害やその治療に関する情報が掲載されています。
- OCD UK - OCD-UKは、OCDによって生活に影響が出ている英国の人々のメンタルヘルスとウェルビーイングの改善を目的とした慈善団体です。
参考文献
クレジット
英国王立精神医学院(Royal College of Psychiatrists)子どもと家族の公共関与編集委員会(Child and Family Public Engagement Editorial Board: CAFPEB)および国立精神衛生協力センター(National Collaborating Centre for Mental Health: NCCMH)が改訂しました。
Bruce Clark博士、Shobha Puttuswamiah博士、Virginia Davies博士、Vasu Balaguru博士に感謝申し上げます。
この資料は、執筆時点で利用可能な最良のエビデンスを反映しています。
ご要望により、この資料のすべての参考文献をご利用いただけます。
発行年月: 2022年8月
閲覧期限: 2025年8月
© 英国王立精神医学院 (Royal College of Psychiatrists)
This translation was produced by CLEAR Global (Aug 2024)