抗うつ薬の中止について
Stopping antidepressants
Below is a Japanese translation of our information resource on stopping antidepressants. You can also view our other Japanese translations.
免責事項
この情報は、抗うつ薬の中止についてより詳しく知りたい方を対象としています。
以下の内容が記載されています。
- 抗うつ薬の中止を検討する理由
- 安全に中止する方法
- 抗うつ薬を中止すると生じうる症状
- それらの症状を回避または軽減する方法
この資料は成人のうつ病に関するNICEガイダンスにおける推奨事項を正確に反映しています。
抗うつ薬とは
抗うつ薬はうつ病、全般性不安障害、強迫性障害 (OCD) などの症状に対して処方される薬です。抗うつ薬が作用する仕組み、処方される理由、もたらす効果と副作用、そして代替療法について、別紙の抗うつ薬に関する資料をご覧ください。
抗うつ薬は通常、症状が消えてからも6か月以上飲み続ける必要があります。ただし、これは医師が定期的に見直して判断します。メンタルヘルス疾患の深刻度が高いか、症状が繰り返し発生している人は、抗うつ薬をより長い期間服用する必要がある場合があります。
抗うつ薬を中止すべきタイミング
抗うつ薬の中止が選択される理由は様々ですが、一例は下記の通りです。
- 抱えていたメンタルヘルスの問題が改善した
- 抗うつ薬が効いていない
- 抗うつ薬で不快な副作用がある
- 抗うつ薬をもう飲みたくない
抗うつ薬を服用しており、上記の内容が1つでも当てはまる場合は主治医に相談しましょう。あなたが抗うつ薬を中止するべきか、またそれを安全に行う方法について一緒に考えてくれます。
抗うつ薬を中止する方法
一般的に、抗うつ薬の服用を突然中止してはいけません。突然中止すると離脱症状を引き起こす場合があり、体調が再度悪化する可能性が高まります。人によって現れる離脱症状はさまざまです。抗うつ薬の種類によっても異なります (付録1を参照)。
多くの人は、数週間から数か月かけて抗うつ薬の量を減らしていってから完全に中止することで、抗うつ薬の服用を徐々にやめることができます。これを「漸減」といいます。離脱症状を経験するリスクを減らしたり、離脱症状が出てもその程度を軽減したりすることができます。
抗うつ薬を中止する際はすべての人が漸減法をとるべきですが、一部の人 (一般に長期間服用していない人) は少ないステップで服用量を減らしていくことができます。
抗うつ薬を短期間服用した後に中止する場合、以下の例のような飲み方をするよう主治医から言われるかもしれません。この例では、現在の用量を2~4週間ごとに約50%減らしていき、少量になったら完全に中止しています。
この早さで服薬量を減らすのが難しく、服用を中止した時に離脱症状が出る場合、さらにゆっくりとしたペースで抗うつ薬を減らしていく必要があります。あなたに合っていて、問題なく用量を減らしていける方法で行うのが重要です。
この資料では、離脱症状を防ぐ、また離脱症状をなるべく軽減することを目的としています。あなたに一番合った中止方法を見つけられるよう、この資料を主治医の元に持参しましょう。
抗うつ薬を中止すると生じうる症状とその深刻度
NICEガイドラインでは、離脱症状の程度が軽く、特別な支援を必要とすることなく、比較的短期間で症状が消える人がいることが説明されています。一方で、より深刻な症状を長期間 (数か月または1年以上) 経験する人もいます。
現時点で、深刻な離脱症状が生じる人を予測できる仕組みはありません。
抗うつ薬の離脱症状
以下の症状が1つでも現れたら主治医に相談しましょう。
次のような症状に気づくことがあります。
- 不安感が現れたり消えたりし、時に激しくなる
- 寝つきが悪く、鮮明な夢や怖い夢を見る
- 気分が落ちこみ、何に対しても興味を持ったり楽しんだりすることができない
- 身体的に調子が悪い感覚がある
- 気分が急激に変わる
- 怒り、不眠、疲労、体の動きのぎこちなさ、頭痛
- 腕、足、頭に電気ショックのような感覚がある。この感覚は時に「シャンビリ感」とも呼ばれ、頭を傾けると悪化することがあります
- 起きていることが現実ではないと感じる (現実感喪失)、または頭に「綿が詰まっている」ように感じる
- 集中力の低下
- 自殺願望
- 吐き気
- めまい (軽いことが多いが、人の助けを借りないと立ち上がれないほど重い場合もある)
- 気持ちが落ち着かずじっとしていられない (アカシジア)
他に報告されている症状の一覧は付録2を参照してください。
抗うつ薬の離脱症状を引き起こす原因
まだ十分に解明されていない点が多いです。セロトニンやノルアドレナリンなど、脳内の化学物質である「神経伝達物質」が影響しています。神経伝達物質は神経の末端で作用することで神経細胞間の情報伝達を可能にします。抗うつ薬は、脳の神経細胞と神経細胞の間や、身体や消化管全体を走る神経において、これらの化学物質のレベルを上昇させると考えられています。脳と身体はこのようなレベルの上昇に時間をかけて適応していっていると思われます。
抗うつ薬をあまりに早くやめてしまうと、脳と身体では元の状態に再適応するための時間が必要になります。神経伝達物質のレベルが突然低下すると、脳がその変化に適応するまでの間、離脱症状が発生すると考えられています。変化が緩やかであればあるほど、症状は軽くなり、より耐えられるものとなるはずです。あるいは、症状がまったく出ないかもしれません。
これが、通常は抗うつ薬を徐々にやめていくのが最善である理由です。
抗うつ薬の離脱症状の影響を受ける人
抗うつ薬を服用した人の3分の1から半分は、何らかの症状をさまざまな深刻度で経験します。現在の研究では、このような症状になる人を予測することはできません。
高用量を長期間服用すると、リスクが大きくなるようです。しかし、ほんのわずかな期間しか抗うつ薬を服用していない場合でも起こり得ます。また、服用している抗うつ薬の種類にもよります。抗うつ薬の服用を急にやめたり、用量をすぐに減らしたりしたりすると、これらの症状が出る (また、それらが悪化する) 可能性は高くなります。
離脱症状と、うつ病や不安障害の再発を見分ける方法
離脱症状の一部は、抗うつ薬の服用を始める前にあった症状と似ているように感じられるときがあります。気分の落ち込みや睡眠困難がうつ病の症状のように感じられる場合もあります。パニックになりそうな気分は、離脱症状によくあるもので、不安障害でも起こる場合があります。この場合は主治医に相談するべきです。離脱症状を軽減するため、一時的に服用量を増やし、その後さらにゆっくりと服用量を減らす必要があるかもしれません。
離脱症状が出ている場合でも抗うつ薬は中止できますが、その場合、さらにゆっくりと減らす必要がある場合があります。「抗うつ薬を中止する時期と方法」の項をご確認ください。
ご本人や主治医が、離脱症状が出ているのか、あるいは不安障害やうつ病の再発なのかを見分ける方法はいくつかあります。
症状が始まったら
離脱症状は、薬剤を減らしたりやめたりするとすぐに始まるのが普通です。これは、抗うつ薬によって1~2日、あるいは1回服用しなかっただけでも発生する可能性があります。通常は2~3日経ってから始まり、その後悪化します。
うつ病または不安障害の再発は通常もっと時間を要し、数週間や数か月の場合が多いです。フルオキセチンなどの一部の抗うつ薬は、体外に排出されるまで長い時間がかかります。そのため、これらの薬剤の場合、服薬を止めたり減らしたりしてから数日または数か月後に症状が始まるとこともあります。そのため、症状が離脱症状によるものなのか、元の不安障害やうつ病の症状が再発したものなのかを見分けるのがより難しくなります。
他の抗うつ薬でも、中止後数週間経ってから離脱症状が生じた報告があります。この理由は完全には分かっていません。
症状の種類
離脱症状の中には、不安障害やうつ病だった頃には経験し得ないものがあります。例えば「電気ショック」や「シャンビリ感」、あるいはこれまで経験したことのないような、もっと微妙な感覚などがあります。「いままでこんな風に感じたことはない」、あるいは「いつもの抑うつとは違う」と本人が説明することも少なくありません。
抗うつ薬の再開後、症状が治まるまでに必要な時間
離脱症状は通常、抗うつ薬を再開してすぐに (数日、もしくは数時間で) 改善するのが普通です。これは、再発した不安障害やうつ病を抗うつ薬で緩和するのに通常数週間かかるのに比べると、はるかに早いです。
抗うつ薬に中毒性はあるのでしょうか?
抗うつ薬を中止すると不快な離脱症状が出るが、服用を再開するとそれが治まることがあります。
これは、自分が抗うつ薬の中毒になり、服用をやめたいと思ってもやめられないかのように感じられるかもしれません。これは「中毒」状態とは少し異なります。
一般的に、中毒とは以下を意味します。
- 薬物を使いたいという衝動や渇望を感じる
- 薬物を使うことに対する制御を失う
- 使用すると、歓び、あるいは「高揚感」を経験する
中毒はアルコール類、ニコチン、ベンゾジアゼピンなどの物質で発生する場合があります。
抗うつ薬の場合、服用をやめることは難しい場合がありますが、これは正確には身体的依存とされています。
「身体的依存」という用語は、中毒と混同されてきました。身体的依存とは、物質や薬剤の存在に身体が順応していることを意味します。
それがなくなると、身体はそれを「欲しがる」ため、耐性や離脱症状が生じるのです。依存を形成させるために薬物が「高揚感」を生じさせる必要はありません。
抗うつ薬を中止する時期と方法
抗うつ薬を服用すべき期間は、それが処方された理由や、以前にそれを服用したことがあるかによります。抗うつ薬の中止を開始、終了すべきタイミングについては、主治医に相談してください。
次のような要素のバランスを考慮する必要があるでしょう。
- 不安障害またはうつ病の症状の緩和など、抗うつ薬から得られるメリット
上記を次の要素と比較します。
- この薬を長い期間使用した後に生じ得る問題。これらには、体重増加などの副作用の増加が含まれることがあります。人によっては、時間が経つにつれて抗うつ薬が効かなくなってくるように感じることもあります。
中止する時期の合意が主治医とあなたの間で取れたら、主治医が漸減計画の作成を助けてくれるでしょう。この計画の長さは人によって違います。
2~3週間しか抗うつ薬を飲んでいないのであれば、1か月程度で減薬や中止ができる可能性があります。たとえ離脱症状が軽い (またはまったくない) としても、少なくとも4週間をかけるのが最善です。
抗うつ薬を数か月、あるいは数年服用している場合は、さらに時間をかけて漸減する必要があります (自分にとって最適なペースにします)。通常、これは数か月以上の期間になります。過去に離脱症状を経験したことがある場合も、徐々に用量を減らしていくのが最善です。減薬の量は通常、用量の減少とともに少なくなります。人によっては中止する前に、元の用量の2%という、非常に少ない量にまで下げる必要があります。
離脱症状が出ても、抗うつ薬を中止できないというわけではないことを忘れないでください。ただし、以下が必要となります。
- 漸減の速度をさらに落とす
- 減薬の量を減らす
- 期間を長くする
ごくまれに抗うつ薬が重度の副作用を引き起こした場合は、漸減せず、すぐに中止する必要があります。このようなことが起こった場合は、直ちに主治医の診察を受けてください。
徐々に減薬する方法
徐々に減薬を行うための一般的なアドバイスを以下にまとめています。ただし、主治医に相談して、適切な調剤や用量を処方してもらうことがもっとも望ましいです。特別な要件をお持ちの場合、主治医が薬剤師と調整して、あなたが必要としている処方にしてくれるでしょう。
数日間で服薬を中止しようとしないでください。ほとんどの場合、体内の薬物の量が変動し、離脱症状が起こる可能性が高くなります。フルオキセチンは抗うつ薬より長く体内に留まるので、1日おきに服薬することもできます。これを行うべきかどうかは、主治医に相談する必要があります。
試験的に普段の用量の4分の1 (25%) または半分 (50%) を減らすことから始められる場合があります。新しい用量に適応するため、2週間から4週間は様子を見てください。
不快な症状がまったくなければ、現在の用量のさらに4分の1 (25%) または半分 (50%) の減薬を試します。さらに2週間から4週間空け、必要に応じて用量を減らして様子を見る期間を繰り返します。
最初の減薬、もしくは以降の減薬で不快な症状が出た場合は、減薬を中止してください。直近で快適に感じられた用量に戻し、もう一度試す準備ができたと感じられるまで待ちましょう。これは、10%や5%などさらに少量での減薬を行い、より段階的に漸減する必要があることを意味していることもあります。
抗うつ薬を長期間服用している場合
以下の場合、
- 数か月、またはそれ以上にわたって抗うつ薬を服用している
- 過去に抗うつ薬の減量や中止を試みたときに、不快な離脱症状が出たことがある
- 離脱症状の危険性の高い抗うつ薬を服用している
最初からより段階的な減薬を行うことが最適かもしれません。例えば、当初の用量の20分の1 (5%) または10分の1 (10%) などです。主治医と定期的に話し合い、そのときどきの状況を確認してもらうようにしましょう。
フルオキセチンのような長期間作用型の抗うつ薬は、体内から排出されるまで数週間かかる場合があります (大半は数日しかかかりません)。そのため、用量を減らしてから数日、あるいは数週間してから離脱症状が現れることもあります。離脱症状が始まったかどうかを観察するために、次の減薬の前に少なくとも4週間ほど様子を見ることが推奨されます。
低用量の服用に慣れていた場合も、完全に止めると離脱症状が出ることがあります。そのような場合は、漸減を再開する前に、しばらくの間低用量で服薬を再開する必要があるかもしれません。
抗うつ薬の減量や中止の際に自殺願望や希死念慮が出るようになった場合、それは離脱症状、あるいはうつ病の再発の可能性があります。すぐに主治医に相談してください。恐らく、医師には直近で体調がよかった頃の用量に戻すよう勧められるでしょう。必要な時にすぐに助けを得る方法を知っておくようにしてください。
薬剤の入手について
抗うつ薬の用量を減らす方法は英国内で入手できる錠剤や液剤の用量によります。使用している抗うつ薬が液剤では手に入らない場合、液剤として入手できる類似の抗うつ薬に変更する必要があるかもしれません。あるいは、以下のオプションを選ぶ必要があるかもしれません。主治医や薬剤師が最適な方法を助言してくれるでしょう。
考えられるオプションの1つにテーパリングストリップがあります。これはロール状または帯状のパウチで、毎日服用するための薬剤が少しずつ減らして小分けにされています。これは、英国医薬品医療製品規制庁 (MHRA) の認可は受けていません。つまり、主治医が、代わりに認可された医薬品の使用を判断する可能性があります。
General Medical Council (GMC) によると、医療の専門家は、認可された薬剤の使用を心がけるべきだが、認可された代替品がない場合は未認可の薬剤を使用することができます。
定期的なモニタリングを行うことで、あなたや主治医は問題を素早く認識できるでしょう。ある抗うつ薬から別のものに切り替える必要がある場合はなおさらです。
漸減計画の例
薬剤の漸減を開始する前に、漸減計画について主治医と合意する必要があります。主治医は、安全な漸減方法をアドバイスしてくれるでしょう。
以下は、さまざまな速度での漸減計画の例です。実際の計画では、すべてのステップに従いたくない場合や、その必要がない場合があります。これらすべてに従う必要がある人もいます。
減量の間隔は、離脱症状が消失または改善するまでの期間とします。
人によっては、錠剤のみで抗うつ薬の服用を中止できる場合もあります。離脱症状を経験していて、抗うつ薬を断つのに苦労している場合は、少量の服薬を行うために錠剤と液剤の抗うつ薬を併用する必要があるかもしれません。
液剤を使用する場合は、用量に誤りがないよう、非常に慎重に管理を行う必要があります。錠剤から液剤に移行中の場合は、用量を正しく変換できていることを確認するため、主治医や薬剤師に相談してください。
また、同じ液状の薬剤でも、複数の強さのものがあることにも注意しましょう。例えば、5mg/5mlと1mg/5mlの製剤が提供されている可能性があります。液剤の量に頼らず、服用している用量を慎重にチェックすることが重要です。
例での数量の計算方法
例1では、割合ベースの漸減を用います。これは、各ステップを初期用量ではなく、直近の用量に対する割合として計算することを意味します。具体的には、次のようなものがあります。
- 20mgの薬剤を服用中で、これを25%減量したい場合、20mgの25%、すなわち5mgという計算になります。
- 用量を5mg減らすと、15mgの服用に減量することになります。
- さらに25%減量したい場合は、15mgの25%という計算になります。これは3.75mgです。
- 現在の用量である15mgを、3.75mg減らすことになります。これは11.25mgの服用ということになります。
割合ベースでの減薬では、服用量を減らすたびに、減薬する量を減らしていく必要があります。
例2では、双曲線的漸減を用います。これは、抗うつ薬が脳に及ぼす影響についての理解に基づいています。少ない用量の抗うつ薬は私たちが考えるよりはるかに多くの影響を脳に及ぼすため、漸減は少量でゆっくりと行う必要があります。
双曲線的漸減では、上で説明した単純な割合ベースの漸減と非常に類似した減薬を行います。ただし、これらはいくらか異なっています。例2で提案した用量には、割合ベースの法則に完全には従っていないものもあります。
例1
この例では、現在の用量を2~4週間ごとに約50%減らしていきます。
人によっては、さらに時間をかけて減量する必要があるかもしれません。その場合は例2をご覧ください。
例2
この例では、現在の用量を2~4週間ごとに約10%減らしていきます。この例は双曲線的漸減 (前述) に基づくため、すべてのステップで完全な10%の減量を行うわけではありません。人によっては、さらに時間をかけて減量する必要があるかもしれません。例えば、2~4週間ごとに約5%減量する場合です。
以下のような低用量にするには、錠剤と液剤の抗うつ薬を組み合わせるか、液剤の抗うつ薬だけを使用する必要があります。錠剤の抗うつ薬は、この長さの時間をかけて減量できるような小さい単位で提供されないためです。
本資料では、この進め方の原則についてさらに説明していきます。主治医と相談して、ご自分が安全に漸減を行うための最善の方法を見つけてください。
38ステップの完全な計画については付録3を参照してください。
利用すべき計画
あなたに最適な漸減計画は、次のようなたくさんの要素で決まります。
- 服用している薬剤
- 薬剤を服用してきた期間
- 開始時点の用量
- 現在、またはこれまでの離脱症状の強さ
最も大切なことは、これらの漸減計画は出発点に過ぎず、本人の漸減経験に適合させていく必要があることです。
漸減で問題が発生していない場合
減量でまったく問題が発生していない場合は、漸減計画のスピードを上げることができる場合があります。減薬の間隔を短くするか、ステップを少なくできるかもしれません。これによる、必要以上に長く薬剤を服用しないようにできる場合があります。
離脱症状を経験した場合
あまりにも重度の離脱症状の場合、漸減計画を中止するか、速度を落とす必要があります。これは以下を意味する場合があります。
- 減薬の量を少なくする
- 減薬前に期間をあける
- 上記の両方
よく処方される抗うつ薬について、これら2種類の漸減に向いていると考えられているものをまとめます。この資料の最後にある付録では、さらに多くの例を紹介しています。
例1は、このリソースの最後にある付録1の「中等度、低度、最低度のリスク」列の抗うつ薬を服用している人に適した出発点になり得ます。
- シタロプラム
- エスシタロプラム
- フルボキサミン
- セルトラリン
- トラゾドン
- フルオキセチン
- アミトリプチリン
例2は、付録1の「最高レベルのリスク」列の抗うつ薬を服用している人に適した出発点になり得ます。
- デュロキセチン
- ミルタザピン
- パロキセチン
- ベンラファキシン
これは、離脱症状のリスクが高ければ高いほど、ゆっくりと漸減を行う必要があるためです。
ただし、どの例に従うかは個人のニーズによります。選択した計画に何が何でも固執するのではなく、経験する離脱症状によって、漸減計画を調整しながら進める必要があります。
少量の抗うつ薬を服用する方法
錠剤で提供されている量よりも低用量の抗うつ薬に漸減する必要がある人がいます。これは離脱症状の発症を避けるためです。それには、液剤の抗うつ薬を希釈したものを使用できる場合があります。
以下の例は、液剤の抗うつ薬を希釈して薬剤を漸減する際の原則を理解するのに役立ちます。以下のようなプロセスを自信をもって進められるよう、主治医や薬剤師と話し合うとよいでしょう。
例
これは液剤の抗うつ薬を服用している場合の例です。
この液剤には液体を1滴ずつ投与できるドロッパ―機構がついています。1滴は約0.05mlで、2mgの薬物を含有しています。
今回の服薬を漸減するには服用量を2mg未満にする必要がありますが、ドロッパ―機構ではこれができません。
より少ない量を計るには、ボトルからドロッパ―機構を取り外し、経口注射器を使用する必要があります。
また、液剤を水で希釈して、より弱い溶液を作る必要がある場合もあります。これは、経口注射器で正確に測定できる溶液の最小量が約0.2mlのためです。
経口注射器を使用すれば、液剤の抗うつ薬の量を正確に測定することができます。この注射器には、1ml、5ml、10mlのタイプがあります。
このような経口注射器は薬局やオンラインで購入するか、処方を無料で受けている場合は、主治医に処方を依頼することができます。
手順の例
これは、40mg/mlの液剤の抗うつ薬を服用している場合の例です。つまり、この液剤の抗うつ薬は、1mlあたり40mgの薬物を含有していることになります。
したがって、この抗うつ薬の液剤は0.5mlあたり20mgの薬物を含有しています。
薬物の服用量を1mlにしたいとします。これを行うには、以下が必要です。
- 1mlの経口注射器
- 振っても漏れないキャップ付き容器
- 服用中の抗うつ薬の液剤
ステップ
- 1mlの経口注射器で抗うつ薬の液剤を0.5ml測定する
- これを容器に入れる
- 10mlの経口注射器で水を9.5ml測定する
- これを抗うつ薬の液剤が入った容器に加える
- よく振って混ぜる
- これで、薬物20mlを含有する希釈液10mlができる
- 1mlの経口注射器を水で洗う
- きれいな注射器でこの希釈液を0.5mlとる。ここには薬物1mgが含まれる
- 残りの希釈液を廃棄する*
他の用量も同じ要領で作ることができます。ただし、次のことを知っておく必要があります。
- 使用している抗うつ薬の液剤に含まれる薬物の量 (抗うつ薬ごとに異なります)
- 錠剤に相当する用量が常に同じとは限らないこと (例えばシタロプラム内服液8mlは、シタロプラム錠剤10mgに相当します)
これによって、より低用量の抗うつ薬を作り、より時間をかけた漸減計画に従うことができるようになるでしょう。
漸減計画を始める前に、必ず主治医に相談しましょう。
*製造元リーフレット(「Summary of Product Characteristics」)には、水と混合した溶液は「直ちに」使い切るよう書かれています。これは、希釈液から必要な用量を服用した後は残りを廃棄し、次に薬剤を服用する必要がある時に新しい服用分を混合しなければならないことを意味しています。ご利用の薬剤の製造元リーフレットについては主治医にお尋ねください。
その他の漸減方法
液状の抗うつ薬の使用について上記で説明しました。抗うつ薬の用量を下げて漸減する方法は他にもあります。
この情報は、さまざまな漸減方法についての情報提供を目的としたものです。これらの方法を主治医に相談せずに試さないでください。
錠剤の分割
錠剤の中央に線が入っていたとしても、すべての錠剤が分割服用に適しているわけではありません。事前に主治医か薬剤師に確認してください。最も簡単に錠剤を分割する方法は、錠剤カッターを使うことです。分割の方法は、錠剤の形によって異なります。
- 円形の錠剤は、特別小さなものでない限り、通常は半分や4分の1に割れます。
- カプレットタイプの錠剤やカプセル剤は、半分に割れるように中心に線が入っていることがあります。これによって、より正確に錠剤カッターで分割することができます。
通常、錠剤カッターは回収用のトレーか、錠剤の破片を集めるためのその他の方法を備えています。
服用しようとしている錠剤の量によって、錠剤を半分または4分の1に割りたい場合があるかもしれません。錠剤カッターで4分の1より小さく正確に割ることは不可能です。
錠剤が円形ではない場合、通常は正確に分割できるのは半分だけです。正確性が失われる可能性があるため、円形の錠剤を4分の1にしようとしないでください。
例
手元に40mgの錠剤があり、10mgを服用したいとします。
一部の錠剤は、割っている間に錠剤がばらばらに崩れなければ、4分割して服用できます。これには、錠剤カッターを使用して、錠剤を半分にします。その後、半錠をそれぞれ半分に割ります。
すると、含有量が約10mgの4分の1錠が4個できます。
この4分の1錠を、次の4回分の用量として服用することになります。これは、4分の1錠が完璧に割れていなかったとしても、合計で正しい量を服用することを意味します。
顆粒の数の把握または計量
ベンラファキシンやデュロキセチンなどの薬剤は、「ゆっくりと放出される」小さな顆粒が入ったカプセル剤になっています。これは、顆粒の中に薬物があり、体内でゆっくりと放出されるよう、顆粒がコーティングされていることを意味します。すべての製品が同様とは限らないため、自分が服用している製品にこのような顆粒が含まれているかどうかは主治医に確認してください。
この場合、細心の注意を払ってカプセルを開け、顆粒を容器に空けます。これらの顆粒は、数を数えたり重さを計ったりすることで、低用量にすることができます。顆粒は、カプセルから出しても安定していると考えられています。つまり、服用する前に、遮光性の高い密閉瓶 (例: 茶色の薬瓶) で2~3日は保存できます。
例
ベンラファキシンの75mgカプセルがあるとします。顆粒を外に出し、数えます。
カプセルには200個の顆粒が含まれています。これは、160個の顆粒がベンラファキシン60mgを含有することを意味します。
顆粒の大きさには多少変動がありますので注意してください。したがって、顆粒の計量は数を数えるよりも精度が高くなります。わずかな量を計量するには、特別な計量機や気密性の高い環境が求められます。
これらの顆粒を飲むときは、その前にカプセルに戻す必要があります。顆粒状のベンラファキシンは、一匙のヨーグルトに振りかけると、喉を刺激せず飲みやすくなります。デュロキセチンの顆粒は、食物や液体と混ぜないでください。
カプセルの粉末を水に分散させる
カプセルの中には、粉末が入っているものがあります。NHS Specialist Pharmacy Serviceが説明しているように、これらのカプセル剤を開けて中身を水に分散させることができます。
例
20mgのカプセル剤があるとします。服用したいのは4mgの抗うつ薬です。
カプセルの中の粉末と水100mlを混合します。これで、この混合物は5mlあたり1mgを含有しています。
注射器を使用して混合物のうち20mlを服用すると、これには4mgが含まれていることになります。
どんな混合物においても、服用前によく振って、薬剤が液体に均一に分布するようにしてください。必要量を服用した後は、残った液体を捨てるようにしてください。
錠剤を水に分散させる
錠剤タイプの抗うつ薬の多くは、水に入れると崩れて粉々になり、水と混ざります。これを崩壊錠といいます。これは数分で発生することが多いですが、もう少し時間がかかることもあります。崩壊が起きたら、錠剤の中身を液体に分散させるため、液体の中で錠剤を混ぜたり、振ったりする必要があります。
最初にスプーンの背で錠剤をつぶしておくと、このプロセスのスピードを速めることができます。
例
20mgの錠剤がありますが、服用したいのは2mgだとします。
錠剤を水100mlと混ぜます。この混合物には、混合物5mlあたり1mgの薬物が含まれることになります。
注射器を使用してこの混合物のうち10mlを服用すると、2mgの薬物を摂取することになります。
服用する前にこの混合物をよく振って、薬物が液体に均一に分布するようにしてください。必要量を服用した後は、残った液体を捨てるようにしてください。
付録1: 個々の抗うつ薬における離脱症状の潜在的リスク
最高レベルの潜在的リスク | 中程度の潜在的リスク | 低い潜在的リスク | 最も低い潜在的リスク | |||
デスベンラファキシン | アミトリプチリン | ドスレピン | アゴメラチン | |||
デュロキセチン | ブプロピオン | ミアンセリン | ロフェプラミン | |||
イソカルボキサジド | シタロプラム | トリミプラミン | ||||
ミルタザピン | クロミプラミン | ボルチオキセチン | ||||
モクロベミド | デシプラミン | |||||
パロキセチン | ドキセピン | |||||
フェネルジン | エスシタロプラム | |||||
トラニルシプロミン | フルオキセチン | |||||
ベンラファキシン | フルボキサミン | |||||
イミプラミン | ||||||
ミルナシプラン | ||||||
ネファゾドン | ||||||
ノルトリプチリン | ||||||
レボキセチン | ||||||
セルトラリン | ||||||
トラゾドン | ||||||
ビラゾドン |
付録2: 予想される離脱症状の種類
身体症状 | 睡眠症状 | 情動性症状 |
吐き気 | 不眠症 | 不安 |
頭痛 | 夢をよく見る | 抑うつ |
めまい | 鮮明な夢 | パニック |
腹痛 | 悪夢 | 興奮 |
下痢 | 怒りっぽさ | |
倦怠感 | 気分の変調 | |
風邪に似た症状 | ||
電気ショック様感覚 (シャンビリ感) | ||
食欲不振 | ||
視覚障害 (複視、 視覚トレーリング) | ||
動悸 | ||
脈が飛ぶ | ||
汗が出る | ||
顔が紅潮する | ||
声の震え | ||
耳鳴り | ||
内的不穏感 じっとしていられない (アカンジア) |
付録3: 漸減プログラム例2の詳細
ステップ | 用量 (mg) | 錠剤または液剤 |
1 | 40 | 錠剤 |
2 | 35 | 半錠*または液剤 |
3 | 30 | 錠剤 |
4 | 25 | 半錠*または液剤 |
5 | 22 | 液剤 |
6 | 20 | 錠剤 |
7 | 18 | 液剤 |
8 | 16 | 液剤 |
9 | 14 | 液剤 |
10 | 13 | 液剤 |
11 | 12 | 液剤 |
12 | 11 | 液剤 |
13 | 10 | 液剤または錠剤 |
14 | 9 | 液剤 |
15 | 8.1 | 液剤 |
16 | 7.2 | 液剤 |
17 | 6.5 | 液剤 |
18 | 5.9 | 液剤 |
19 | 5.3 | 液剤 |
20 | 4.8 | 液剤 |
21 | 4.3 | 液剤 |
22 | 3.9 | 液剤 |
23 | 3.5 | 液剤 |
24 | 3.1 | 液剤 |
25 | 2.8 | 液剤 |
26 | 2.5 | 液剤 |
27 | 2.2 | 液剤 |
28 | 1.9 | 液剤 |
29 | 1.7 | 液剤 |
30 | 1.4 | 液剤 |
31 | 1.2 | 液剤 |
32 | 1 | 液剤 |
33 | 0.8 | 液剤 |
34 | 0.64 | 液剤 |
35 | 0.5 | 液剤 |
36 | 0.3 | 液剤 |
37 | 0.15 | 液剤 |
38 | 0 |
*すべての錠剤が半分に割れるとは限りません。事前に主治医か薬剤師に確認してください。
クレジット
この情報は英国国立精神医学院 (Royal College of Psychiatrists) のPublic Engagement Editorial Board (PEEB) が制作しました。執筆時点での利用可能な最良のエビデンスを反映しています。
専門家執筆者:
- Wendy Burn教授、Past President、英国国立精神医学院 (Royal College of Psychiatrists)
- Mark Abie Horowitz博士 BA BSc MBBS MSc PhD、Clinical Research Fellow (NELFT)、Honorary Clinical Research Fellow (UCL)
- George Roycroft、Head of Policy and Campaigns、英国国立精神医学院 (Royal College of Psychiatrists)
- David Taylor教授 MSc PhD FFRPS FRPharmS、Professor of Psychopharmacology (KCL)
ご支援をいただいたRoyal College of General Practitioners、Royal Pharmaceutical Society、College of Mental Health Pharmacy、またコメントを寄せて下さったり、開発を支援してくださったすべての方に感謝申し上げます。
This translation was produced by CLEAR Global (Jul 2024)